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ステラ・ファビアーノ・エルネスタ
好感度
62/100
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グリフォンとの戦いで一度大きく減った好感度は、改めて食事を一緒にとることで大きく回復した。
というか、回復どころか前より上がっている。なんでだろう?
疑問に思いつつも、それから3日間、リングベルでのいつもの日常を過ごしていると、攻略さんから新しいアドバイスが表示された。
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冒険者ギルドにて、エルネスタ王国騎士団からの依頼を受けてください。
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とのことだ。
ほー、今日からそんな依頼が出るんだ?
これでもっとステラさんとお近づきになれるのかな?
オレはワクワクしながら、みんなでギルドに向かうことにした。
攻略さんの言う通り、ギルドにはエルネスタ王国騎士団からの依頼が出ていた。
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【依頼内容】
人員不足のため、町周辺の巡回とモンスター討伐を依頼したい。
本依頼には騎士団が同行する。
【条件】
冒険者ランク上級以上の方。
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という内容だ。
「人員不足ってなんでですかね?」と受付嬢に聞いてみる。
リングベルには騎士団員が100名ほどが常駐しているはずなのだが。
「どうも他の地域でモンスターが大量発見したとかで、西方支部の騎士団がかなり応援に向かうみたいですよ?」
「なるほど、この依頼って報酬いくらなんですか?」
「ギルドの方では〈働きに応じて決める〉としか伺っていません…」
「ふーむ?」
「なんだか、めんどくさそうな予感がするわ」
とソフィア。
たしかに、いちゃもんつけられて報酬がぜんぜん出ない、みたいな匂いがする。
「まぁでも、1日受けてみて、割に合わなかったら、明日からはやめればいいんじゃない?
リーフシープを狩り続けてもシケてるしさ」
「そうですね」
リリィは同意してくれた。
「まぁそれならいいわよ」
ソフィアも渋々ながらOKだ。
オレたちは依頼を受諾して、騎士団の駐屯地に向かうことにした。
♢
門番に依頼書を見せると門をあけてくれた。
「建物の中へどうぞ」とのことだ。
門から建物までは少し距離があり、運動場?というのか訓練場として使うようなスペースが広がっていた。そこに数多くの騎士たちが整列している。
歩を進めると、柱の物陰から声が聞こえてくる。
「クソっ、あの化け物にリングベルを任せることになるとは…」
「しかし、オズワルド様、遠征で功績をあげれば、あいつよりもオズワルド様が優秀だと見聞できるのでは?」
……あのキザやろうだった。
また、ステラさんの悪口を言っている。しかも取り巻きまで同調したような口振りで話していて、非常に気分が悪い。
こんなところで話していたらステラさん本人の耳にも入りそうなのに、そんなこともわからないのか?それとも、わざとなのか?
オレは歩きながらも、イライラとそいつらを睨んでいると、オズワルドと目が合った。オズワルドは、オレのことを確認すると、露骨に不快そうな顔をしてきたが特に何も言ってこないので、無視することにした。
建物の扉を開けると、目の前のホールで数名の騎士とステラさんが立ち話しているのを見つけることができた。なにか打合せしていたようだ。
「あ、依頼を受けてくれた冒険者の方ですか?」
騎士の1人が声をかけてきた。ステラさんはオレたちにまだ気づいていない。
「はい、ギルドから伺いました」
オレは依頼書を見せながら答える。
「ありがとうございます。非常に助かります。それでは、そちらの席で少しお待ちいただけるでしょうか?」
オレたちは訓練場がよく見える大きな窓がある席に案内された。訓練場には相変わらず大勢の騎士たちが整列している。
そこに、ステラさんとオズワルドのやろうが現れた。
2人は何かを会話したあと、オズワルドが馬に乗り馬を走らせた。その後ろを追うように大勢の騎士たちが馬に乗ってかけていく。少しして整列していたすべての騎士が門から出て行くのを確認できた。
つまり、今まさに、他の地方に大量発生したというモンスターの討伐に出かけた、ということだろうか。
騎士団の都合を想像していると、ステラさんが近づいてきた。
「お待たせしました。グリフォンのとき以来ですね。改めまして、エルネスタ王国騎士団 西方支部の騎士団長を務めております ステラ・ファビアーノ・エルネスタと申します。以後、お見知りおきを」
およ?ステラさんはあくまでファビノ食堂でのことは言わないようだ。
ふむふむ?初対面を装えばいいんですよね?
「はい、あのときは助けていただき、ありがとうございました」
とりあえず空気を読んでおくことにした。
「いえいえ、わたしは最後のトドメを刺しただけですので」
実に謙虚である。オレたちはダメージらしきものを与えることはできなかったのに。
「皆さんにお願いしたいのは、私たちと一緒にリングベル周辺の巡回と、そこに発生するモンスターの討伐になります。皆さんは馬には乗れますか?」
「え?いや、オレは乗ったことないです…」
「わたしもです…」
「わたしは乗れるわよ」
「でしたら、えーと」
「リリアーナ・クローバーです」
「ソフィア・アメジストよ」
「ライ・ミカヅチです」
「私の後ろにリリアーナさん。ソフィアさんとライさんは一緒に乗っていただけますか?」
「わかりました」
馬に乗る布陣が決まったところで、各自の武器や魔法、何が得意かを打ち合わせていると、1人の騎士が近づいてきた。
「ファビアーノ殿!」
なんだか機嫌が悪そうなその男は、オズワルドとステラさんの悪口を言っていたやつだった。
「なにか?」
「やはり、誇り高き騎士の務めに冒険者ごときを同行させるのは納得できません!」
「…そのことについては結論が出たはずです。それに、失礼ですよ」
オレたちが目の前にいることをこいつは忘れているのだろうか?
ほんま失礼やで。
「くそっ」
そいつは騎士団長に注意されたのに悪態をついてくる。
「下がりなさい!これは団長命令です!」
男は不満を露わにしたまま、後ろにさがる。
「ちっ、化け物が…」
そいつは、あえて聞こえるように呟いてきた。
「なんなの、あいつ?あなたの部下じゃないの?」
ソフィアが気に入らなそうに尋ねる。
「組織上はそうなのですが、平民上がりの私を嫌っている団員も多く…それと、この角のこともあり…」
彼女は角をそっと触る。
「お恥ずかしいところをお見せしました…」
「平民とか貴族とかめんどくさいわね。
ところで、なんで角があると嫌味言われるのよ?魔法学校では角がある人なんて、たくさんいたわよ?」
「え?そんな学校があるんですか?」
「えぇ、もちろんあるわよ、わたし自身が通っていたんだもの」
ステラさんが興味深そうに聞いている。
「身分や人の容姿で差別するのは、わたしも正直不快ですね」
めずらしくリリィも不快感を露わにした。
ステラさんは、目をパチパチさせたあと、
「あなたたちは、なんというか、素晴らしいですね」と、少し柔らかい表情をする。
騎士団の中では、オレたちの考え方は珍しい意見だったようだ。もちろん、オレも同意見だというのは言うまでもない。
「わたし、あいつと一緒に仕事するならパスするわ」
「わたしもちょっと…」
「いえ!大丈夫です!巡回は私と、私に従ってくれる騎士しか同行させませんので!」
「なら、大丈夫かな?2人とも?」
「まぁそれなら」という感じで2人が頷いてくれる。
騎士団の中は、色々と複雑な状況のように感じたが、ひとまずステラさんと一緒に仕事をこなすことができそうだ。
これでもっと仲良くなれたらいいな、そんな期待をしながら、業務内容について詳しい話をつめていくことにした。