「次のニュースです。○○内閣の支持率が10%を下回りました。先週まで50%がウソのようです……」
ウチは、ガラホから流れてくるニュースを見ながら、ニヤけていた。
これは
ウチが、この間始末した
転売目的で有名アーティストのチケットの抽選を操作したり、最後は政治家の投票率までいじろうとしたクソ野郎だった。
「能力も使いようってわけか……」
皮肉をひとつ呟いたところで、ガラホに着信が入る。
「……マジか」
表示されたのは”じじいの雌犬”。アイからだ。
出たくねぇ。シカとしようかな。
でも、アイツは出るまでずっと電話かけてくるタイプだ。
面倒くせぇな。
ウチはしぶしぶ通話ボタンを押す。
「……もしもし」
「カレンさん。至急、クイーン×ビーへ。
「わりぃ、ウチは……」
「例の情報、欲しくないですか?」
ちっ、ウチの弱みをついてきやがる。性格悪いな、コイツ。
「わかったよ。行けばいんだろ」
「よろしくお願いします。失礼します」
通話が終わると、タメ息を漏らしながらガラホをポケットにしまう。
そのまま、クイーン×ビーに向かう。
***
「みなさん、お忙しい中、お集まりいただきありがとうございます」
クイーン×ビーにある会議室に、ウチを含めた主要メンバー4人。
仕切っているのは、もちろんヒヤマのじじいだ。
「じじい、さっさと用件を言え! ウチらは暇じゃねぇんだ」
「カレンさん、ヒヤマ様への無礼は許しません」
「うるせぇ、じじいのメス犬」
次の瞬間、パンッ!
乾いた音が会議室に響いた。
アイの手には、ピストル。
「お、お前、マジで撃ちやがったな!?」
壁にめり込んだ弾痕から煙をあげている。やば、マジのピストルじゃん!
「お、お前! どこからそんなもの!」
「ミサキさんに創ってもらいました」
「おい、勝手なことするな!」
「あら、制作費をお支払いすると言ったら、快く怖じてくれましたけど? ケチな上司が予算を出してくれないって愚痴っていましたよ。その上司って、どなたかしら?」
ミサキ、覚えてろよ。
「アイ、そんな物騒なものはしまいなさい」
「申し訳ありません、ヒヤマ様」
何事もなかったように、アイはピストルをジャケットの内ポケットにしまった。
「現場にも出ねぇのに、武器なんていらねぇだろ」
「護身用ですけど、何か?」と、アイはキョトンとした顔をしている。
はぁ、コイツと絡む疲れる。
その時、隣に座っているシズカがビクッと体を震わせた。
「シズカ! オドオドするな! ムカつくんだよ!」
怒鳴った瞬間、しまった、と思った。
シズカは昔のトラウマで、人前で話すのが極端に苦手らしい。
案の定、隣のマコトの手をぎゅっと握った。
「『えっと……ごめんなさい、びっくりしちゃって』と、シズカは言っています」
相変わらず、マコトの
アイツの
口下手なシズカはマコト経由で会話をする。お前は腹話術の人形か! この面倒くさいやり取りに、ウチはいつもイライラしている。
「マコト、 シズカを甘やかすな! 本人にしゃべらせろ!」
「カレンさん、それは……」
「わかってるよ。悪かった、シズカ。言い過ぎた」
「『カレンちゃん、ごめんね』と、シズカは言っています」
それくらいは自分の口で言えよ。
「では、会議を進めましょう。アイ、進行を」
「はい。今回カレンさんが駆除した異能力は、こちらです」
アイは壁のスクリーンにエクセルの表を映し出す。
「
「余計な仕事増やしやがって」
「カレンさん、すみませんでした。次にターゲットである
「おいおい、いつまでウチらを待たせる気だ?」
「マリア様の
「シズカの
「『メインはクイーン×ビーはサイトSNS運用に使っていいるけど、本来は解析する異能力なんだよ』ってシズカが言っています」
「解説ありがとう、マコト。そうなると、ウチらの仕事が増えるだけだ」」
「ワタシたちの目的は
「承知致しました」
「シズカさんは、クイーン×ビーの集客アップのためにサイト運営をお願いします。異能力を産み出す
じじいの指示を理解したシズカは黙って頷いた。みんな、じじいの言うことに従うよな。
「カレンさん。あなたは引き続き、無駄な
「じじい、偉そうに命令するな!」
「あなたが探している”例の情報”いらないのですか?」
「ちっ、わかったよ。
「よろしくお願い致します。アイ、他に話し合う内容はありますか?」
「いえ、特にはございません」
「わかりました。では、みなさん、マリア様を救うため全力を尽くしましょう」