朝の陽光が、藍都学園都市の高層ビル群をやわらかに染めていた。
崩れ落ちた瓦礫は取り除かれ、街のあちこちで復旧作業が進んでいる。だがその光景は、単なる修復ではなかった。人々の手によって、街そのものが新しい形へと生まれ変わろうとしている。
旧藍都学苑もまた、その象徴だった。
かつて廃墟のように荒れ果てていた校舎は、今や修復の最中にある。崩れていた壁には足場が組まれ、割れていた窓には新しいガラスがはめ込まれ始めていた。校庭には花壇が作られ、子どもたちの笑い声が少しずつ戻ってきている。
美佳たちは、その光景を見守るように校舎の前に立っていた。
「ここが……こんなふうに甦るなんて」
美佳は感慨深げに呟く。
「人の想いが残っていたからだろうな」
純が答える。
「壊すだけじゃなく、繋げようって気持ちがある限り、街も学苑も生き続ける」
彩音は柔らかに笑みを浮かべた。
「……“鍵”は、やっぱり人の心にあったんだね」
ユリは頷き、遠くの空を見上げた。
「どんなアンケートの問いかけよりも、私たち自身の選択が未来を決めるんです」
翔は静かに佇み、目を閉じて深く息を吐いた。
「……もう二度と、あの声に翻弄されることはない。そう信じたい」
玲は少し離れた場所で腕を組み、校舎をじっと見つめていた。
「でも忘れてはだめよ。問いは終わっていない。これから先、私たちが何を選ぶかで、この街の未来は変わる」
そのとき、美佳のポケットの中で再び古びた携帯が震えた。
画面には、番号表示すらなかった。
通話を繋げると、あの懐かしい声が静かに響いた。
『──答えは、見つかった?』
短い問いかけ。
けれどその声は、どこか優しさを含んでいた。
美佳は深く息を吸い込み、仲間たちの顔を見渡す。
そして、強く、はっきりと答えた。
「……はい。私たちは“壊す”んじゃなく、“繋いでいく”道を選びます」
一瞬、風のようなノイズが走り、声が微かに笑った。
『……それでいい。選ぶのは、いつだってあなたたち』
そのまま通話は途切れ、携帯は静かになった。
誰もが言葉を失い、ただその余韻に耳を傾けていた。
やがて純が小さく笑い、美佳の肩に手を置いた。
「行こう。ここからが、俺たちの未来だ」
光に包まれた旧藍都学苑を背に、美佳たちはゆっくりと歩き出した。
アンケートが投げかけた問いは終わらない。
だがその答えを選び取るのは、他の誰でもない──彼ら自身なのだ。
──そして藍都学園都市に、新たな一日が始まろうとしていた。