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第70話 奴隷を助ける作戦会議

 宿に戻ってきてから、自室の椅子に座わり、腕と脚を組んで目を閉じる。これで一応、なにか考えてますよ、というポーズになっているはずだ。

 ひとまず、みんなからは怪しまれないと思う。


 頭の中で攻略スキルを使い、『攻略対象設定』、そう念じると、昼に檻の中で見た少女の名前が表示される。


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ティナ

 好感度

  0/100

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 まだ相手に認識されてないからなのか、好感度0からのスタートだ。いや、認識どうこうは関係ない。


 みんなのときだって、挨拶してから攻略対象に設定したわけではなかった。だから、単純に今までで1番低い好感度からのスタートだった。


 リリィのときが〈3/100〉スタートでかなり低かったけど、あのときリリィは町の人からヒドイ扱いを受けてたから人間不信気味だったんだよな、たぶん。


 つまり、このティナというエルフっ子も人間不信というか、もはや人間嫌いなのかもしれない。でも、しょうがないよな。自分のことを奴隷扱いしてくる種族のことなんて、キライで当たり前だ。


 そこまで考えて、これからの攻略が難航しそうだと覚悟していると、さっそく、攻略さんからアドバイスが表示された。


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560万ルピーを確保してください。


1週間後のオークションでティナを落札してください。

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 なるほど、〈ティナを奴隷商から攫え〉という指示ではないのか。


 奴隷を買う、という行為に抵抗を覚えるが、ティナを攻略するには、それが正攻法のようだ。


 ふーむ、それにしても……

 560万ルピー?今のオレの手持ちは80万ほどしかない。全然足りない……


 オレたちパーティのサイフは個人ごとに違うから、仮にみんなから借りたとしても、多分300万とちょっとしかないだろう。

 それに、そもそも彼女たちのお金に手をつけたくない。男のプライドである。


 ふーむ、そうすると、あと500万近くをどうするか……


「ライ様?どうかされましたか?」


「え?うん、ちょっと考えごとをしてて……」


「それって、昼のエルフの子のことですか?」


「うん、どうにかしてあげれないかなって」


「って言っても、相手は奴隷よ?オークションにでも参加する気?」


「仮に、仮にだけど、オークションに参加したとして、彼女を買うことになったとしても、彼女を奴隷として扱う気はない。奴隷契約って解除できるよね?」


「うん。お互いの同意があれば、わたしでも解除できるわ」


「そっか…あの、ここからは相談になるんだけど、オレが彼女を仲間にしたいって言ったら、みんなはどう思う?」


「そうですね、複雑な気持ちはありますが、あの子がよくわからない人に買われるくらいなら、ライ様の仲間になった方が絶対に幸せになれる自信があります」


「う〜ん?どうかしら?

 素直な気持ちは、またライのお人好しとスケベ心が働いてるのかなって感想ね。

 助けるのは同意よ。ただ、奴隷契約を解除した途端、逃げると思うわ」


「そうですねぇ~。私はライさんが私のことを愛し続けてくれるなら賛成です。もちろん、愛してくれますよね?」


「あぁ、それはもちろんだ。オレはみんなのことを一生愛していく。それは絶対に変わらない。オレにはみんなが必要だ」


「ふ〜ん……」

「うふふ♪素敵な旦那様です♪」

「ライ様、キマってます…」


 三者三様の反応だ。あれ?オレまた恥ずかしいこと言ってた?


「ありがとう。みんなにはホント感謝しかないよ。こんなワガママに付き合ってくれて。

 ただ、今回の件だけど、エルフの落札価格っていくらになるもんなのかな?」


 みんな、う〜ん、と首を傾げる。


「だよね、誰もわからないよね。まぁその辺は考えてもわからないし、お金を貯めてオークションに挑むとしよう」


 そこで、今日の作戦会議は終わった。


 オレは攻略スキルでアドバイスされた560万ルピーの稼ぎ方について、考えることになった。


♢♦♢


 翌日からも、ギルドでのモンスター討伐依頼をこなすことにした。


 生活費を稼がないといけないのと、ティナをオークションで落札するためのお金を貯めるのが当面の目的であった。


 オークションに参加することにしたので、一応みんなの所持金を教えてもらったが、合計で320万ルピーほどだとわかった。


 オレたちはギルドの依頼を均等に分配しているため、オレとリリィとソフィアの所持金は同じくらいだ。

 ステラはサイフを持たせずに攫ってきたので、ガルガントナでの収入しかなくて、まだあまり所持金がない状況だ。


 やっぱり、攻略さんのアドバイスの金額には届かいなぁと思いつつ、まぁ、そもそも彼女たちのお金を使う気はないんだけどね、とも思う。


 手っ取り早く、お金を稼ぐ方法としては、やっぱりあれだろう。


【前世での発明品のアイデアを売る】

 これに限る。


 ソフィアを助けるためにエリクサーを購入したとき、防具屋のエマにシャワーのアイデアを売ったのと同じ作戦だ。


 じゃあ、どのアイデアを売るかだな。いくつか候補をあげてみる。


 例えば、カップ麺。

 この世界にきてそんな商品は見たことがない。もし普及すれば大儲けできそうだ。ただ、カップ麺の製造法はオレにはわからないし、量産できる文明があるのかもわからない。魔法でなんとかなるかもしれないが、この案は現実的ではないように思えた。


 次に、ひっぱって取れる洗濯バサミ。

 洗濯バサミの挟む内側にデコボコのローラーが付いていて、洗濯物を取り込むときに引っ張ると簡単に洗濯物が外せるという品物で、外すときだけ、洗濯バサミを摘む、という動作が不要になる。

 個人的には割と感動して一人暮らし時代に使っていたのだが、世の中にそこまで普及しているようには見えなかった。発明としては弱いかもしれない。


 あとは……避妊具、まぁコンドームだ。

 この世界にきて、コンドームというものを見たことがない。皆さんはどうやって避妊しているのだろうか?オレのように主従契約を結んだり、魔法でなんとかしている、とも思えない。もしかしたら、このアイデアは結構いけるのでは?と思っている。


 とりあえず、3つ、発明品のアイデアを考えてから、次の問題について考える。


 この発明アイデアを誰に売るか、だ。


 できれば初対面の人には売りたくない。信頼関係がない人と取引をすると足元を見られる気がするのだ。そして、できればこちらが優位に立てる相手がいい。

 とすると、そのような商人には心当たりが1人しかいなかった。


 そこまで考えて、オレはそいつの居場所を探すことにした。


 ギルドから宿への帰路、オレはみんなに断ってから、一人分かれて行動した。商人たちへ聞き込みをするためだ。

 すると、探し人は商人たちの中では有名人らしく、すぐに居場所を知ることができた。


 ありがたい。さっそく明日、会いに行ってみるとしよう。

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