かつて日本だけでも数十万人を虐殺した魔王がいた。
その魔王を討伐してから数ヶ月の時が経った。
俺こと勇者鈴木と、聖女のシャンテルは国から貰った報奨金で、怠惰で平和な生活を謳歌していた。
彼女が魔王討伐後に行きたいと言っていた美味しいものを食べたり、温泉旅行に行ったり、賭博したり、とにかく遊びまくった。
魔王討伐時に貰った賞金で遊びまくった結果……
「お金が底をつきそうっすよ、鈴木のアニキ!」
「……マジか」
あっという間に全財産を使い果たしてしまった。
◇
「大丈夫、俺たちには魔王を倒したという名声がある! それを活かせばいい!」
「鈴木のアニキ、今では配信というのが流行ってるらしいっすよ! それやってみるのも手っす!」
配信、巷ではダンジョン配信というものが流行っているらしい。
日本で魔王が現れた、十五年前のタイミングで東京に現れて以来、ポツポツと世界中に出現するようになったダンジョン。
んで、そのダンジョンを攻略する動画配信が、世界中で大流行りしているらしい。
「とりあえずやってみるか!」
「了解っす! それじゃ、機材用意してくるっすね!」
「せっかくだし、俺も行こうか」
◇
「配信用の機材ですか?」
こうして俺たちは某電気屋に来ていた。すると早速、店員は俺たちの正体に気づいたらしい。
「そこにいらっしゃるロングヘア銀髪スレンダー体型の美少女聖女で、特徴的な青の髪飾りを身につけているのは。シャンテルさんですね? 勇者様のお仲間として魔王を討伐し世界を救ったと。そして貴方は……」
店員さんはいろんな種類の配信機材を持ってきてこう言い出した。『勇者様、今なら勇者様割引つけますよ?』と。
「俺の名前、鈴木なんですけど?」
俺は断じて勇者様という名前ではない。俺には鈴木っていう立派な名前があるのだ。
「は、はぁ。鈴木様……」
「店員さんを困らせるのもほどほどにするっすよ~鈴木のアニキ~」
シャンテルの声がした方に向くと、彼女は既にあらかたの配信機材を選び終えていた。
にしても小さな身体で機材をたくさん持っているが、重そうだ。なので、シャンテルが持ってたもの全部持つことにした。
◇
「配信機材で全財産が吹き飛んだ……」
「まっまあ、必要経費っすよ鈴木のアニキ! こっから稼いでいけばいいんすよ!」
すっからかんになってしまった財布を眺めていると、突然街中から悲鳴が聞こえてきた。
「モンスターだ! 逃げろ~!?」
「好都合だな。シャンテル、撮影の準備を!」
「がってん承知の助っす! あと念のため、一定時間回復する魔法かけておくっす!」
「ありがたい」
現場に駆けつけるとオークが暴れ散らかしていた。見た目では恐れずに足らずだが、念のため必殺技で決着をつけよう。
「アッパーカット!」
下から突き上げるように繰り出すパンチをオークにぶち込んで、一撃KOした。
◇
「見てくださいアニキ~! 一時間で数万再生っすよ!」
オークと戦った時の映像を動画配信サイトに流したらプチバズった。
「動画配信も夢があるなぁ」
こうして、俺こと鈴木と、シャンテルは配信の道の一歩を歩み出したのだった。
◇あとがき
読者の皆様、いつもご贔屓にありがとうございます。
実は、ダンジョン配信というジャンルを書くのは初挑戦となります。至らない部分があるかと思いますが、容赦なく指摘していってください。
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