「千里、本当はわかってんだろ……」
「え……?」
「俺が、お前のことどう思ってんのか……」
緊張のあまり、声が
「ごめんな……。俺、好きにならないって約束したのに。好きになっちゃったんだよ……」
あぁ……、言わなきゃよかったな……。
釣られて、衛人も泣きそうになった。好きな人を自分の言葉で泣かせてしまったうえに、失望までさせてしまったのだ。「きっと好きになんないよ」という彼との約束を、衛人はたった六日で破ってしまった。
「ほんと、ごめん……。こんなはずじゃなかったのに……」
だが、もう一度、そう謝った時だった――。
「衛人さん……!」
「せん――……」
千里は突然、衛人に近づいてきたかと思うと、衛人を強く抱きしめたのだ。
「お願いです。もう、謝らないでください……」
千里は衛人の耳元で
「ごめんなさい。本当は謝らなければいけないのは、僕のほうなんです……」
衛人は
「千里、どういうこと?」
「千里……」
「衛人さん、ごめんなさい……」
謝るばかりの千里を前に、衛人は頬を
「大丈夫だよ」
衛人は千里の長い髪を、指でそっと
「千里は、本当にきれいだな……」
思わずこぼれたセリフに、彼は瞳を潤め、頬を
本当はもうずっと、恋なんかこりごりだった。不完全燃焼のまま、身を切られるような失恋をしたせいで、胸の古傷が癒えないまま、その
「衛人さん……」
「うん?」
「僕を、抱いてください……」
心臓を
「もしかして、千里……。俺に妖力を使ってたの?」
そう
「……やっぱり、そうだったのか」
それには、深く納得させられた。すると、千里は慌てて言い訳をするようにして言う。
「ごめんなさい……。だって僕、あなたを好きになっちゃったんです……。だから、あなたにも僕のことを好きになってほしくて……、それで……」
「それって、俺が千里を抱いても、千里はずっとそばにいてくれるってこと?」
衛人が
「僕、あなたの伴侶になりたいです。この家で、一緒に暮らしたいです。でも……」
「でも……?」
「半妖ではやはり、だめでしょうか……。僕は、妖力を使ってしまったし……。
千里は悲しい笑みを浮かべてそう言った。同時に、ぽろりと一粒の涙がこぼれ落ちる。それが衛人の頬を濡らした。衛人はもう嬉しくてたまらなくなって、体を起こし、千里の唇をそっとふさぐ。
「ん……っ」
彼にたぶらかされていようと、本当の恋に落ちていようと、そんなことはまったくどうでもいい。それほど、彼が愛おしかった。今すぐ、彼が欲しかった。
千里の、
「千里、だめじゃないよ」
「衛人さん……」
「俺は、千里が半妖でもいいし、妖力でまやかしをかけられていてもいい。千里が好きだってことには、変わんないから」
衛人がそう言うと、千里の瞳から、また涙がこぼれた。それを指先で拭いてやって、衛人はまた彼の唇に口づける。そうして、言った。
「ただ……、誰かを抱くのってはじめてなんだ。うまくできるかわからないけど……、絶対大事にするよ。伴侶になろう、千里」
すると、今度は衛人が唇をふさがれた。筋肉質な千里の腕が、衛人の体を包み、再び畳の上に押し倒される。同時に首すじに吐息が触れ、たまらなくぞくりとさせられる。衛人は多幸感に浸り、目を閉じた。
まやかしだっていい。俺は、千里が好きだ――。
その晩、衛人は千里を抱いた。畳の上で抱きしめ合い、互いの温もりに溺れながら、何度も何度も口づけ合ったあと、もう蛍も飛ぶのをやめた夜更け、千里とひとつになった。それは、とろけるように甘く、恐ろしいほどに