目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第4話 千歳、チート能力を試す。

ボフッ。


ポストの口がピンク色に発光し、まるで舞台のドライアイスのように白い煙が噴き出す。もくもくと部屋を満たしていき、やがてその中に人影が──。


煙が自然と晴れて、そこに現れたのは──


「はじめまして、皆さん。本日よりお世話になります。レイシアと申します。社長秘書としてやってきました!」


ミントグリーンの髪がふわりと揺れ、オレンジとピンクの入り混じった瞳がきらりと光る。

白衣にネイビーベスト、きちんとしたシャツに名札まで──見た目も話し方も、“できる秘書”そのものだった。


そして、なにより……


かわいい。


「よろしくお願いします」


にっこりと微笑みながら、彼女は右手を差し出してくる。


「こ、こちらこそよろしくお願いします!」


思わず両手でがっちり握手していた。


「事務手続きやスケジュール管理が得意ですので、何なりとお申し付けくださいね」


──うん、どう見ても私たちより優秀な人材が来ちゃった。


「実際、優秀じゃよ。社員証を見てみぃ」


リィナに言われ、胸元の名札を見ると──


レミィ=レイシア ⭐️⭐️⭐️⭐️


「星、四つ……!?」


「五つ星が最高評価じゃから、これは当たりじゃな。高待遇で迎えて、帰りたくならぬようにすべきじゃ」


「うわぁ、急に人事部っぽいこと言い出した……」


だけど、その時。


私の中で、別の好奇心が芽生えていた。


──300ジェムのガチャ、やってみたい。


「やめとけ。ぽんこつ出るぞ?」


「でも、見てみたい。どれくらいぽんこつなのか」


私は財布から300円を取り出し、ポストにそっと投入。


チャララ~ン♪


どこか哀愁ただようジングルが流れ──


ボフッ!


ポストの口から、オッサンが吐き出された。


「……あー、だりぃ」


くたびれたスーツ、割れたメガネ、3日風呂に入ってなさそうな香り。そして、態度がやたらデカい。


「これは……思ってたよりヤバいの来たな」


社員証を確認すると、そこには


山田 ☠️☠️☠️☠️


「ドクロマーク!? しかも四つって!!」


「つまり、その上──五ドクロも存在するということじゃな」


「えーと……あんたはとりあえず草むしりでもしてて」


「俺、母ちゃんの言うこと以外聞きたくないっす。あと、休憩は3時間でお願いしたいっす」


「こっわ!! これ、解雇できるよね?」


「できぬ。“求人票”による召喚は正式な雇用契約。無理に辞めさせれば、不当解雇で訴訟じゃ。信用は地に落ち、求人票も使えんくなる」


「そんなぁああああ!!」


「だから言ったのじゃ……やめておけとな……」


「こんなの絶対に使えない。というか、こんなやつと暮らすとか無理!」


「呼び出しておいてずいぶんひどい言いようじゃな」


「だってバイト先にもいたもん、こういうの!」


その時、今まで黙っていた佳苗がすっと手を上げる。


「仕方ないのです。──ヨミさん、出てきてくださいなのです」


「なんでしょう?」


スッと姿を現すヨミ。


「屋敷の裏に物置がありましたよね? この方にはそこに住んでもらいましょう。

勤務時間は朝8時から夕方5時。休憩は午前15分、昼1時間、午後15分。仕事内容は草むしり、外壁補修、その他雑務。怠けていたら──殺していいのです」


「殺していいのですか!?」


目を輝かせるヨミ。


「ついでに、食事の用意も適当にお願いします。水は井戸を使ってください。

冷蔵庫はありませんが──まあ、気合と根性でなんとかなると思うのです。努力次第で報酬は増やしますので」


「かしこまりましたっ!」


ヨミが嬉しそうに山田の足を引きずって、外へと消えていった。


……なんだろう。


うちの会社、

すでにブラックの香りしかしないんだけど。


──いや、わかってる。


ガチャ回した私が一番悪い。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?