「マフター、
アドメスが缶詰を開けて、サバの味噌煮を食べている。
何がどうしてそうなった?
「アドメス……なんで食ってんだ、それ?」
「あ、えーとですね。人間のエネルギー補給を体験するのも経験だと思いまして」
確かアドメスには模擬消化器官というのがあって、体内で一時的に貯蔵・処理する機能が備わっていたか。だからといって、サバの味噌煮かよ。
「その心意気は素晴らしいが、あとで口をゆすいでおけよ。ところで銀箱を出してくれ。ワイバーンを仕留めてくる」
「ワイバーンですか。なんか懐かしいですね。ほら、私ワイバーンにくわえられて、放り投げられたじゃないですか。あれは怖かったなぁ」
異世界ではそんなことがあったか。
というより、そんなことが多すぎて思い出せない。
「では出しますね。――アトラクト」
アドメスが唱えると、銀のアタッシュケースが出現。
その中に手を突っ込み、俺は
レベルはまだ1。
マガジン一本でBB弾は36発装弾可能。
36発といっても、フルオートで使えば約2.4~3秒でなくなる。
消費は早いが、ダメージはほぼゼロ。
戦いの最中にレベルが上がることを考慮しても1000発、いや1500発ほどは必要だろう。
BB弾とガスを満タンにしたマガジンを5本。
プラスBBローダーとBB弾ボトル、500グラムのガス缶と携帯式ガスボトルも持っていく必要がある。
荷物が多いが、仕方がない。
マークの代わりに
こいつは俺の真の相棒であり、今後も手放すことはない。
「行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい。私はここに隠れていますね」
漂うサバ臭。
口、くっさ!
◇
俺は店内から階段を上り、屋上を目指す。
扉には鍵がかかっていたが、ここでも異世界仕様の蹴りが役に立った。
壊れた扉を押しのけ、屋上へ。
けっこうな音を発したはずだが、ワイバーンはそこにいた。
まだこちらには気づいていないようだ。
ん? あれは……。
そういうことか。
なぜワイバーンがスーパーの屋上にいるのか疑問だったが、謎が氷解した。
ワイバーンはここに巣を作っていたのだ。
巣の中には、生まれて間もないワイバーンの子供が三体。
一瞬、ワイバーン狩りを躊躇する俺。
だが、ワイバーンの子供が食べているのが
それはダメだろ。
俺は改めて、ワイバーンを経験値へ変換することを決意する。
Uziサブマシンガンはコンパクトで取り回しがいいが、しっかり狙うなら
たかがBB弾。されどBB弾。
どうせだったら、正確なコントロールができたほうがいいに決まってる。
俺は頬をストックに固定し、引き金を引く。
ズバババババッと短いバースト射撃。
「あれ?」
当たらない。
全てのBB弾が、上方向へといってしまった。
ホップが強くなりすぎているようだ。
ホップアップ調整をしなければ――
「ギャアアアアアアアアッ!」
誰だ!? とばかりに俺に対して叫ぶワイバーン。
さすがに気づかれたようだ。
両脚で歩いて近づてくるワイバーン。
俺はその場で素早くホップアップ調整。からの全弾発射。
完璧な
??
頭上にクエスチョンマークを浮かべるような、ワイバーン。
痛くもかゆくもないのだろう。
そんなことは分かっているので、気にせずマガジンを交換。
お手本になるような射撃体勢で、今度は全弾撃ち尽くす。
また顔に当ててやった。
「ギィィィィッ」
首を振り、さすがにいらっとしたようなワイバーン。
俺は意に介さず、マガジン交換。即座に射撃。
三度、全弾が顔に当たった瞬間――
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」
堪忍袋の緒が切れたように、殺意の咆哮を上げるワイバーン。
巨大な翼のはばたきが、俺の体勢を崩す。
ワイバーンが口を開くのが見えた。
やべ。
俺はたたらを踏みそうになりながらも、なんとか横っ飛び。
先まで俺がいた場所を見ると、コンクリートが抉れていた。
ソニックトルネイド。
口から鋭利な烈風を吐くワイバーンの技である。
今の俺なら余裕と高を括っていたが、例え異世界仕様の肉体でもこれを食らったら無傷ではいられない。
ランボーのレベルがもっと上がっていれば、防げるスキルを取得できていたが、ないものはしょうがない。
幸い身体能力は非常に高く、反射神経も研ぎ澄まされているので、避ければいいだろう。
なんてことを考えながら、4本目のマガジンを装着。
ワイバーンの後ろに走り込むと、背中に向けて掃射。
何発か外れたが、気にしない。
俺は巣のある方へ走ると、その巣の後ろへ退避。
どうだ。これでソニックトルネイドは使えまい。
子供を盾にするとは我ながら、卑劣な男である。
俺はマガジンを5本目に交換。
巣の影から覗き、ワイバーンの動向を確認。
いない。
どこへ行った?
「ギャアアアアアアアアアアッ!!」
頭上から響く雄たけび。
急降下してくるワイバーンの前脚が、俺を捕獲せしめんと襲いかかる。
だが――、
それは悪手だな。
俺は回避しながら、ランボーでワイバーンの右脚を斬り飛ばした。
不時着した飛行機のように、激突した屋上を滑っていくワイバーン。
その無様な後ろ姿に、マークで連射。全弾ヒット。
ワイバーンはそのまま地面へと落下した。
ワイバーンの、俺へのヘイトが一時的に途切れた感覚。
確かな予感を覚えたその時、マークが光った。
レベルアップの時間だ。
【
【殺傷力 12→ 212】rankD up!
【親和性 0→ 78】rankE up!
■材質/
BB弾プラスチック→BB弾スチール
■スキル
バレット増加+5 nuw!
いい感じに上昇したな。
倒してはいないが、マガジン5本分のBB弾の8割ほど当てたからだろう。
おそらくギリギリだろうが、プラスチックからスチールへのグレードアップは嬉しい。
こんな感じで、マークをウィックと同等レベルまで上げておくか。