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悪役令嬢をまっとうしたら第二王子に攫われました。〜新天地で溺愛されながら好みのドレスで新婚生活を満喫します〜
悪役令嬢をまっとうしたら第二王子に攫われました。〜新天地で溺愛されながら好みのドレスで新婚生活を満喫します〜
朱宮あめ
異世界恋愛悪役令嬢
2025年06月29日
公開日
1.9万字
連載中
恋人に殺され、巷で人気の乙女ゲームに出てくる悪役令嬢、オリヴィア・ローレンシアに転生した女性A。 婚約者であるラファエル・スコットが自分を殺した恋人に似てあまり好みじゃなかったオリヴィアは…… こうなったら、悪役令嬢を全うして追放されてやろう! ラファエルの弟、レイル・スコットに協力を頼み、晴れて牢に入ったオリヴィア。 しかし、国外追放を待っていたオリヴィアに突き付けられたのはまさかの『死罪』で……!? 牢からオリヴィアを助け出したレイルは言った。 『オリヴィアさんのことは、僕が守るよ』 レイルから執着的な愛を受けつつ、オリヴィアは新たな場所で好みのドレスと新婚生活を満喫する。

第1話


 甘い花の香り。天井の高い部屋に、清潔なシーツ。オリヴィアの身体は、薄鼠色うすねずいろをした花柄の編み上げワンピースに包まれている。


 スカートの裾は透けていて、オリヴィアの細く白い足を美しく映していた。


 まさに深窓しんそうの令嬢そのもののオリヴィアだが、彼女はつい先日まで――悪役令嬢あくやくれいじょうのはずだった。


「オリヴィアさん、ご飯できたよ」


 香ばしいパンの香りとともに、ひとりの男性が部屋に入ってくる。

 ハイネックのロングジャケットを着た色白の美青年だ。長い銀髪がさらりと揺れる。


 男性はオリヴィアを見ると、ハッとしたような顔をした。

 手に持っていた朝食のプレートをテーブルに置き、ベッドに来る。


「あ……あの……?」


 片脚をベッドに乗せ、オリヴィアの肩に触れた。


 びくり、と肩が跳ねる。


 強い力で押さえつけられているわけでもないのに、オリヴィアは動けなくなった。

 男性の指が、ツーッとオリヴィアの首筋から胸元へすべっていく。


「……あぁ、やっぱり。あと、着いちゃってるね」


 ごめん、と、男性の顔が苦悶に歪む。


「すぐに新しい服を作ってあげる。オリヴィアさん、今はとりあえず別のドレスに着替えて……」

「え……いや、これくらい大丈夫だよ。全然きつくないし」


 可愛いし、と、オリヴィアは首を横に振る。


 すると男性は、

「ダメだよ」

 と、冷ややかに言った。


 男性の深い藍色の瞳がオリヴィアを捉える。その瞳には、有無を言わさない圧があった。


「君に痕を付けていいのは、僕だけだから……ね? オリヴィアさん」

「……う、うん」


 素直に頷くと、男性はにこりと笑った。

「いい子」


 ワンピースの痕がついた素肌に甘やかなキスが落ち、オリヴィアはくすぐったさに身悶えた。


 男性は満足したように微笑むと、コロッと空気が変わる。


 今度は無邪気な笑みを浮かべて、

「さて、ご飯できたよ! 一緒に食べよう?」

「うん……」


 それは、かつてオリヴィアの婚約者であったラファエル王子の弟、レイル・スコットだった。


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