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第49話 鳴神栞の好感度

「と、とと、ところで、栞ちゃんの好感度ってどんな感じなの?」


 栞先輩をクラスに加入させたら、ゆあちゃんが早速質問してきた。好感度の数値が気になるらしい。


「えっとねー」


「え?え?陸人くん?まさかにみんなに?まって……」


 栞先輩が止めに入るが、オレはすでに栞先輩の座席をタップしてしまった。ステータスが表示される。


――――――――――――――――

氏名:鳴神栞(なるかみしおり)

年齢:16歳

性別:女

役職:無し

所有スキル:無し

攻撃力:52(B)

防御力:36(C)

持久力:68(B+)

素早さ:76(A-)

見切り:78(A-)

魔力:0(E-)

精神力:66(B+)

学級委員への好感度:83

総合評価:B

――――――――――――――――


「あれ?みんなに見せたら、まずかったですか?」


「83……」

「……」


 オレが聞き返して振り返ると、ゆあちゃんが暗い顔をしていて、栞先輩は頬を染めて下を向いていた。


「ねぇ、栞ちゃん?」


「……」


「ねぇってば」


「……」


「おモテになって結構ですわね?」


 鈴のアホが空気を読まずに何か言い出した。


「なぁ、それよりも栞先輩の見切りの数値見てみろよ。78だって、オレの見切りが24だから、だいぶ高いよな?」


「あんた、何焦ってんのよ?」


「は?焦ってないが?てか、やっぱ武道家は見切りの数値が高いんだなー。なぁ?」


 オレは必死に見切りの数値について話をしようとしたのだが、ゆあちゃんはそうもいかない。止めることはできなかった。


「ねぇ、栞ちゃん。りっくんは、ゆあのだよ?」


「そ、それは……いささか強引なのでは……チャンスは平等にあるべきです……」


「キー!桜ちゃんに続いて栞ちゃんまで!りっくんのバカ!」


 ボカ!突然、頭を殴られる。何も言ってないのにだ。


「な!なにすんだよ!」


「りっくんはゆあのなのに!」


「わかった!わかったから!」


「わかってない!バカりっくん!ノンデリ!死んじゃえ!」


「はいはい、ラブコメおつ。あたし、もう帰るから、さいなら」


 鈴が立ち上がって訓練場から出ていく。残されたオレたちは、ゆあちゃんが落ち着くまで解放されることはなかった。



-翌日-


「おはようございます。陸人くん」


「あれ?おはようございます?」


 教室に入ると、栞先輩が座っていた。昨日まで3席しかなかった机が4席に増えている。栞先輩がオレの席の後ろに陣取っているのだ。


「なんで栞先輩が?……あっ、オレのスキルのせいか……」


「そうみたいですね。ふふ、今日からクラスメイトとしてよろしくお願いします」


 栞先輩がニコっと微笑む。栞先輩も、他のメンバー同様、《クラス替え》スキルの効果で強制的にクラスメイトにされたようだ。


「栞先輩の場合、どんな感じでクラスが変わったんですか?」


 自分の席に座って、後ろを振り返る。


「私の場合、桜先生から朝電話があって、クラスが変わっていることを教えてくれました。なので、スムーズにここまで来れましたよ」


「そうなんですね。前のクラスの友達とかには何も言われませんでしたか?」


「一応、LINEで連絡してみましたが、〈寂しいけどまた遊ぼうね〉くらいで、みんな受け入れているようでした」


「なるほど~」


 やはり、オレの《クラス替え》スキルは、謎の性能を誇っている。クラスに加入させると、どんな人物もオレの現実世界のクラスに加入させられるのだ。ゆあちゃんと鈴は同級生として、桜先生と師匠は指導者として紐づいた。学年が1つ上の栞先輩も例外ではなかったようだ。


「授業ってどうやるんでしょうね?」


「私だけ、ヘッドホンをつけてオンラインでやるみたいです」


「そうなんですか?なんか……不便をかけてすみません……」


「いえいえ、全然大丈夫ですよ。私、こう見えて優等生なので」


 優しく微笑む栞先輩は、こう見えて、どころか、まんま優等生だった。


「りっくん?なに見惚れてるの?」


「は?はぁ~?変なこと言うなよ。先輩に失礼だろ?」


「いえ……むしろ嬉しいです……」


「キー!」


「自爆してて草。てか、ゆあ、今のはあんたが援護射撃した感じよ」


「だってだって!鈴ちゃ~ん!」


 ゆあちゃんが鈴に抱き着く。


「はいはい、よちよち。あんたがりっくんの一番よ。がんばんなさい」


「うぇ~ん……」


 謎のやり取りが始まったが、オレはスルーして栞先輩と会話を続けることにした。

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