その違和感は、馴染み深い絵画に突然異質な色が無造作に塗りつけられたようで、未沙には怒りさえ湧き上がらなかった。
静けさを破ったのは、控えめなノックの音だった。
未沙は返事をしなかったが、ノックはすぐにやみ、まるで使用人が間違えて叩いたか、あるいは誰かが戸口でためらった末に結局ドアを開ける勇気が出なかったかのようだった。
彼女は立ち上がり、風車をそっと引き出しにしまい込む。その動作には静けさの中に揺るぎない決意が込められていた。
窓辺に歩み寄り、隙間を少し開けて夜風を部屋に入れる。重苦しい空気を吹き払いたかった。
階下からは、使用人たちが声をひそめて話しているのがかすかに聞こえてきた。
「さっき雅子様が茶碗を割られたそうです……」
「未沙さん宛の包みのせいじゃないですか?」
「聞いた話だと……修司様もあまりご機嫌が良くないみたいです」
「しっ、そんなこと言わないで……」
未沙はその会話をはっきりと聞き取ったが、胸の中は静まり返っていた。
雅子の苛立ちも、修司の不満も、そして清水家全体に渦巻く警戒や敵意も、今や隠しようがなかった。
かつて従順で、男性に頼らなければ生きていけない寄生植物と見なされていた自分が、今や自立し、目覚め、再び本を手に取り、人脈を広げ、しかも正体不明ながらも大切な荷物を受け取る――それは彼らにとって、変化どころか、露骨な脅威でしかない。
彼女は、彼らの不安と混乱を冷ややかに見下ろしていた。
それこそが、彼女の望んだことだった。
鋭さを磨かなければ、この柔らかく編まれた巨大な網から抜け出すことなどできないのだ。
洗面を済ませ、明かりを消して床についた。
部屋は深い闇に包まれ、カーテンの隙間から差し込むわずかな月明かりがベッドの端を静かに照らしている。その光は、夜の静けさを切り裂く刃のようにも見えた。
その夜、彼女の眠りは浅く、夢は乱れていた。
夢の中では、清水家に嫁いだばかりの頃の記憶がよみがえる。義母の清水和子が自ら広い邸宅を案内し、満面の笑みで「あなたは若い頃の私のように美しい」と褒め称え、「清水家は良いお嫁さんを迎えたわ。分を守っていれば、一生安泰よ」と約束してくれた。
当時の彼女はそれを善意だと信じ、清水家を自分の居場所だと思い、評判を落とさぬよう必死で自分を削り続けてきた。
今思えば、その優しさは、獅子を檻に誘い込むための甘い毒にすぎなかった。
夜が明け始めた頃、彼女は迷うことなく身支度を整えた。濃い色のウエストが絞られたロングドレスに着替え、長い髪をきちんとまとめ、控えめな化粧でその芯の強さを表に出さないようにした。
彼女は知っていた。今日からこの家では波紋が広がる。しかし、自分こそが誰よりも冷静でいなければならない。
階下に降りると、ダイニングにはすでに人の気配があった。
雅子はクリーム色のロングドレスで食卓に座り、昨夜の激情などなかったかのように平然とトーストを切り分けていた。
「早いのね。今日はまた出かけるの?」未沙は淡々と問いかけた。
「図書館で調べ物がまだ終わってなくて。」彼女はミルクを一口飲み、落ち着いた表情を崩さなかった。
雅子が何気ないふうで尋ねる。「最近ずいぶん熱心だけど、仕事に戻るつもり?」
「かもしれないね。」
「気をつけたほうがいいわよ。」雅子は微笑んだが、その目は笑っていなかった。「外の世界は清水家よりずっと複雑よ。ちょっとしたことで弱みを握られたら、それが家に伝わって、評判を落とすことにもなりかねないわ。」
「ご忠告ありがとう。」未沙は表情を変えずに答える。「ただ、私はずっと『檻の中で飼われる』のが苦手だ。長く閉じ込められていたら、骨まで錆びついてしまうから。」