目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
《零室 -REISHITSU-》
《零室 -REISHITSU-》
鳥野餅
現代ファンタジー異能バトル
2025年07月06日
公開日
6,576字
連載中
現代社会の裏側には、人知れず存在する異能力者たちがいる。彼らの力は時に街を脅かし、時に国家の均衡を崩す危険なものだった。そんな異能の脅威から世界を守るために設立されたのが、「零室(れいしつ)」──特殊対策機関である。 一般的な高校生だった主人公、青山灰戸は、ある事件をきっかけに、零室の一員である柊空木と出会い、灰戸自身も零室へ加入することを決める。   仲間たちとの絆と、異能が交錯するなか、灰戸はやがて、世界の運命を左右する秘密に巻き込まれていく——。 小説家になろう様、カクヨム様でも投稿しています! なろう様 https://ncode.syosetu.com/n5102kp/ カクヨム様 https://kakuyomu.jp/works/16818622177035982853 この物語はフィクションであり、実在する場所や人物とは関係ありません。

プロローグ 燃える街に灯る焔

第1話 始まりの焔 零室との出会い

あの日、空が燃えていた。


いや、正確には燃やされていたのかもしれない。

電柱が何本もなぎ倒されて、空気がバチバチと鳴って、まるで街全体が一瞬で地獄の門に飲まれたみたいだった。


俺は、その渦中にいた。

何もできず、走っていた。煙に巻かれ、爆風に吹き飛ばされ、視界が揺れて。

気づけば、誰ともはぐれて、一人で崩れた商店街の裏路地をさまよっていた。

何を――見たのかすら、曖昧なまま。


どこか遠くで、雷が何度も落ちる音がしていた。

雨は降ってないのに、水たまりがいくつもできている。空気は湿っていて、冷たい風が吹き抜ける。


「……なんで、俺がこんなとこに」


ふと、視界の端で何かが動いた。

心臓が跳ねた。

これは、ただの事件じゃない。これは――


そして、次の瞬間。

目の前に何かが現れた。


黒いフードを被った、人間──いや、人間のような、何か。

肌は青白く、まるで水をそのまま凝固させて形作ったような――そんな「何か」だった。


「……やめろ」


言葉が漏れたのは、自分でも驚くくらいの本能だった。

だけどそいつは、俺を見ても何の反応も示さず、静かに手をかざした。

次の瞬間、地面が凍りつき、背後の建物が一瞬で粉々に砕けた。


(あ――死ぬ)


そう思った。

でも、その刹那。

俺の身体の奥で、「何か」が爆ぜた。


視界が赤く染まる。

熱い。皮膚が焼ける。でも、不思議と痛くない。

それよりも、目の前にある異形の存在を――「燃やせ」って、

本能が叫んでた。


轟音。炎。

何かが手のひらから迸り、世界が一瞬で真っ赤に染まった。


次に意識を取り戻した時、俺は地面に座り込んでいた。

目の前に、焼け焦げた空洞と、崩れた建物。


そして――


「やっと見つけた。大丈夫? 怪我してない?」


銀色の髪に、蒼みがかった瞳。

俺の視界に映ったのは、制服姿の――女だった。

年齢は俺とそう変わらないように見えたけど、背筋はまっすぐで、目つきは鋭かった。


「……誰、だよ。あんた」

ひいらぎ 空木うつき。《零室》の人間。――君を保護しに来たの」


彼女はそう名乗って、静かに手を差し伸べてきた。

その声は、妙に落ち着いていて、でも――どこか、優しさのにじんだ音だった。


「君はもう、普通の人間じゃない。

 人ならざる力を得た者――異能力者なんだ」


「私たち零室は、そんな人たちを集めてる。一緒に来てくれるかな?」


これが、俺と彼女との──零室との出会いだった。

この出会いが、俺の世界を変えたんだ。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?