「と、とと、ところで、栞ちゃんの好感度ってどんな感じなの?」
栞先輩をクラスに加入させたら、ゆあちゃんが早速質問してきた。好感度の数値が気になるらしい。
「えっとねー」
「え?え?陸人くん?まさかにみんなに?まって……」
栞先輩が止めに入るが、オレはすでに栞先輩の座席をタップしてしまった。ステータスが表示される。
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氏名:鳴神栞(なるかみしおり)
年齢:16歳
性別:女
役職:無し
所有スキル:無し
攻撃力:52(B)
防御力:36(C)
持久力:68(B+)
素早さ:76(A-)
見切り:78(A-)
魔力:0(E-)
精神力:66(B+)
学級委員への好感度:83
総合評価:B
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「あれ?みんなに見せたら、まずかったですか?」
「83……」
「……」
オレが聞き返して振り返ると、ゆあちゃんが暗い顔をしていて、栞先輩は頬を染めて下を向いていた。
「ねぇ、栞ちゃん?」
「……」
「ねぇってば」
「……」
「おモテになって結構ですわね?」
鈴のアホが空気を読まずに何か言い出した。
「なぁ、それよりも栞先輩の見切りの数値見てみろよ。78だって、オレの見切りが24だから、だいぶ高いよな?」
「あんた、何焦ってんのよ?」
「は?焦ってないが?てか、やっぱ武道家は見切りの数値が高いんだなー。なぁ?」
オレは必死に見切りの数値について話をしようとしたのだが、ゆあちゃんはそうもいかない。止めることはできなかった。
「ねぇ、栞ちゃん。りっくんは、ゆあのだよ?」
「そ、それは……いささか強引なのでは……チャンスは平等にあるべきです……」
「キー!桜ちゃんに続いて栞ちゃんまで!りっくんのバカ!」
ボカ!突然、頭を殴られる。何も言ってないのにだ。
「な!なにすんだよ!」
「りっくんはゆあのなのに!」
「わかった!わかったから!」
「わかってない!バカりっくん!ノンデリ!死んじゃえ!」
「はいはい、ラブコメおつ。あたし、もう帰るから、さいなら」
鈴が立ち上がって訓練場から出ていく。残されたオレたちは、ゆあちゃんが落ち着くまで解放されることはなかった。
♢
-翌日-
「おはようございます。陸人くん」
「あれ?おはようございます?」
教室に入ると、栞先輩が座っていた。昨日まで3席しかなかった机が4席に増えている。栞先輩がオレの席の後ろに陣取っているのだ。
「なんで栞先輩が?……あっ、オレのスキルのせいか……」
「そうみたいですね。ふふ、今日からクラスメイトとしてよろしくお願いします」
栞先輩がニコっと微笑む。栞先輩も、他のメンバー同様、《クラス替え》スキルの効果で強制的にクラスメイトにされたようだ。
「栞先輩の場合、どんな感じでクラスが変わったんですか?」
自分の席に座って、後ろを振り返る。
「私の場合、桜先生から朝電話があって、クラスが変わっていることを教えてくれました。なので、スムーズにここまで来れましたよ」
「そうなんですね。前のクラスの友達とかには何も言われませんでしたか?」
「一応、LINEで連絡してみましたが、〈寂しいけどまた遊ぼうね〉くらいで、みんな受け入れているようでした」
「なるほど~」
やはり、オレの《クラス替え》スキルは、謎の性能を誇っている。クラスに加入させると、どんな人物もオレの現実世界のクラスに加入させられるのだ。ゆあちゃんと鈴は同級生として、桜先生と師匠は指導者として紐づいた。学年が1つ上の栞先輩も例外ではなかったようだ。
「授業ってどうやるんでしょうね?」
「私だけ、ヘッドホンをつけてオンラインでやるみたいです」
「そうなんですか?なんか……不便をかけてすみません……」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。私、こう見えて優等生なので」
優しく微笑む栞先輩は、こう見えて、どころか、まんま優等生だった。
「りっくん?なに見惚れてるの?」
「は?はぁ~?変なこと言うなよ。先輩に失礼だろ?」
「いえ……むしろ嬉しいです……」
「キー!」
「自爆してて草。てか、ゆあ、今のはあんたが援護射撃した感じよ」
「だってだって!鈴ちゃ~ん!」
ゆあちゃんが鈴に抱き着く。
「はいはい、よちよち。あんたがりっくんの一番よ。がんばんなさい」
「うぇ~ん……」
謎のやり取りが始まったが、オレはスルーして栞先輩と会話を続けることにした。