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コード・シルディム ~印章学園の禁忌黙示録~
コード・シルディム ~印章学園の禁忌黙示録~
現代ファンタジー異能バトル
2025年07月09日
公開日
2.2万字
連載中
バサァァァ!!! ぱふん。 ふわり。 俺の顔面に、なにか白く柔らかいものが直撃ッ!! 視界が真っ白。鼻腔を刺激する、柔軟剤と青春のかほり。 ちょっと待って。冷静になれ。 これは事故か? ご褒美か? どっちだ!? その名も── フィオナ・グレイ!!! 異能「蒼炎の刻印」を持つ、謎すぎる転校生!!! 目的? わからん!! 正体? なおさらわからん!!! だが間違いなく言えるのは── バトルも! 煩悩も! 全部ぶっ壊す系ヒロインってことだァァァァ!!! これは── 心理戦×VRバトル×思春期煩悩×全裸抗争×異能カードファンタジー!!! もう理性とかいらねぇ!!! 燃えろ!!! 叫べ!!! 脱げ!!!(比喩じゃねぇ!!) ──空気をよんで、エンゲージッ!!!!!!

前夜『漆黒の契約書、降臨』

1

 思春期とは、煩悩である。


晴れ渡る空の下、学園の巨大な校舎が異様な存在感を放っていた。その白く高い壁面に描かれた古代文字のような模様は、異能「シジル」を扱う者たちが集うこの学園の象徴だ。


「血が昇らねぇ……」


 こめかみに手を抑えながら、気分が悪そうな声で呟くのは、天堂嶺てんどう りょう。ボサっとした黒髪と学ランという簡素な姿ながら、その瞳にはどこか鋭さが宿っている。


「あの一年生アンデスルールに挑むだって!?」

「一カウントにつき一枚、服を剥奪されるいにしえのあれか!」


 嶺がフィールド中央に無言で立つ様子を囲むように、観客アバターがざわざわと動き回る。だが、嶺の冷徹な瞳はその喧騒を一切気に留めず、ただ目の前の相手――生徒会長日向悠真ひゅうが ゆうまに向けられていた。日向は腕を組みながら、淡い笑みを浮かべる。その笑顔には冷酷さと余裕が滲んでいた。彼が手にしたシジルがわずかに光を放ち始める。


「アンデスルールを発動させた理由は知らないが、ここは未来型を操る者にふさわしい場だ。君には少し荷が重いんじゃないか?」


 嶺は肩を軽くすくめ、観客たちが息を呑む中、静かに答えた。


「未来か……。そいつは俺がこの場でつかむだけさ」


 観客たちが沸き上がる。


「なにこいつ、言葉だけはでかいぞ!」

「でも、見ろよあのカード! 黒いオーラがえげつない……!」


 日向は無表情を崩さず、淡々とカードを掲げた。


「君の過去も現在も、すべてここで踏み台になる。それが未来型の力だ」


 彼がシジルカードを置くと、無数のデジタル粒子がフィールドを包み込み、壮大な仮想都市が現れた。その光景は、空を覆う無数のリングと、瞬く未来の建築物たちに彩られている。

嶺はその光景を一瞥し、静かにカードを引いた。


「過去も現在も……そうか。でもな」


  彼のカードが光を放ち、フィールドに黒い線が次々と走り出す。


「俺がつかむのは、そんな安いものじゃない」


『オープン・ザ・ワールド!』


 電子的なアナウンスが鳴り響き、試合の火蓋が切られる――その瞬間、嶺のカードが弾けるように光を放った。嶺のカードが作り出した黒いシジル模様がフィールド全体に広がり、未来型の支配を侵食し始める。


「なに?」


 日向が軽く眉をひそめた。観客たちが口々に叫ぶ。


「フィールドが、未来型の領域を食ってるぞ!」

「やべぇ普通じゃねえ!」


 嶺が静かにカードをもう一枚フィールドに投じると、今度はデジタル粒子が逆流するように光を飲み込み始めた――彼のカードに込められた力が、ただの反抗ではないことを示唆していた。

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