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第22話 薬の存在がバレました

「もう平気か?」

 落ち着いた私を連れ少し暗くなった中庭のベンチへ座らせる。

 生徒たちはほとんど帰宅しているだろう。


「どうして…ここに。ニルス様もアンナ先輩に襲われたのでは…」


「最初は…見えないからマリアだと思ったんだ…あ、マリアってのは幽霊で…でも違った。マリアならいつも箒を持ってるからな……。見えない何かは俺のことをいきなり触り出したから突き飛ばしたらアンナの声がしたんだ!俺は教室の隅にあったバケツを引っ掛けてみたら…空中に水滴が浮いて人型が少し見えた!


 それで消えたアンナを捕まえて縛り強制尋問魔法で喋らせた。そしたら今頃お前とクソ王子もやってる頃だって言ったから…」

 急いでここに来たのか。


「…ごめんなさい…私が!私があの薬を………」

 と白状した。

 説明を静かに聞くと…


「なぜ作った?そんな薬?人前が苦手だから消えたかった?」

 と見透かされた。コクリとうなづき


「わ、私……私さえこの世界から見えなくなればいろんな人に迷惑かからないし自由に一人で生きていけれると思ってずっと研究を続けて……でも、こんな風に悪用されるとか考えてなくて…」


「だろうな、浅はかで危険な薬だ!こんなものは……は……!」

 と何かに気付いたニルス様は私を見る。


「お前…まさか………マリア!?消えてマリアになってた?」

 と震え出した。私はもう言い訳する気力はなかった。静かにコクリと肯定するとみるみると赤くなるニルス様。


「ひ、ひいいいいいいい!!!」

 と頭を抱え絶叫した!!!

 これは相当に怒られるか薬も没収されるだろう。それとも本気で婚約解消されるかも。

 と思った。だから


「ごめんなさい、実験台にしたわけじゃなくて…。ただニルス様が最初アンナ先輩に襲われそうになっていたから…それがきっかけで……どんな罰でも受けます…薬ももう…作りません…」

 と暗い顔をすると


「……お前…ずっと消えて俺との婚約がそんなに嫌だったのか?俺の気持ちや決闘とか色々どうすんだ!隠れて生きるってどうやってだ?隠れて物を盗んで生きていくつもりか?生活には金がかかるだろ?」


「あ……」

 そこまで考えてなかった。適当に食べ物を頂戴するなんて確かに盗みと同じ…消えててもいい事ないし、ニルス様がクリストフ王子を捕まえた時みたいにペンキとかかけられたら正体もバレやすいと気付いた。


「俺はこれから常にペンキをばら撒いてお前を探さなきゃいけないのか!?」

 と聞かれる。


「そもそも探さなくても…」

 と言うとガシっと肩を掴まれる。


「アホか!探すに決まってるだろ!何処に消えようとも必ず見つけ出してやる!


 …こんな所で言うつもりはなかったがどうせもう俺の気持ちなんかとっくに知ってるだろう?…お前が好きだよ!!」

 と真っ直ぐに言われ私は赤くなった。


「で、でも私悪い薬を……」


「お前が作った?俺以外で誰が知っている?クソ王子とアンナか?拾ったって言えバカ!作り置きの薬は後いくつある?全部俺が没収する!」


「は…はい」

 としゅんとすると


「……で?お前は?」

 と言われる。


「え?」


「え?じゃないだろう?お前は俺の気持ちを知っていて弄んでいるのか!?さっき好きだって…さっきと言うかマリアと話してる時も散々言ったよな!?もう俺は開き直ったよ!バカ!お前は俺が好きなのか!?」

 と聞かれドキドキする。

 ど、どうしよう。


「じ、実は私…恋など興味無かったのでこれが好きかどうかは自信が無く…でも…クリストフ様に触られると気持ち悪くて吐きそうでしたがニルス様はとても安心しました。…好きなんでしょうか?」

 と言うと呆れた顔をされた。


「俺が聞いとるとのになんで反対に聞いてくるんだ!自分の気持ちもハッキリできないのか!そんなだから俺は不安なんだよ!」

 と言うと顔を挟まれてムニムニされたと思うと指でムニュンと引っ張られ変な顔にされたりする。


「ひゃめてくらさい!!」

 と抗議すると


「…変な顔」

 と言う。

 そりゃ引っ張られたら変な顔になる。お返しに私もニルス様の顔を摘み引っ張ってみたらやはり変な顔。


「ほひらこそ!」

 と言うと


「なひをー!?ほのひゃろう!」

 と暫く顔を引っ張り合う変な私達。


「ふひっていえ!」


「ひゃんです!?」


「ひゃにいってんかわはらん!!」


「はんです!?」

 とお互いもはやわからない。

 ようやく互いに指を離すとニルス様は疲れたような顔をして


「……なんでこんな鈍い奴を俺は好きなんだ」

 と言われた。そんなの私に言われても困る。そちらの方が好きになったんでしょ?


 するとニルス様が手を取り指にキスしたからドキっとした。綺麗な碧の目で見つめられ心拍数が上がった。体温も上がったと思う。


「もう俺の許可なく薬を作るなよ?勝手に消えられたら困るんだ。…薬を作ったことは黙っておく。これからも俺の許可があれば作っても使ってもいい」


「…え?いいのですか?」


「言っとくけど許可があればの話だ!道具やら材料は俺が管理する!これからは!使い方間違ったら犯罪に使われるとお前自身わかったろ?」


「は、はい…身に染みております…」

 さっきは本当に気持ち悪かった。思い出しても本当嫌だ。透明になったクリストフ王子に舐められ好き放題されニルス様が来なければ私はとっくに襲われ無理矢理…。


「……イサベル…俺はお前が心配なんだぞ?今回みたいなことがまた起きたら…たぶんクリストフ王子を殺す。そうしたら俺は王子殺害の罪で牢獄行きだ。お前と結婚もできなくなる」


「ええ?殺さなければいいのでは?」

 と青ざめると


「好きな女を訳もわからんうちに奪われてしまったら例え聡明な俺でも取り乱し気狂い殺すだろう!ていうかあんなクソ王子絶対何としても殺すと思うぞ?」

 と言う。ええ?何としても殺すんだ!?


「…許可があればって?」

 と聞くとニルス様は


「お前の薬はきちんと商品化申請して有効利用すれば諜報活動の物として売れるだろう。取引先も増える。だが、お前が作ったとなれば、その腕を狙い誘拐され犯罪者達に利用され薬を作らされるかもしれない。だから俺が管理する必要がある。もしもバレた時に俺が薬を作ったことにすればお前の身は守られる」


「それは!ニルス様が危険になるということでは?」


「わかんないやつだな!お前が危険になる方が俺は嫌に決まってんだろ!」

 と言うニルス様。ニルス様はそっと私の事を抱きしめた。

 ドキドキする。


「イサベル…」


「は、はい?」


「お前のことは俺が守るよ」

 と言われた。どう返事しようと迷ったがすぐに離れてニルス様は


「…暗くなったから早く帰るぞ!」

 と手を差し出した。

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