■ ウジャ(Ujasiri)
•本名は、ウジャシリ。
•スワヒリ語「ujasiri」より。
「勇気」「大胆さ」「強さ」の意。
•ウジャは12歳の少女。祖父母に育てられ、山中で暮らす。
•顔の傷と義手は、父の命と引き換えに救われた時のもの。痛みを抱え、それでも生き続ける象徴。
•モデルは特定の人物ではないが、現代における“孤独と向き合う個”の暗喩でもある。
■ ブラーニョ村①
•架空の山村。地名の由来は「blur(ぼやけた)」と「agony(苦悶)」を掛け合わせた造語。
•村はイヌガミの存在を伝承としてしか捉えておらず、ウジャの警告にも耳を貸さなかった。
•村民の視野の狭さ、保守性が描かれているが、これは“見えぬ悪”と“見ようとしない集団”の縮図でもある。
■ ブラーニョ村②
•Vranyo(ヴラーニョ) — ロシア語起源
•意味:「嘘だけど、みんな本気にしているやつ」
•ニュアンス:「お互いにウソ承知で、まぁいいか」と無言の合意を含む欺瞞文化っぽい感じ。
•つまり、嘘だとわかってるのに、皆で“騙される側”にまわる不思議な現象。
■ イヌガミ
•伝説上の妖獣として描かれるが、本作では飢餓により実体化した存在。
•白い体毛と赤い目、二足歩行、異様な執念など、恐怖と現実の間に存在するもの。
•弱点は“腹”とされるが、これは「感情(gut feeling)」の象徴。情に対して脆い存在として設計されている。
■ アイ婆さま(アイハバ)
•ウジャの祖母で、山の知識と生活の術を教えた人物。
•「アイ」は「愛」。「ハバ」は年長女性を表す方言的音節を添えた造語。
•唄や教えを通じてウジャの中に生き続ける存在。
■ 子供たちの唄(伝え唄)
イヌガミ イヌガミ かぜまとう
かぞえりゃ 足音 六つ七つ
あさにまぎれし ひるにゃ笑う
よるにゃ 首が 八つ飛ぶ
しのばっけた しのばっけた
おやまのさきの かぜむこう
しのばっけた しのばっけた
ねむるおやまの そのさきで
•形式はわらべ唄・伝承歌。四行形式でリズムを揃え、無垢な口調に不穏さを孕ませる。
•「しのばっけた」は作中語で「死の箱開けた」の略語的表現。
•本唄は物語の予言構造を担い、子供たちの無意識的な“語り部”として機能する。