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巻きこまれ召喚したOLだけど可愛い女の子と楽しく過ごしています
巻きこまれ召喚したOLだけど可愛い女の子と楽しく過ごしています
未知香
異世界ファンタジースローライフ
2025年07月01日
公開日
1.2万字
連載中
巻きこまれて召喚されてしまったアラサーOLのミツキ。 異世界で知り合った可愛い女の子と一緒に住むことに。 実は精霊だった女の子と契約してチートになったり、 聖女にヤンデレ的になつかれたり、聖女の精霊がツンデレで可愛かったり。 異世界って、もはや女子会じゃない!?

第1話 始まりはやっぱり森の中

「……これ間違いなく罠にかかってる、よね、私……」


 両足を何かにぐるぐると巻かれ逆さづりになったまま、私は呆然と呟いた。


 ぐるりとした視界いっぱいに、深い森が広がっている。

 つい五分前まで自宅にいたはずなのに、今や逆さづり。


 人生何があるかわからないとはよく言うけれど、これはあんまりじゃないだろうか。


「頭に血が上るー」

 ひとり逆さづりになっている姿は、シュールだとしか言いようがない。

 自分じゃ見えないけど。


 ぐるんぐるんに巻きついている意外にも柔らかい紐は、足を拘束はしているものの痛みは少ない。


 しかし足首でつられているので、頭が地面に近い。

 伸ばした手がギリギリ地面につかない程度で、逆にあまり高くない事が落ちた時の想像が出来てしまい、更に恐怖心をあおっている。


 どうにかして逃れたくて、足元に手を必死で伸ばしてはみるもののまったく解ける気配もない。

 そもそもどうあがいてみても足に手が届かない。

 腹筋不足だ。


「ううう、無理すぎた……」


 こんな所で日ごろの運動不足が悪さするとは……。

 いや、私だけの問題ではない。現代人における社会問題とかいうやつだろう。


 何度かチャレンジした結果、足を締める縄の強さがきつくなってきてしまってきている事に気が付いて、一旦休憩することにした。


 もがいたせいで縄自体がブランコのようにゆるく揺れて、段々気分も悪くなってきた。

 頭がかっと熱くなってきて、血が頭にたまってきているような気がする。


 さっきまでは驚きの連続で何も考えれられなかったけれど、吊られてやることもないと、色々気になってくる。


 森の中は光を吐き出す謎の植物がある為ぼんやりと明るい。どう考えても見たことのない植物だ。


「まさか……まさか、だけど」


 私はぐるりとした視界で信じられない結論に達しそうになり、首を振った。

 だが、家に居たはずなのに気がつけば森に居て、更には見たことのない植物。


 これはどう考えても。


「……ううう、やっぱりここって、異世界、なのかな」


 夜中近くまで残業して仕事から帰ってきて、お風呂キャンセルで部屋着に着替えたところだったのだ。


 連勤に耐えやっと手に入れた、週末という怠惰な時間。

 新卒から働いて、気が付けばアラサーになってしまった。


 ブラックか迷わせるギリギリの会社で、休日出勤や残業三昧の日々。

 それでも

 それなのに気がついたらこんな森の中に投げ出されているとか、理不尽だ。


 両親は数年前に事故に他界し、友人たちとは数年前から疎遠になっていた。

 思えば、今なら誰にも心配されることもない。


 そんな今、こんな状況になるとか安心設計すぎて逆にひどい。


「ううう。何もかもがつらい。これでこの花がなくなって暗くなったら怖くて死ぬかもしれない……」


 何もなくても、森の一人歩き自体何かが出そうで怖いというのに。

 考えたら余計に怖くなってきた。

 最悪だ。


「もう……いったい何なの……」


 涙が出てくる。

 急にこんな所に来てしまって、寒いし、全く意味はわからないし、誰も居ないし怖い。


 この罠は人的なものだ。人がいるのだ。


 だから罠にかけた人が来るのをじっと体力を温存しながら待つのが正解だ、とわかっているのに、心細さでどんどん涙が出てきてしまう。


「もうやだ……。異世界なんだから神様とかでてチート能力が与えられるとか。夢のある話をくれてもよかったんじゃないかな。せめて町の前に移転させるとか心遣いはどうしたの」


 それ以前に、歩いてすぐに逆さ吊はないはずだ。どんな異世界かわからないし、動物とか魔物に襲われたらどうする気だ。


 ……その考えに、急にぞっとする。


 逃げもせずにぶらぶらするだけなんて、いい生餌だ。

 こんな所で食べられるなんて嫌だ。


 地面が明るい分、見えない部分の黒い闇が恐ろしく見える。


 ガサリ、と目の前の草が揺れた。


「わーー食べないでっ……って、あわわ」


 ばっと頭を隠そうとして、逆さ吊りなのを忘れて動いたせいで大きく揺れる。

 大人の三半規管にはついていけない動きに、頭がぐらんぐらんする。


 視界が定まらなくなった分、更に怖くてパニックになる。


「無理無理無理……! 食べないで! どっかいってっ」


「……なんだこれは、新種の魔物か?」


 夢中で暴れていると、思ってもみない日本語が聞こえてきた。

 希望と共に声のした方を見ると、金色の人間らしきものが見えた。


 人間! それに良かった日本語が通じる異世界だ!


 でも逆さまだし視界がぐらぐらして、人物像は良く見えない。


「人間だ! 喋れる魔物とかじゃないよね!? わーでも良かった……こんな森で発見されるとか、ついてる! 助けてください!」


「……暴れるな。更に揺れてるぞ」


「うわっ。……わー視界が戻った! 反対なままだけど」


 ぐっと身体に衝撃があり、ぴたりと揺れが止まった。

 どうやら足を吊っていた紐を掴んで止めてくれたようだ。


「助かりました……ううう、良かった……」


「……怪しいしかないな」


「えっ、か、かわいい……!」


 呆れたように、それでいて尊大な口調の美少女は、ジト目で私を見ていた。

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