高橋円と一緒にいると、あの純真な白い花のような姿がよく似合っていると思った。
玲子は内心で皮肉を感じた。高橋円は自分が手ずから押し上げた存在であり、人選は間違っていなかったようだ。彼女は雅人の隣に立ち、落ち着いた目で周囲を見渡した。
「あんた、転職したのか?」
航は周囲を無視し、頑なな視線を玲子に向けた。疑問の形を取ってはいるが、その口調は確信に満ちていた。
玲子は何も知らないふりをして首をかしげ、雅人の方を見た。「この神崎社長の言うこと、よく分かりませんね。藤原様、あちらへ行きましょうか?」
雅人は自然に応じ、穏やかに頷いた。「失礼します、神崎様。入札会でまたお会いしましょう。」
すれ違いざま、航が突然手を伸ばし、雅人の肩を押さえた!
「お前、彼女に会ったことがないって言ってたよな?」
彼の瞳は底知れぬ暗さを帯び、全身から冷たい気配を放っていた。
高橋円は初めて航と大きなイベントに出席し、こんな場面に遭遇してしまい、すっかり怯えて何も言えなかった。
雅人は肩に置かれた手をそっと払って、落ち着いた態度で答えた。
「言ったその後で会ったんだ。」
二人はそのまま遠ざかっていった。航は振り返り、並んで歩く二人の背中をじっと睨みつけ、瞳はますます暗くなり、拳を無意識に握りしめていた。
玲子の心は不思議なほど静かだった。航への感情は、最後の嘘で完全にすり減り、故郷での半月の冷却期間で完全に目が覚めていた。
——本来なら、もっと早くこうするべきだったのだ。
「昔の彼氏が再会すると、やっぱり険悪になるものですね。」
雅人はどこか楽しげに皮肉を込めて言った。
玲子は鼻で笑った。
「昔の恋人なんて、そんなものじゃないわ。」
入札会は盛大に行われ、名士が集まっていた。雅人は時折、彼女に紹介してくれた。
「あちらは九条拓哉、九条家の現当主で、ビジネス界の新星です。今、非常に注目されています。」
そう言って、ある方向を指し示す。
玲子がそちらを見ると、高身長で痩せ型の男の横顔だけが見えた。九条家には、かつて放蕩息子の九条景の印象しかなかった。だが、この九条社長は、確かに場を仕切る力がありそうだ。
視線を戻し、玲子が席に着こうとしたその時、なんと神崎航が彼女の隣に座った!
「偶然だね。」
航は目を細めてわざと近寄り、温かな息が彼女の耳元をかすめ、頬まで熱くなった。
玲子は膝の上の指をわずかに握りしめ、すぐにでも立ち去りたい衝動を必死で抑えた。すでに客たちは続々と着席し、今さら席を移るのは難しい。彼女は小声で雅人に合図し、彼も頷いて了承した。
玲子は身を乗り出し、雅人と席を替えようとした。だが突然、足元に何かが引っかかり、体のバランスを崩してしまった!
強い力が彼女の肩を後ろに引っ張った!
玲子は驚きの声を上げ、そのまま元の席に座り込んだ。目をぎゅっと閉じてしまう——だが、予想していた衝突は起きなかった。
「いつまで寄りかかってるつもりだ?」
男の低い声がすぐ耳元で響く。
玲子ははっと目を開け、深い鷹のような瞳とぶつかった。
淡い茶色の瞳孔に、自分の小さな姿が映っている。そこで初めて、自分が航の腕に頭を乗せていたことに気づいた!
玲子は電気が走ったように体を離し、一瞬だけ顔に不自然な表情が浮かんだが、すぐに何事もなかったかのように戻った。あまりにも突然の出来事で、雅人も何が起きたのか見ていなかった。
「大丈夫ですか?」
雅人が心配そうに尋ねる。
玲子は首を振り、歯を食いしばって二言だけ答えた。
「大丈夫。」
「こっちは巻き添えを食らったんだぞ。」
明らかに文句をつける声が響いた。