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白百合姫と七人の屈強なドワーフ達
白百合姫と七人の屈強なドワーフ達
ずくなしひまたろう
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年06月29日
公開日
19.3万字
完結済
〈白百合姫〉ことリリーは、森の木々と草花に愛された魔女でした。 好きなモノはお兄様とお義姉さま。苦手なものは太陽。 魔法の力を使って楽しく暮らしていた彼女のもとに、ある日突然黒尽くめの暗殺者が送られてきたのです! イタズラのし過ぎでとうとうお義姉さまがブチ切れたのだと悟ったリリーは、お城を出奔し森に身を隠すことに。 逃げ込んだ森の奥深くで出会ったのは七人の小人たち。 ひと悶着の末、ほとぼりが冷めるまで彼らに匿ってもらうことになったリリーでしたが、小人たちはみな一癖ある偏屈者ばかり。 その上、凶暴な地龍の退治を手伝えなどと言い出すものだからさあ大変! お義姉さまの刺客や、白馬の王子様もやってきて森の中はてんやわんやの大騒ぎに! 果たして白百合姫は生きて森から出られるのでしょうか……

プロローグ 『むかしむかしのおはなしです』

むかしむかしのおはなしです。


 それは夏のはじめのことでした。


 おきさき様がおしろの塔のいちばん高いおへやから、外をながめておりました。

 まどの外、おしろのかべの向こうにはおおきな森がひろがっておりました。

 あざやかなみどり色の葉っぱが、おひさまの光ををいっぱいにあびておいしげり、えだ先で小鳥たちがたのしそうにさえずっています。

 おきさき様は、森のふちにまっ白なお花がさいているのを見つけていいました。


「あらあら、まあまあ。

 なんてきれいなお花だこと!」


 それはとてもみごとな、うつくしいユリの花でした。

 あたたかなそよ風にふかれて白い花びらがゆれるのをみて、おきさき様はそのかおりが塔のてっぺんにまでとどいたようなこころもちになりました。


「あのユリのように、まっ白でかわいらしい女の子をさずかりたいものですねえ」


 おきさき様はうっとりとしながらそうつぶやきました。

 するとどうしたことでしょう。

 ユリの花びらがすこしゆれると、中から小さな、はねのはえたようせいがとびだしてきたではありませんか!


 ようせいは塔のてっぺんまでひらひらととんでくると、おきさき様のあたまの上を三ど回りました。

 そうしておどろいたおきさき様が小さくまばたきをしたあいだに、ようせいはフイときえてしまいました。


 おきさき様はゆめでも見たのかしらとつぶやいてまどの外に目をやりましたが、森のふちにはきれいなユリの花が先と同じように、きもちよさそうに風にゆられているばかりでした。


 よく年の春になって、おきさき様はお子をさずかりました。

 それはすきとおるような白いはだに、ぎんいろにかがやくかみ、そして宝石のようにキラキラとした赤いひとみのとてもかわいらしい女の子でした。


「なんとうつくしい子でしょう!

 まるであのときの白ユリのよう。

 そうだ、この子を『白ゆり姫』となづけましょう」


―― 『クリーム童話集 白ゆり姫』より

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