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タレント――先天的に備わる素養
スキル――後天的に修得する技術
渋谷事変以降、地球上に存在する全ての生物に必ず、最低でも一つはタレントが備わる(渋谷事変以降に誕生した生物は、タレントを必ず一つ以上有している)。
渋谷事変以降、元々地球上に存在していた技術がスキルとして情報が可視化、習得が容易になる。
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「――すごく美味しいです!」
「う、うん、よかった……うん……」
(この子、誰っ!?え?どういうこと!?)
横浜ダンジョンの大侵攻後、第三拠点で一悶着ありつつも解放されたナナミンこと金髪ロングな美女、草壁 七海、二十四歳。そして、阿修羅と呼ばれる少年――藤堂
時刻は既に夕方を過ぎ、食事の時間である。それならばと、ナナミンが勇気を振り絞ってカイトを夕食に誘うと、まさかの了承。ナナミン行きつけの料亭にやってきた。
正直なところ、途中から妙だと思っていたナナミン。オーガから採取可能な素材を片っ端から集めた後、第三拠点に戻るまでの間、終始ポワポワしているカイトの姿に戸惑い。第三拠点で一旦わかれて合流する時には、ベンチで眠るカイトの周りは、どこから来たのかネコだらけ。寝ぼけ
(この子、アレだ、ハンドル握ると性格変わるタイプだ、うん、間違いない――)
食事を終え、配信のこととか色々話したいことがあるとカイトに伝えたナナミンは、明日、横浜ダンジョン第三拠点で落ち合うことに。
素直で可愛い年下の小柄な男の子……尊い、天然ゆるふわポワポワにゃんこ系男子、良いかも♡、というか、マンチカンみたいで可愛い♪、なんてことを考えながら、仲良くなれそうで良かった、と、ナナミンは安堵していた。
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「カイトくん、こ、ここ……どこ?」
「ふふ、どこでしょうか♪」
(今日も笑顔が可愛い♡とか、考えてる場合じゃない!ここ、どこ……ひぃぃっ!?)
二人が今いる場所自体は、ナナミンも理解している。横浜ダンジョン第三拠点から約二時間ほどウォーキングした距離、およそ六、七キロメートルほど離れた地点にいるのだから。
昨日の今日、早速コラボ配信を開始したナナミン、カイトが行きたいところがあると言うので、その後を追いかけ――気付いた時には未舗装の道、つまり、未開拓エリア。
二人が踏み締める地面も周囲に広がる壁も、ゴツゴツした石や岩造りのそれであり、お世辞にも快適とは言い難い。だが、ナナミンにとっての問題はそこではない。
(カイトくんに付いていくのに必死で、ここまでどう来たのかわかんないけど……どう見てもヤバい雰囲気よね……)
通常の探索は、地図作りと並行して動くため、時速に換算すると、大概が一キロメートル以内、多くても二キロメートル以内となる。そして、攻略組と呼ばれるような凄腕の探索者ほど無理も無茶せず、安全マージンを多めにとって探索する。これは当然のことだ。そのやり方を臆病と
これは、死んでも生き返ることが可能なゲームではなく、一度死ねば蘇ることはない、正真正銘、命懸けの探索なのだから。
そのことは、探索者以外の人々も心得ており、今日のナナミンの配信開始当初、阿修羅キターーーーーー!!、といった古き良きネットスラングなどを駆使したコメントで沸き上がっていたが、今現在は、さすがにヤバくね?、といった心配するコメントで溢れている。
「ねえ、カイトくん、そろそろ――」
「――みつけました」
「……え?」
二人は、開けた空間に足を踏み入れる。その空間は広く、天井までの距離も高い。そして、その空間のことをきちんと認識した瞬間、ナナミンもナナミンの視聴者たちも戦慄する、しない訳がない。二人がたどり着いた空間の特徴が、とある存在がいるとされる空間のそれと、完全に一致しているから。
カイトとナナミン、ナナミンの視聴者が、その存在を見つける、視界に捉える、認識する、確信した。
「アレって、まさか――」
「僕、配信ってよくわからないですが――」
ダンジョンと呼ばれるようになった門の中において、行く手を阻む最大の障壁は何かと問われた時、経験者は、みな口を揃えて同じ存在の名を挙げる。その存在は、本来、複数のパーティを組んで――最低でも五〇名以上の人員で以って討伐するような、それほど強大な存在。
「アレ倒したら、喜んでもらえますか?」
その存在の総称は――階層主。
その存在の名はオーガヒーロー。
そして、これが、カイトの答え――ナナミンに配信に出てほしいと誘われ、了承したものの、コラボってなんだろ?、となったカイト。いまいち何をしたらいいのかがわからなかったので、自分が楽しいことを見せればいいかな?という考えから、
阿修羅と鬼の英雄、