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異世界ギルド受付嬢・ゾルガの日常(新天地活躍編)
異世界ギルド受付嬢・ゾルガの日常(新天地活躍編)
熊さと
異世界ファンタジースローライフ
2025年06月22日
公開日
2.9万字
連載中
異世界ギルド受付嬢・ゾルガの日常の続編 オーガ族のゾルガと人間族のレオンが結婚してから半年が過ぎ、魔王の国の首都・ダークレイムにある冒険者ギルド「闇夜の爪痕」は、いつものように賑わい忙しく、そして、幸せな結婚生活を送っていた。そんな時、全世界冒険者ギルド協会から、新たに設立した冒険者ギルドの運営支援の依頼が舞い込み、ゾルガとレオンは、新たな経験と期待を胸に以来を受ける事となった・・・そして、色んな人と出来事を通じて、2人は大きく成長するのでした。

第1話 新たな依頼

魔王の国の首都・ダークレイムにある冒険者ギルド「闇夜の爪痕」は、いつものように賑わっていた


結婚から半年が経ったゾルガとレオンは、今や首都でも最も有名なカップルとして知られていた


「おはよう、ゾルガ」

アリエルが朝一番にカウンターにやってきた


「今日も美しいわね。結婚生活はどう?」


「おかげさまで毎日充実してるわ」

ゾルガは幸せそうに微笑んだ


「レオンが毎朝お茶を入れてくれるの、意外に上手なのよ」


「あら、素敵!」

アリエルは目を輝かせた


「で、今度の任務は?」


「今日は街の巡回よ・・・最近、人間の商人が増えたから、案内や通訳が必要なの」


その時、ギルドの扉が開き、一人の使者が入ってきた


全世界冒険者ギルド協会の公式な服装を身に着けた年配のエルフだった


「失礼いたします。ゾルガ・レオン夫妻はいらっしゃいますか?」


「はい、私がゾルガです」

彼女は丁寧に応じた


「夫はすぐに戻ってまいります」


「こちらに公式な依頼書をお持ちしました」

使者は封筒を差し出した


「全世界冒険者ギルド協会からの特別任務です」


ゾルガは封筒を受け取り、中身を確認した


読み進むうちに、彼女の表情が驚きに変わった


「これは・・・」


「どうしたの?」

アリエルが心配そうに聞いた


その時、レオンが街の巡回から戻ってきた


「ただいま、ゾルガ、街の様子は・・・どうしたんだ?」

レオンは妻の表情を見て尋ねた


「レオン、これを読んで」

ゾルガは依頼書を手渡した


レオンは黙って読み始めた・・・数分後、彼も驚いた表情を見せた


「魔物族と人間族の国境に・・・巨大ダンジョンが発見されて、新しい街と冒険者ギルドが?」


「そうよ、そのギルドの運営支援を・・・私たちに依頼してきているの」


使者が説明を続けた


「発見されたダンジョンは『永劫の迷宮』と呼ばれ、これまで見つかったどのダンジョンよりも巨大で複雑です・・・両国政府は、このダンジョンを共同で管理し、新しい街『ハーモニーヘイブン』を建設しました」


「ハーモニーヘイブン・・・調和の港という意味ね」

ゾルガは名前を確認した


「はい。そして、そこに設立された冒険者ギルド『クロスロード』のマスターが、運営支援を求めているのです」


使者は続けた


「特に、異種族間の協力で有名なお二人の協力を」


レオンとゾルガは顔を見合わせた


「期間はどのくらいですか?」

レオンが尋ねた


「最低半年、最長で一年の予定です・・・もちろん、報酬も相応にお支払いします」


その時、ギルドマスターのイルザが事務所から出てきた


「話は聞かせてもらったわ」


イルザは静かに言った


「これは良い機会ね」


「マスター・・・」

ゾルガは迷いを見せた


「あなたたちの経験は、新しいギルドにとって貴重な財産よ」


イルザは彼女の肩に手を置いた


「それに、あなたたちの成長にも繋がるでしょう」


「でも、このギルドを離れるのは・・・」


「心配いらないわ!!!アリエルとガンターがしっかりサポートしてくれる、それに、永遠の別れじゃない」


レオンがゾルガの手を取った


「君はどう思う?」


ゾルガは少し考えてから答えた


「私たちの経験が役に立つなら・・・挑戦してみたいわ」


「決まりだな」

レオンは微笑んだ


「使者さん、お引き受けします」


使者は安堵の表情を見せた


「ありがとうございます・・・では、詳細な資料をお渡しします、出発は一週間後の予定ですが、いかがでしょうか?」


「大丈夫です」

ゾルガは頷いた


「準備に一週間あれば十分よ」


・・・・・


一週間は あっという間に過ぎた


ゾルガとレオンは、新天地への準備に忙しい日々を送った


出発の朝、ギルドの前には馬車が用意されていた


「荷物はこれで全部かな?」

レオンは馬車に積まれた荷物を確認した


「ええ。冬服も入れたし、お茶セットも忘れてないわ」

ゾルガは最終チェックを行った


その時、大きな声が響いた


「「俺が護衛をするって言ってるんだ!!!!」」


振り向くと、トカゲ族のザックとシャーウッド三兄弟の末っ子トムが言い争っていた


「いや、俺の方が適任だろう!」


トムが反論する

「人間の国に近い場所だから、人間の俺の方が・・・」


「何言ってやがる!!!俺の方が、戦闘経験が豊富だぞ!」

ザックが鱗を逆立てた


「二人とも、どうしたの?」

ゾルガが仲裁に入った


「あのな、ゾルガ」

ザックが説明し始めた


「俺たち、お前らの護衛をしたいんだ。でも、どっちが行くかで揉めてる」


「護衛って・・・でも、お二人にも仕事があるでしょう?」


「大丈夫だ!」

トムが胸を張った


「マスターに相談したら『良い経験になる』って許可してくれたんだ」


イルザが苦笑いを浮かべながら近づいてきた


「実は私が提案したのよ・・・国境付近は危険だし、信頼できる仲間がいた方が安心でしょう?」


レオンが考え込んだ


「確かに心強いけど・・・でも、二人とも連れて行くわけには・・・」


「何で駄目なんだ?」

ザックが食いついた


「そうだよ!二人いた方が安全だろ?」

トムも同調した


ゾルガは二人の熱意を見て、微笑んだ


「ありがとう、お二人とも・・・でも、長期間お仕事を離れるのは・・・」


「心配いらねえよ!」

ザックが豪快に笑った


「俺たちだって、たまには冒険したいんだ」


「それに・・・」


トムが付け加えた


「あんたたちが有名になって、俺たちも鼻が高いんだ・・・その恩返しをさせてくれよ」


イルザが口を開いた


「実を言うと、私も二人に行ってもらいたいの・・・あなたたちの安全が何より大切だから」


レオンとゾルガは顔を見合わせた


「・・・わかったわ」


ゾルガが決断した


「お二人とも、よろしくお願いします」


「やったー!」

トムが飛び跳ねた


「へへっ、任せとけ!」

ザックもにやりと笑った


馬車の御者席に二人が座り、レオンとゾルガは客席に座った


同僚たちが見送りに集まっていた


「寂しくなるわ〜」

アリエルが泣きそうな顔をしていた


「でも、きっと素敵な経験になる!」


「四人とも気をつけてな」

ガンターも笑顔で送り出した


イルザが最後に近づいた


「何か困ったことがあったら、すぐに連絡しなさい。私たちはいつでもあなたたちの味方よ」


「ありがとうございます、マスター」

ゾルガは深々と頭を下げた


「必ず成功させて戻ってきます」

レオンも決意を込めて言った


「出発だー!」

ザックが手綱を握った


「おおー!」

トムも興奮していた


馬車は賑やかに出発し、四人はダークレイムを後にした


・・・・・


ハーモニーヘイブンまでの道のりは三日間の予定だった


街道は整備されていたが、国境付近ということもあり、時折魔獣や野盗の出現があると聞いていた


「景色が変わってきたね」

レオンが馬車から外を眺めながら言った


「魔物の国の黒と赤から、人間の国の緑と茶色へのグラデーションね」

ゾルガも景色を楽しんでいた


御者席では、ザックとトムが楽しそうに会話していた


「おい、トム。あそこに見える山、知ってるか?」


「ああ、『竜の牙』って呼ばれる山だろ?昔、ドラゴンが住んでたって言われてる」


「へぇ、今でもいるのかな?」


「さあな。でも、会ってみたいもんだ」


二日目の夕方、彼らは街道沿いの宿場町で一泊することにした


「今夜はここで休憩だ」

ザックが馬車を止めた


「明日の夕方にはハーモニーヘイブンに到着予定だぜ」


宿屋に入ると、人間と魔物の旅人が混在していた

国境に近づくにつれ、両種族の交流が増えているのがわかった


「これも俺たちが頑張った成果の一つかもしれないな」

トムが満足そうに呟いた


「お前が何をしたって言うんだ?」

ザックがからかった


「俺だって、ゾルガさんたちを応援してたんだぞ!」


「ありがとう、トム」

ゾルガは微笑んだ


「でも、これからもっと大変な挑戦が待ってる」


「大丈夫だ!」

ザックが胸を叩いた


「俺たちがついてるからな!」


三日目の午前中、彼らは最後の難所に差し掛かった

国境の峠を越える山道だった


『ぐおおおお!』


突然、獣の雄叫びが響いた


道の先から、三匹の巨大な魔獣・ワイバーンが現れた


「襲撃だ!」

ザックが馬車を止めて叫んだ


「みんな、戦闘態勢だ!」

レオンは剣を抜いた


「おう!久しぶりの実戦だな!」

ザックも斧を構えた


「負けないぞ!」

トムは弓矢を取り出した


「みんなで協力しましょう」

ゾルガも戦闘態勢を取った


最初のワイバーンが急降下してきた

レオンは素早く回避し、剣で翼を切りつけた

同時に、トムが弓矢で正確にワイバーンの目を狙った


「ナイスショット、トム!」


『ギャアアア!!!!!』

ワイバーンは痛みで暴れ回った


その隙に、ゾルガが岩を投げつけた

オーガ族の怪力で投げられた岩は、ワイバーンの頭部に直撃した


「うおおおし!」ザックが飛び上がり、斧で追い打ちをかけた


一匹目が墜落すると、二匹目と三匹目が同時に攻撃してきた。


「二手に分かれるぞ!」

レオンが指示した


「ザック、一緒に行くわよ!」

ゾルガが言った


「おう!息を合わせるぜ!」


レオンとトムが一匹を、ゾルガとザックがもう一匹を相手にした


レオンは魔法で炎の壁を作り、トムが連続で矢を放った

ワイバーンは翼に矢が刺さって飛行能力を失った


一方、ゾルガは素手でワイバーンの爪攻撃を受け止め、ザックが横から斧で攻撃した


「こんなの朝飯前よ!」

ゾルガは渾身の力でワイバーンを投げ飛ばした


「うひょー!さすがオーガ族の怪力だな!」

ザックが感嘆した


魔獣たちは山の斜面に激突し、気絶した


「やったぜ、みんな!」

トムが勝利のポーズを取った


「チームワーク抜群だったな」

レオンも満足そうだった


「四人だと、こんなに楽に倒せるのね」

ゾルガは驚いた


「やっぱり仲間がいると心強いぜ」

ザックが豪快に笑った


午後になって、ついに目的地が見えてきた


「おお、あれがハーモニーヘイブンか」

レオンは驚きの声を上げた


眼下に広がる光景は圧巻だった


魔物の国の建築様式と人間の国の建築様式が見事に融合した街並み


街の中央には巨大なダンジョンの入り口が見え、その周りに冒険者ギルドと思われる大きな建物が立っていた


「すげぇ・・・」

ザックも感嘆した


「本当に両国が協力して作ったんだな」

トムも驚いていた


「すごい・・・本当に両国が協力して作った街なのね」

ゾルガも感嘆した


街に近づくにつれ、人間と魔物が当たり前のように一緒に働いている光景が見えた


市場では人間の商人と魔物の商人が並んで店を開き、街の警備も両種族が協力して行っていた


「俺たちが目指していた未来がここにあるんだな」

レオンは感慨深げに言った


「ええ。これからの私たちの仕事が楽しみになってきたわ」


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