「これで貴様も最後だユリアーナ」
断頭台に登らされた罪人、ユリアーナに向かってこの国の皇子、デュアベルが言い放つ。
「殺せー!」
「殺しちまえぇー」
「この国を滅ぼそうとした悪魔なんて殺してしまえ」
「死ねぇー!」
断頭台の周りに集まった国民たちがユリアーナを殺せと口にする。
『あぁ、どうしてこの国の人たちは気付かないの?どうしてその存在を無視するの?』
ユリアーナは自分の目の前にいる皇子や兵士、国の人々を見て心で呟く。
「時間だ、やれ」
皇子の手が上げられた。死刑の執行の時間だった。兵士の斧が振り上げられた。そして、結ばれていたロープを躊躇うことなく切られた。
『トール様、ジークグリード様、ごめんなさい。もう一度、生まれ変われるのなら、トール様と恋をして、幸せになりたいです』
ユリアーナの頬に一筋の涙が伝った。
ガシャンッと落とされる刃物。
「ユリアーナぁぁ!!!」
会うことも、近づくことも許されず、助けに来た時にはすでに遅く己の目の前で愛しの妻を殺されたトールの叫び声が広場に響き渡ったと同時に眩い光が照らした。
「許さない、お前たちを絶対に許さない!」
その言葉と共に、世界が揺れ、地震が起き、世界が崩壊したのだった。
『愚かな奴らよ。欲にかられ大切なものを見失うとは』
『よかったのですか?』
『あの2人はあなた様の大切な子供らだったのでしょう?』
『あなた様の力を使えばどうなるかわかっていたはずでしょうに…』
崩れていく世界を見ながら話すは人ならざる者。この世界で最も神に近い存在。
『かまわぬ。あやつが望んだのは彼女との幸せ。こんな終わり方ではない。それに…あの二人には成し遂げてもらわねはならぬ。今世では果たせなかった役目。あの2人にしかできぬ役目をな…』
己の傍で横たわる二人の人物を見つめながら答えるその声には優しさと厳しさが込められていた。
『さぁ、我らもまたあやつの願いを叶えようぞ』
『はっ』
『はい』
その言葉と共にその場にいたものすべてが眩い光へと包まれたのだった。