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第4話 四神相応(カルテット)の演奏

「次のニュースです。○○内閣の支持率が10%を下回りました。先週まで50%がウソのようです……」


 ウチは、ガラホから流れてくるニュースを見ながら、ニヤけていた。

 これは確率変動パーセンテージの仕業だ。

 ウチが、この間始末した異能力者がいちゅうだ。

 転売目的で有名アーティストのチケットの抽選を操作したり、最後は政治家の投票率までいじろうとしたクソ野郎だった。


「能力も使いようってわけか……」


 皮肉をひとつ呟いたところで、ガラホに着信が入る。


「……マジか」


 表示されたのは”じじいの雌犬”。アイからだ。

 出たくねぇ。シカとしようかな。

 でも、アイツは出るまでずっと電話かけてくるタイプだ。

 面倒くせぇな。

 ウチはしぶしぶ通話ボタンを押す。


「……もしもし」


「カレンさん。至急、クイーン×ビーへ。四神相応カルテット会議を開始します」


「わりぃ、ウチは……」


「例の情報、欲しくないですか?」


 ちっ、ウチの弱みをついてきやがる。性格悪いな、コイツ。


「わかったよ。行けばいんだろ」


「よろしくお願いします。失礼します」


 通話が終わると、タメ息を漏らしながらガラホをポケットにしまう。

 そのまま、クイーン×ビーに向かう。


***


「みなさん、お忙しい中、お集まりいただきありがとうございます」


 クイーン×ビーにある会議室に、ウチを含めた主要メンバー4人。

 仕切っているのは、もちろんヒヤマのじじいだ。


「じじい、さっさと用件を言え! ウチらは暇じゃねぇんだ」


「カレンさん、ヒヤマ様への無礼は許しません」


「うるせぇ、じじいのメス犬」


 次の瞬間、パンッ!

 乾いた音が会議室に響いた。

 アイの手には、ピストル。


「お、お前、マジで撃ちやがったな!?」


 壁にめり込んだ弾痕から煙をあげている。やば、マジのピストルじゃん!


「お、お前! どこからそんなもの!」


「ミサキさんに創ってもらいました」


「おい、勝手なことするな!」


「あら、制作費をお支払いすると言ったら、快く怖じてくれましたけど? ケチな上司が予算を出してくれないって愚痴っていましたよ。その上司って、どなたかしら?」


 ミサキ、覚えてろよ。


「アイ、そんな物騒なものはしまいなさい」


「申し訳ありません、ヒヤマ様」


 何事もなかったように、アイはピストルをジャケットの内ポケットにしまった。


「現場にも出ねぇのに、武器なんていらねぇだろ」


「護身用ですけど、何か?」と、アイはキョトンとした顔をしている。

 はぁ、コイツと絡む疲れる。

 その時、隣に座っているシズカがビクッと体を震わせた。


「シズカ! オドオドするな! ムカつくんだよ!」


 怒鳴った瞬間、しまった、と思った。

 シズカは昔のトラウマで、人前で話すのが極端に苦手らしい。

 案の定、隣のマコトの手をぎゅっと握った。


「『えっと……ごめんなさい、びっくりしちゃって』と、シズカは言っています」


 相変わらず、マコトの異能力アビリティはへんてこだな。

 アイツの意図電話テラーは、触れた相手の思考を読み取って代弁出来る。

 口下手なシズカはマコト経由で会話をする。お前は腹話術の人形か! この面倒くさいやり取りに、ウチはいつもイライラしている。


「マコト、 シズカを甘やかすな! 本人にしゃべらせろ!」


「カレンさん、それは……」


「わかってるよ。悪かった、シズカ。言い過ぎた」


「『カレンちゃん、ごめんね』と、シズカは言っています」


 それくらいは自分の口で言えよ。


「では、会議を進めましょう。アイ、進行を」


「はい。今回カレンさんが駆除した異能力は、こちらです」


 アイは壁のスクリーンにエクセルの表を映し出す。


完全燃焼ゴースト×ライター確率変動パーセンテージ……放置してよかったのですが、ヒヤマ様の判断で駆除対象としました」


「余計な仕事増やしやがって」


「カレンさん、すみませんでした。次にターゲットである子孫繁栄ドローンですが、未だに出現する見込みはありません」


「おいおい、いつまでウチらを待たせる気だ?」


「マリア様の天地創造クイーンは性行為によって新たな異能力を産み出します。ただし、どの男性との性交渉で、どんな能力が出現するかはランダム。現在、シズカさんの情報処理エニグマも使ってパターンを解析中です」


「シズカの情報処理エニグマってネット関係に使う異能力じゃなかったっけ?」


「『メインはクイーン×ビーはサイトSNS運用に使っていいるけど、本来は解析する異能力なんだよ』ってシズカが言っています」


「解説ありがとう、マコト。そうなると、ウチらの仕事が増えるだけだ」」


「ワタシたちの目的は子孫繁栄ドローンを見つけること、他の異能力には用はありません。アイ、シズカさんと協力して早急に子孫繁栄ドローンを発見してください」


「承知致しました」


「シズカさんは、クイーン×ビーの集客アップのためにサイト運営をお願いします。異能力を産み出す精子ざいりょうは多くて困らないので」


 じじいの指示を理解したシズカは黙って頷いた。みんな、じじいの言うことに従うよな。


「カレンさん。あなたは引き続き、無駄な異能力者サーヴァントの駆除をお願いします。異能力者ゴミは少ない方がいいですから」


「じじい、偉そうに命令するな!」


「あなたが探している”例の情報”いらないのですか?」


「ちっ、わかったよ。異能力者がいちゅう駆除をやりますよ~」


「よろしくお願い致します。アイ、他に話し合う内容はありますか?」


「いえ、特にはございません」


「わかりました。では、みなさん、マリア様を救うため全力を尽くしましょう」



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