目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

好きな人がラブレターを貰った

「あ、楓華おはよー」


校舎前で前に歩いていた茶髪ショートカットの楓華に話しかける。


「おはよぉ」


「今日も相変わらず眠たそうだね」


「いやぁ昨日は夜中にやってた番組が面白くてさぁ。」


「どんな番組?」


彼氏が教えてくれて見たんだけど、ドッキリ?みたいな番組で、色んなゲームをしながらターゲットにある言葉の単語を伝えていって、それに気づくか、みたいなの」


「へぇ…あの人もそういうの見るんだ」


仲良しなんだなぁ。


「そう。それで最後の伝えたい言葉が面白くてさぁ。その言葉が昨日レストラ………あ、内海くんいるよ?」


「え!どこ!」


「ほら、下駄箱の」


「ほんとだ!」


下駄箱の前で内海くんが片手に上履きを持って何かを見ていた。

隣に柊くんも立っていて、何やら様子がいつもと違う。


「近くまで行ってみる?」


「うっうん」


隣の私たちの下駄箱まで行って近づくと、初めての光景が目の前で起きていた。

柊くんが、私たちに聞こえる位の声で言う。


「えっお前それラブレターじゃん!」


「「え」」


楓華と私の声がつい表に出た。


「柊声がでかい」


「ごめんごめん。でもすげえな。お前まだ1年だぞ」


「初めて貰った……」


内海くんは驚きすぎて上手く言葉がでない様子。


「え、開けてみろよ!」


「お、おう」


内海君は丁寧に封された手紙を開け、中に入っていた一枚の紙を読んだ。


「『よければ今日の夕方の5時、体育館裏に来てください』だって。名前は書いてない」


「やっぱラブレターじゃん!ちゃんと女子っぽい文字だし」


「ふ、楓華ぁ……」


体の力が抜け、私は膝を床につける。


「藍萌!しっかりして!!ほら、内海くんが行かない可能性もあるでしょ?」


「う~~~」


半泣きである。

まあ、ラブレター貰っちゃうのは積極的に行かない私のせいでもあるけど……。


「晴怜それ行くのか?」


「……」


内海くんが少し考えてる間、隣で楓華は「お願いです神様藍萌が息絶えるので内海くんを体育館裏に行かせないでくださいお願いしますもし行ってしまって告白を受けても断るようにしてくださいお願いします神様」と小さな声でブツブツと言っている。

友達思い……やっぱり楓華は良い子!


「行こうかな」


「「え」」


二度目の重なりである。


「行くのか!誰か楽しみだな!」


体がさらに力が抜けた気がする。


「今日は……授業に集中出来なさそうだね」


「………ぅぅ」




その後、授業も部活も集中できなかった。いつも寝てしまう授業も寝れなくて、多分ずっと窓から雲一つない快晴の空を見ていたと思う。

内海くんがラブレターを貰ったことはすぐに噂になり、いつもより内海くんの周りには人がいた。

放課後、体育館裏にこっそり見に行こうかと思ったけど、私が告白する立場になったら、その現場は他の人には見られたくないなと考えたからやめた。

家に帰ってもずっと気になっていたので、いつもの時間、メールを送った。


【今日、ラブレター貰ったんだってね】


案外早く返信が来た。


【うん。うちの学年噂回るの早いな】


【そうだね。みんな仲良いから】


【告白だったの?】


【うん。でも断ったよ】


【そうなんだ】


その瞬間、一気に安心感が出て、胸をなでおろした。


【なんで断ったの?最近とかはお試し付き合いとかあるじゃん?】


【うーん……それも提案されたけど、断ったかな】


【嫌いな人だった?】


【そうじゃないけど、試し付き合いで好きになるかわからないし、それに】


【やっぱ好きな人が良いなって】


内海くんにも、好きな人が居るんだ。


【へぇ。じゃあ、好きな人からの告白待ってるの?】


【待ちながらタイミングを伺ってるというかなんていうか】


【相手も自分のことが好きだって確信してからとか?】


【そうそう】


【以外と臆病だね】


【男だって自爆はしたくないからな】


【あ】


【ん?】


【ベランダ来てくんね?】


【わかった】


いつものようにベランダに行くと、今日は少し風が強く、髪が家の間を風に沿って流れた。


「どうしたの?」


「今日、なんかお前俺を避けてる感じだったからさ、渡せなかった」


そう言って、持っていた紙袋から昨日貸した答えと一番好きな超弾力グミを出して渡した。


「あ……そういえば貸してたね」


「忘れてたのかよ」


「いや……登校中までは覚えてたんだけどね。色々あってそれどころじゃなかったというか……」


「そ、そうか……とにかく、それ食べろよ」


「うん!美味しくいただきます」


「良かった。じゃあな」


「うん」


部屋に戻り、グミの封を開けて一粒口に入れた。

やっぱり美味しい。けど、好きな人から貰ったこれは、いつもより美味しく感じる。


去り際の内海くんの顔は、どこか赤らめているように見えたのは、気のせいだろうか。

きっと気のせいだろう。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?