目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第46話 ハーレム爆誕

 姫ちゃんの説得に成功し、結ばれたオレたちは、イーリスが待つ自宅へと帰ってきて、イーリスに経緯を説明することになった。


 イーリスは、いつもの無表情で話を聞いてくれ、『姫さん、おめでとうございます』と温かい言葉を送ってくれた。


 彼氏としては、二人目の彼女を紹介するような気分で複雑だったが、姫ちゃんも嬉しそうに『ありがとう……これから、よろしく』と言っていたので、よしとしよう。


 そして、今日は解散しようという話になり、姫ちゃんが玄関に向かったので、二人でそれを見送ると首を傾げられる。


「なにしてるのよ? 帰るんでしょ?」


「え? うん。だから、また明日ね?」


「は? あんたも帰りなさいよ。姫と、その……つつ、付き合うことになった当日にイーリスとイチャつく気なわけ?」


「そういうつもりはないけど。オレもココに住んでるから」


「は?」


 あれ? そういえば、オレとイーリスが同棲してるって話、姫ちゃんは知らないんだっけ?



 そして、翌日のこと、オレとイーリスの自宅には、新しい住民が増えることとなった。さっそく、ギャーギャーと騒ぎ立てている。


「あんたはあっちの部屋で寝なさいよ!」


「嫌です。姫さんが向こうで寝てください」


「はぁ? あんたはこいつとしばらく一緒にいたんでしょ? 譲りなさいよ!」


「嫌です」


「あ、あの、二人とも……ケンカしないで……」


 ベッドの上で、パジャマ姿で睨み合う二人を見て、めちゃくちゃ気まずくなる。


 姫ちゃんは、オレとイーリスが同棲していることを知るやいなや、めちゃくちゃ怒り出して、結局、その日は泊まることなった。そして翌日、一緒に働いた後、姫ちゃんの家まで連行され、亜空間魔法に荷物を放り込み、その足でうちまでやってきたのだ。


 荷ほどきもほどほどな状態で、今の寝室にはベッドが三つも置けないので、オレの隣でどちらが寝るかで揉めているところなのである。


 この場をどう納めたものかと考えていると、矛先がオレに向くことになる。


「……あんたはどっちと寝たいのよ?」


「え?」


「そうですね。勇者ダンはどちらと寝たいんですか?」


「え? え? そんなの……聞かないで……」


 オレはいたたまれなくなって、ゆっくりしゃがみ正座する。二股男が偉そうに立っているのは、おかしいと思ったからだ。


「あんた、なにしょんぼりしてるのよ? さっさと決めなさいよ」


「勇者ダンは私と最初にくっついたので、私を選ぶべきです」


「そんなの関係ないわよ! 姫はこいつのこと大好きなんだから!」


「私も大好きです。だから関係ありません」


 パジャマ姿の二人の美少女が言い争う。それを見てオレはなんて罪深いことをしているのだと実感した。


「……死のう……」


「は?」


「勇者ダン?」


 オレは自分の首を両手で握って力を込め始める。こんなクソ男生きてる価値はない。


「バカバカ! 何やってんのよ!」


 姫ちゃんがポカポカ頭を叩いてくる。


「やめてください。勇者ダン」


 イーリスがオレの手を握った。少し力を緩める。


「だって……オレみたいな二股クソヤロー……死ぬべきだよ……こんなに、二人をケンカさせて……」


「……はぁ……わかったわ、三人で寝ましょ」


「そうですね。勇者ダンがそれでいいなら、私はいいですよ」


「え? それじゃあ、解決しないんじゃ……」


「うるさいわね! あんたは黙ってハーレムしてなさいよ!」


「ハーレムしてなさい?」


 首を傾げていると、手を引かれベッドに寝かせられる。


 姫ちゃんがイーリスのベッドを浮遊させてピッタリ横にくっつけた。オレをベッドとベッドの間にグイグイと押して移動させる。


 そして、二人が左右に寝転んで布団を被った。


「こ……これは一体……」


「おやすみのちゅー……しなさいよ……」


「へ?」


「私にもお願いします」


「……」


 こ、これが……『ハーレムしなさいよ』なのか……


 あまりに蠱惑的な光景を目にして、先ほどまでの葛藤がどこかに消えてしまう。


 オレは働かない脳みそを放置することにして、二人に近づいていった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?