私はジェシカ・エメラルド。元傭兵。今学生。膝から下を有機機械化しているわ。
幼少時、私は友達だと思っていた子たちに罠に嵌められ殺されかけ、膝から下を失ったせいよ。
たまたま近くにレベッカがいて、助けてもらったの。
町がアンノウンに襲われて、私以外みんな死んじゃったんだって!
私を罠に嵌めた子たちも、戻る途中で襲われて死んだってさ。もし彼女たちが私を罠に嵌めようとあそこへ呼び出さなかったら、みんなと一緒に死んでいたかな。
だけど、とうてい感謝する気にはなれない。だって私はアンノウンではなくソイツらにやられて両足を失ったんだから。
私はもともと足が速いのが自慢だったんだけど、膝から下を有機機械化したら、速いなんてもんじゃなくなった。
気をつけないと激突して死んじゃいそうだから、防御魔術も得意になったよ!
そして傭兵になった。
……最初はレベッカの娘であるクロウの遊び相手だったんだけどね。でも、傭兵部隊にいたら傭兵になるわよ。身を守らないとヤバいもん。
そんな生い立ちなので――友達に対してはかなりトラウマがあったけど、レベッカの子であるクロウは特殊な子だったから、なんだかんだ世話を焼いていたらいつの間にか仲良くなって、友達になってた。
リバーが最初クロウの面倒を見ていて……っていうかあのバカはクロウを舎弟みたいな扱いしてて、それで私が見てられなくてかばったりしていて、そのあとキースがやってきて四人でつるむようになった。
キースはバカ正直な真面目だしリバーはガラの悪い俺様だし、ぜったい気が合わないと思っていたらそうでもなかった。
全員、ひと言で言うと『思ったことが口から出る』タイプ。
以前の町にいたあの子たちは、私が思ったことをズバズバ言うことに対して怒っていたのかな。でもって表面はにこにこしながら同意していたのかな。
……ってふと洩らしたら、近くにいたクロウが私を見つめた。
「恐らく違う。今までのジェシカの行動と周囲の反応を見て考察すると、ジェシカが男に気を持たせる行動をして、裏切った少女たちがその行為に対し、ひどく怒ったのだろう」
今度は私がクロウを見つめた。
「え? なんで? 私、そんなことしないし」
「ジェシカはしているつもりはないだろうが、ジェシカのいう『社交的言動』は、ある種の男たちの優越感を刺激し、その結果その男たちはジェシカが自分に好意を持っていると勘違いしそれを吹聴している」
ぐ。――思い当たることが多すぎる。多すぎて数え切れない。
「でもさ……。あんな男たちに『アイツ、俺に気があるんだぜ』って言いふらされたからってどうよ? どいつも最低の連中じゃん? アイツらに好かれたくなんてないだろうし、そもそも相手が私を好きなんじゃなくて私がアレを好きだって思われてんでしょ? あんま関係なくない?」
クロウに反論してみた。クロウは無表情に首をかしげる。かわいい。
「そうかもしれないが、幼少の頃の思考はわからない。ただ私の考えとしてはズバズバ言って怒らせたのならば仲間外れが妥当だが、相手の両脚を有機機械化するほどのダメージを与える憎悪となると、痴情のもつれ」
「その表現やめて」
私はクロウのほっぺたをむにーっと引っ張った。その後、抱きついた。
「まぁ、いいんだ。今、私にはクロウがいるから」
成長が遅いのはほぼ全身有機機械化だから。お人形さんみたいで感情の起伏が少ないのもそうなんだと思う。
でもそんなことどうだっていい。私の大切な友達。
「――なら、他の連中も愛想よくふるまえってのよ! 私が気を遣って話してんのにさ、それを見捨てておきながらなんで勘違いして暴走してんのよ! 私はやりたくてやってるワケじゃない! キースなら私の気持ちがわかる! リバーには一生わからない!」
クロウを抱えながら叫んだら、クロウがまたツッコんだ。
「残念だが、キースは理解出来ない。キースは単に礼儀正しく返事しているだけだ。相手をおだて上げたりしない」
グサッときた。
……だって「『すごい』って言え」って圧がすごいやつっているじゃん? 言わないと解放しなさそうなやつとかさー。リバーと違って私は初対面で喧嘩したいなんて思わないし、合わしときゃ解放してくれるんだから最初だけちょっと合わせてるだけなんだけど。あ、最初の頃のリバーもそうだったかな。すぐ合わせるのやめたけど。
折よくキースとリバーが登場。
その話をしたら、キースがうなずいた。
「クロウの言うとおり、俺はジェシカのような『社交的言動』は得意ではない。必要なのかもしれないが、苦手だ」
がーん!
ショックを受けていたら、その隣でショックを受けているリバー。
「ナニ? なんでリバーがショックを受けてる顔してんの?」
私が聞くと、リバーが赤くなって動揺してる。珍しい。
「……べ、つにショック受けてねーよ。……ただ、お前、ガキの頃、俺に惚れてたって思ってたからよ……」
私は啞然として口を開けた。クロウがリバーに止めを刺す。
「リバーも『好かれたくもない最低の連中』の一人だったことがたった今判明した」
「うるせーゴラ!」
リバーが怒鳴る。
「……第一よ、お前もすごくねーと思ってんならおだてんじゃねーよ!」
指をさして怒ってきたので言い返した。
「じゃないと誰からも相手にされなくてかわいそうだからじゃんか!」
リバーにめっちゃ刺さったらしく、胸を押さえてよろけてる。
「むしろ私を助けろ! 嫌なやつの相手を私に押しつけるな! どっか消えるな!」
三人が真顔になって手を前に出した。
「「「無理」」」
……こんなんばっかだから私がやるしかないんじゃんかよ!