「貴方達、よく見てみたら14代勇者様とあたしの後輩ちゃんじゃない! 久しぶりね! 貴方達、魔王を倒したらしいじゃない! 冒険者仲間では話題が持ちきりよ!」
シャンテルを後輩呼びするってことは、このオカマは聖女なのだろう。
それはさておき……
「勇者様じゃなくて鈴木なんですけど!」
俺は真面目に訂正した。オカマは何故かきょとんとしている。
「アニキ……」
シャンテルは呆れたような顔をしながら、杖をチョンチョンと俺の身体に向けて優しく叩いてくる。
「……仲良しなのね」
◇コメント
『また言った』
『鈴木定期』
『勇者の発作みたいなものだから』
◇
「私はアサズケ•レモン。8代聖女をやらせてもらっているわ。以後お見知りおきを。鈴木」
「アサズケさんはどうしてここにいるんすか?」
シャンテルが怪訝な顔でオカマに質問している。オカマはしばし考え込んだあと、口を開いた。
「かっこいい男性を探していたの」
◇コメント
『は?』
『つまり、逆バニーの胸毛モリモリのオカマがダンジョンで男探してるってこと……?』
すると、シャンテルが杖をオカマに向けてこんなことを口にしだした。
「鈴木のアニキはやらないっすよ!」
「日本人には興味はないわ。安心しなさい後輩」
俺は『男探しだけでこのオカマがダンジョンに潜るわけがない』と思った。このオカマには本当の目的がある。
その目的とはなんだろう。俺はこの場に立ち止まって五分ほど考えていた。しかし、答えなど出るはずはなかった。
目の前にいる存在そのものが意味不明だからだ。故に何を考えているか分からない。このモヤモヤする感情はなんだろう。何かの論文が出来そうだ。
「シャンテル。論文をまとめるために一旦帰ろう。論文ができ次第、学会に連絡するよ!」
「急に何言ってるんすかアニキ!?」
シャンテルはガビーンと音が聞こえてきそうなほど酷く驚いている。伝え方が悪かっただろうか?
「マイペースね貴方達……」
その会話を聞いていたオカマは、溜息を付いてゆっくり首を振っていた。
◇コメント
『アサズケ•レモン。世界中を旅しているオカマ。巷では日本の魔王幹部の一人を単騎で倒したと噂の実力者。よく職質を受けるらしい』
『↑博識ニキありがとう』
『アサズケ•レモンって日本人の男に興味ないんだよね? ならなんで、わざわざ日本のダンジョンで男を探しているのだろう?』
『↑海外のダンジョンに行けば必然的に出会う確率も跳ね上がるのにな。何か別の理由があるんじゃないか?』