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NO!追放NO!滅亡
NO!追放NO!滅亡
綺羅星昴
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年07月08日
公開日
1.9万字
連載中
『隔週火・木更新』 #ネオ書きコン3応募作品 -『追放』。それは、ファンタジーの導入の一つでありざまぁ展開の王道パターンだ。…しかし、あくまでそれは第三者視点だから面白いのであって、当事者からしたらとても笑えたものではない。 例えば、無能と思っていた『主人公』を追放した冒険者パーティーや専門職ギルドは、目に見えて落ちぶれていく。そして、最後には追放した首謀者達は破滅するのだ。 ただ、この場合周りへの影響はほとんどないだろう。…だが、もしもそれが国家規模のざまぁだとしたら? ましてやその原因が色恋沙汰であり、結果国が破滅したのなら?…追放劇を鵜呑みした者達以外にとっては、悪夢以外の何物でもないだろう。 -『聖獣の巫女』。この乙女ゲームは、まさに そんなストーリーだ。 『主人公』である姫様は、ある日無実の罪を着せられて国を追放される。…しかし、お姫様を追放した事で国を守護する聖獣が姿を消してしまい、最後にはお姫様の国はスタンピードにより滅亡してしまうのだ。 当然、首謀者である姉や踊らされた者達もろとも。 これは、ざまぁ展開ありの乙女ゲー世界のモブ貴族に転生した主人公が、国の滅亡を防ぐ為に奮闘する物語である。

第零章『どうして俺がこんな目に?』

ざまぁな展開…からの?

 -燃え盛る宮廷には大量のモンスターが侵入しており、かつては美しかった庭園も今は見るも無惨に荒らされていた。

『-グギャアアアッ!』

 当然、モンスター達は王の居住区画にまで入り込んでおり、『最後の獲物』である王家の者達と近衛兵を追い掛けていた。

「がはっ!?」

「陛下、皆様、お逃げ下さいっ!」

 そして、近衛はまた一人倒されてしまい残るは近衛隊長だけになってしまった。…なので彼は殿を務めるべく、王家を逃がそうとする。

『グギャアアアッ!』

「ひいいいい~っ!?」

「いやあああ~っ!?」

 だが、不意に後ろの壁が破壊され大量の翼を持つモンスターが侵入して来た。…そしてそのままモンスター達は、獲物へと襲い掛かる。

「…どうして、こんな事に-」

 その最中、赤い髪のプリンセスは震える声で呟く。…彼女は、目の前で起こる残酷な現実を最期まで受け止めきれずにいた。

『グギャアアアッ!』

「ぐあああっ!?」

 やがて、近衛隊長もモンスター達によって倒されてしまい、王家の者達はモンスターの大群に飲み込まれた。


 -直後、画面は暗転しとあるメッセージが表示される。…『こうして、ペントジェルト王国は滅びました。』

 …つまり、今までのはゲームの世界での出来事だったのだ。

「-…はあ~、スッキリした~っ!」

 しかし、そんな凄惨な場面を見たにも関わらず私の心は晴れやかだった。…何故なら、先程モンスター達によって滅ぼされた国は、一切同情出来ないのだから。


『-聖獣の巫女』

 それがこのゲームのタイトルであり、今の場面は主人公を追放した王家に下された最大の罰なのだ。

 ちなみに、このゲームは、所謂『乙女ゲー』というものであり主人公は先程滅亡した王国の第三王女になる。…その主人公を追放した首謀者こそ、先程現実逃避していた赤い髪の第二王女だ。

 彼女は、とある理由で激しい嫉妬に狂い妹に無実の罪を着せたのだ。しかも、家族や臣下までもがそれを鵜呑みにしてしまい、主人公は追放の憂き目に遭わされてしまう。

 だが、第二王女も主人公を罵った王国の者達は忘れていた。

 主人公が居る事で、王国は平和でいられたのだと。


『-ざまぁwwww』

『メシウマアアアアッ!』

「お、コメントありがとうございますっ!」

 それから場面は主人公の視点に戻り、そのタイミングでコメントが流れて来た。…言い忘れていたが、今このゲームを生配信していて視聴者もリアルタイムでスカッとしていた。

「さあ、そろそろ良い時間になるのでこのイベントが終わり次第、セーブたいと思います」

『了解~っ!』

『お疲れ様でした~っ!』

『いやー、良いモノ見れた~っ!』

「ありがとうございます」

 そして、配信開始から五時間経ったのでそろそろゲームを終わらせるべく、終了の挨拶を始めた。

「…おっ。…良し。それでは、次回の配信をお楽しみにっ!」

 やがて、イベントが終わったので即座にセーブを行う。それが終わったら、改めて終了の挨拶をして配信を止めた。

 それから、てきぱきと片付けをして少し休憩した後に眠りに就いた-。



『-クソオオオオッ!?なんで俺がこんな目にいいいいッ!』

 俺は今、最悪な状況に追い込まれていた。…一体、俺が何をしたというのだろうか?

『グギャアアアッ!』

 頭の片隅で自問自答しながら、俺は必死にモンスター共から逃げていた。…俺はただ、大罪を犯した『あの小娘』を糾弾しただけなのに。

『……ッ!?』

『正しい事』をした筈なのに、何故こんな仕打ちを受けなければならないのか?

そんな事を考えている内に、深い森を抜ける。…だが、その先には絶望が待ち構えていた。

『…そんな。…ッ!』

 なんと、森の先は崖になっていたのだ。…まるで、俺の末路を暗示するかのように。そして直ぐに、俺は崖の淵へと追い込まれた。

『…ッ!?………あ』

 モンスター達が迫る中、不意に地面が揺れ始める。…直後、崖は崩れそのまま俺はゆっくりと奈落へ落ち始めた-。


「-うわあああああっ!?…っ、…はあ~」

 そこで悪夢は終わり、直後俺は飛び起きてしまう。…そして、だんだんと鼓動が落ち着きを取り戻し暗闇に目が慣れてきた。

「……は?」

 だが、目の前に広がる光景に俺は思わず困惑の声を出してしまう。…何故なら、俺は見知らぬ部屋に居たからだ。

 その部屋はとても広く、高価な調度品が月明かりに照らされていた。しかも、俺の寝具や寝巻きも高級感溢れるモノになっていた。…まるでお貴族様になったようだ。

「-っ!…どうぞっ」

 混乱していると、ドアがノックされる。…なので、とりあえず応じるとそっとドアが開く。

 そして、ランタンらしき物を持ったメイドが隙間から顔を覗かせた。

「…若様、どうかなさいましたか?」

「(…マジか。)…済まない。少し悪い夢を見ていたようだ」

 彼女が口にした言葉を聞いて、俺は瞬時に自分が置かれた状況を察した。けれど、それを彼女に言った所でどうにもならないので、俺は疲れた顔で先程の事を伝える。


「…まあ。…無理もありませんね」

 -何せ、明日は若様の『鑑定』の日なのですから」

「(…うわ、ガチの所に来たな。)…全く情けない事だ」

 すると、メイドは勝手に理由を想像してくれたのだがそれが余計に、精神にプレッシャーを与えた。

「若様なら、大丈夫ですよ。

 …あの、もし宜しければホットミルクをご用意致しましょうか?」

「…ありがとう。でも、大丈夫だ」

「承知致しました。…それでは、お休みなさいませ」

 そして、メイドは恭しく礼をしそっとドアを閉めた。…はあ、何で異世界転生してんだよ。

 直後、俺は深いため息を吐き出し頭を抱えてしまう。

 まさか、自分が当事者になるとは夢にも思わなかったからだ。…とりあえず、先の事は明日を乗り越えてからだ。

 そう決めた俺は、明日に備えて再び眠りに就いた-。


 -そして、翌日。…どうやら、今の状況は夢ではなく間違いなく現実だという事を知った。

 後、今の俺は『ブルーノ・トゥオース』というとある王国の伯爵家次男らしい。

 家族構成は、父・母・兄・姉で皆戦闘系のスキルを所持しているそうだ。…その話を昨日のメイド(俺のお付き)から聞いた俺は、ますます不安になった。

 もし、鑑定の結果が『ハズレ』だった場合多分ハードな人生を送る事になるだろう。…つまりあの悪夢が、現実になるかもしれない。


「-…到着したようですね」

 そうこうしている内に、馬車は目的地に到着したようだ。…そして、キャビンのドアが開いたので俺は不安になりがら降車した。

「……っ」

 すると、目の前に立派な建造物が現れる。…此処が、本日俺がスキル鑑定を受ける貴族用の鑑定所だ。

「それでは、参りましょう」

「…ああ」

 冷や汗を流していると、メイドが一礼してから俺の前に立ち静かに歩き出す。…だから俺は、いよいよ覚悟を決めてその後に続いた。


「-ようこそお越しくださいました。

 トゥオース伯爵家のブルーノ様ですね?」

「…はい」

 建物の中に入ると、正装したベテランの職員が敬意を持って出迎えてくれた。…正直、余計に不安が募る。

「それでは、ご案内致します」

「…宜しくお願いします」

 そして、メイドと共に職員の後に続きこれまた立派な建物の中を進んでいく。…やがて、高そうなドアの前で職員は止まりそれを開けた。

「…どうぞ」

「…若様。行ってらっしゃいませ」

「…ああ」

 すると、そこでメイドは俺を送り出す。…何故ならメイドである彼女は、鑑定の部屋に入れないのだ。どうやら、いろいろとルールがあるらしい。

「…お待ちしておりました、ブルーノ様。

 本日、ブルーノ様の鑑定を務めさせていただきす『エドワード・アプスレル』と申します」

「……え?」

 そんな事を思い出しながら部屋に入ると、いかにもなローブを纏った紳士的なご老体が出迎えてくれた。…しかし、その人の口から出た名前は『とても聞き覚え』のある物だった。


 -エドワード・アプスレル。

 その人物の事を一言で纏めると、『とにかく運の悪い被害者』である。…何故なら、目の前に居るこの人は唯一『主人公』の無実を知っていたのだから。

 だが、それを進言する前にこの人は誘拐同然の左遷処分を受けてしまうのだ。…更に、この人が左遷先に到着して直ぐに最初の『異変』が起きてしまい、そのままフェードアウトしてしまう。


「「-……?」」

「(…ウソ、だろ?)…ああ、失礼しました。

 まさか、『殿下達』の鑑定をされた方が居るとは思わなかったものですから」

 俺は、なんとか冷静を装いながらもっともらしい『理由』を口にする。…どうやら、既に俺は相当な『ハズレ』を引いていたようだ。

「…いやはや、伯爵家のご子息様にまで名前を知られているとは光栄ですな」

「…こちらこそ、お会い出来て光栄です」

「ははは。…さあ、お掛けになって下さい」

「…はい」

「それでは、私も外でお待ちしております」

 こちらの内心を知らない鑑定士は、高そうな椅子に座るように促して来る。そして、それに合わせて職員は静かに部屋を出た。

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