閑話 心配していた人
「あれ、晴政くん行っちゃった?」「行きましたよ」 丁度マサが帰ったところで店長が顔を出した。 この人も何気にアイツを気に入っている…というかちょくちょく付き合って欲しいとか宣ってマサにあしらわれている。冗談だと思われたらしい。 もう三十歳になるから多分焦ってるんだろうな、マサは気付いてないけど。 彼氏いない歴年齢だし…「アンタ今変なこと考えてる?」「……いいえ」 ジトっと睨まれ目を逸らす。 なんで分かるんだよ怖すぎるだろ…視線だけで殺されそうだ。 ともあれ、アイツが元気そうなのは良かった。「あの子、大丈夫そ?」 彼女はそう聞いてきた。 あの事件からしばらくアイツはバイトを休んでいた。 ボロボロになっていたことを伝えていたので店長も凄く心配していた。「えぇ、だいぶ立ち直ったみたいっす」「そっか…良かった」 俺がそう言うと彼女は力を抜いたように微笑んだ。その表情をアイツに見せればチャンスありそうだけどな…。「それなら今度 晴政くんと一緒に食事でも行きたいなぁ…ツヨシから言っといてくれる?」「自分で頼んます」 なんで自分より歳上の人の恋愛サポートとかせにゃならんのだ、頼むからプライドを持ってくれよ店長なんだから。「っかぁ〜、気が利かないねぇ。そんなんじゃアイカちゃんに逃げられるよ?」「余計なお世話っすよ」 万年男逃しに言われたくはない。 そのうち婚期も逃しそう、というかそろそろやばいだろアンタ。「んー?」「なっなんすか?」 色々と考えてるいると彼女の目がすぐそこにあった。ガチホラーだ。 すぐそこと言うとはマジですぐそこだ、目と鼻の先みたいな。 5センチも離れてない…怖い助けて。「なぁにかなぁ…へぇんなこと考えてんだろぉ?」「いいえぇ…」 目力が凄い、どこぞのウサギだよ。 俺は変態という名の紳士とか自称しないんだぞやめてくれ。「ったく、意外と分かんだから気を付けなよ?」「もちろんっす…」 ひとしきり睨んだ後、店長は顔を離して腕を組んだ。怖かった…。「さって…そろそろ仕事に戻るかー」「そっすね」 その声に合わせて二人で休憩室を後にした。