風が薙ぎオリーブ畑の葉がこすれる音、柔らかい太陽の光に小鳥のさえずりが全身を包む中、彼女の息遣いと肌の温もりを感じる。
ふと気になりオリビアさんの顔を見る。そういえばさっき……。
「オリビアさん、一緒に夢を追いかけるとか言ってませんでしたか?」
「え……? ああ、はい。私もハイド君についてくつもりですけど?」
「……え!?」
困惑する俺、オリビアさんは終始ニコニコ顔。
「この町で応援してくれる、ということではなく?」
「はい」
「ダメですオリビアさん! 危険ですからこの町にいてください!」
「嫌です」
オリビアさんのニコニコ顔は崩れない。
「……なんでですか?」
「せっかく夫婦になれたのに、すぐにサヨナラですか? 私は絶対に嫌です。私もハイド君の旅についていって一緒に夢を追いかける。その方がきっと楽しいですよ。それにハイド君が浮気しないか心配だし……」
「でも安定安全のギルドの仕事をしていた方がよくないですか?」
(最後の浮気云々は藪蛇になるので聞かなかったことにしよう……)
「そのために頑張って商人ギルドの試験を受けてジョブを取得したんです。ハイド君の冒険の役に立てると思いますよ? 例えば今取得したスキルだとこんなのがありまして……」
そう言ってオリビアさんが教えてくれた商人のスキルは【次元収納Lv1:馬車1つ分の荷物が入り一定距離内のパーティメンバーのインベントリに連結可能】、【交渉術(高く売る)Lv1:スキル未保有の場合の5%高く売ることができる】、【交渉術(安く買う)Lv1:スキル未保有の場合の5%安く買うができる】の3つ。
「確かにオリビアさんが旅に同行してくれれば、掘った鉱石や作った武具を5%高く売れ、旅に必要なもの全てが5%安く買える……。次元収納があれば、そこにメテオライト鉱石を入れて俺とインベントリを共有すれば、マメの弾薬庫爆誕! みたいなこともできそう……」
「何ですかそれ……!? マメちゃんが大活躍するとこ私もみたいです!」
「ワンワン!」
マメが活躍できると聞きオリビアさんのテンションが上がる。ずっと足元で俺たちにくっついているマメも嬉しそうに吠える。
「でもそんな、いつの間に商人の試験なんて受けてたんですか……?」
「ハイド君がどこかに行ってしまいそうになったあの日、私はどこまでもあなたについて行くと決めたんです!」
「……っ。ありがとうございます! 俺もオリビアさんと離れたくないです」
「ああ……、ハイド君……」
昂った俺たちは再びひしっと抱きしめ合った。マメが俺たちのバカップルぶりに呆れたように鼻を鳴らす。
「そういえばそうと、出発する前にどこか貸切るとかして俺たちの結婚お披露目パーティでもしなきゃダメですよね……?」
ひとしきり抱きしめ合った後、俺は一つの懸案事項を確認することにした。