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ダンジョン徹底制覇!防衛芸術高校、ノースキル科
ダンジョン徹底制覇!防衛芸術高校、ノースキル科
砂礫零
現代ファンタジー現代ダンジョン
2025年06月24日
公開日
2.7万字
連載中
ダンジョン配信×異能バトル 折田ノブナガ、前世に魔王だった記憶を持つ15歳。スキル持ちと突発ダンジョンが当たり前の現代日本に、ノースキルで転生してきてしまった。 『無能』 とバカにされている無才能者(ノースキル)の進路は、引きニートか被験体(モルモット)しかない……!? そんな彼のもとに、1通の合格通知が届く。 通知元は 『防衛芸術高校ノースキル科』 ―― 新開発のDEW(指向性エネルギー兵器)を活用できる人材を育てるべく、新設されたコースだ。 受験した覚えはないけど、スキルなしの無才能者でもダンジョン制覇できるなら、まいっか! ノブナガは、防衛芸術高校ノースキル科の1期生となることを決意する。 ―― 無能一般人として現代転生してきた魔王が、侵食するダンジョンから日本を守るべく、バカにされても、仲間とともに立ち上がる。成長と友情と下克上の物語

0#プロローグ

第1話 100万人にひとりの(1)

 こと青少年の生活において、ひとが当たり前に持っているものが己にはないと悟ることは。

 好きな子の隣でオナラしてしまう (そしてばっちり気づかれる) のに、勝るとも劣らぬ恥辱と苦悩ではないだろうか ――

 進路指導の面接官たちの憐れみとも困惑ともつかない表情を前に、ぼくはそんなことを考えていた。


「あーと、その。折田オリタ信長ノブナガさん」


「はい」


「検査の結果…… キミは100万人に1人の才能スキル無発現者とわかった」


「はい」


 まあ、だいたいわかっていた。

 ―― 現代のこの世界では人間は、14歳を過ぎるとなんらかの才能スキルが発現する。

 なんの才能スキルなのかは、中学3年生の秋に一斉検査でわかる。その結果をもとに、進路を決めるのだ。

 一応は、本人の希望も提出させられるが…… あくまで重視されるのは才能スキルのほう。

 ぼくたちは、才能スキルが向いてないのに無理矢理、希望を通そうとした人たちの悲惨な末路を、イヤというほど聞かされて育った。

 いまさら誰も才能スキルに逆らおうだなんて思わないだろう。


「よって……」


 面接官の先生は、切なげな表情でためいきをつく。


「キミが希望していた、高等防衛学校ダンジョン駆除課への進学は、見送らざるを得ないね……」


「はい」


 ぼくは膝の上で、そっと、こぶしをにぎりしめた。


 ―― 1908年、ツングースカ大爆発。

 ロシアの上空で巨大隕石が爆発したこの事故から約120年が経った現在、世界じゅうで見られる現象 ―― それが、才能スキルの発現と魔界ダンジョンの発生だ。

 才能スキルの発現は、巨大隕石にくっついてきたとあるウィルスが人類に感染、遺伝子が書き換えられた結果であるらしい。20世紀半ば頃からそういう人間はボチボチでるようになっていたが、21世紀に入ってから急増。今や、症状が出ていない才能スキル無発現者のほうが珍しい。

 そして、魔界ダンジョン発生とは ――

 遊園地、ショッピングセンター、あるいは自宅…… それまで普通に人が暮らしている場所に、突如、ダンジョンが現れる現象だ。

 ダンジョン発生の原因は、ツングースカ大爆発の折に魔界とこの現実世界との境界が開いてしまい、魔界が侵食してくるようになったため。

 近年の研究で原因がやっとわかったころには、もはや、ダンジョン発生は珍しくなくなっていた。

 巻き込まれて行方不明になったり死亡した人の数は日本だけでもすでに千人を超えている。

 このままではやがて、日本は魔界にのまれてしまう ――

 この、コンビニがいつでも開いていて、携帯で面白いアニメやマンガや動画配信がいつでも見られて、どこに行ってもウォシュ◯ットつきトイレがあって、白米の飯が激烈ウマい天国・日本が……!

 守りたい、この、素晴らしい日本を。

 ぼくは、自衛隊のダンジョン駆除官を目指して、高等防衛学校を志願していた。

 ―― が、結果は、いま言われたとおりだ。


「希望が通らないのは可哀想だが…… 才能スキルが発現しないのでは、そもそも、進める学校も仕事もないのが現状だ」


「はい」


「いちばんのオススメは、才能スキル発現研究所の学生になることだが……」


 研究所の学生、とは名ばかり。実態は被験体モルモットである。

才能スキルを持たない者が安定した将来を得ようと思えば、現状、これしかないのだ ――

 だけど、すぐにうなずくことは、ぼくにはできなかった。

 ためいきとともに、声をしぼり出す。


「考えさせてください」


「まあ、そうだね…… お母さんともよく相談して、決めてください」


「はい…… ありがとうございました」


 ぼくは立ち上がり、面接官に向かい、頭をさげる。

 一刻もはやく、この場から去りたい ――

 回れ右したぼくの背中に、面接官が声をかけてきた。


「ああ、そうそう…… キミ、これをなんだと思うかい?」


 この期に及んで、なんだってんだろう。

 重い頭を引きずるように振り返ったぼくの目の前に面接官が突きだしたのは、小さな石ころだった。

 その辺に転がってそうな、なんの変哲もない、無価値の…… なにこれ嫌味か?

 ぼくは、石ころから目をそらし、吐きすてた。


「いまの、ぼく、でしょうね」


 ―― こうしてぼくの進路は 『引きニート』 か 『被験体モルモット』 かの、2択になったのだった。

 後日、1通の封書が家に届くまでは ――

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