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第104話  未来への問い

朝の陽光が、藍都学園都市の高層ビル群をやわらかに染めていた。

 崩れ落ちた瓦礫は取り除かれ、街のあちこちで復旧作業が進んでいる。だがその光景は、単なる修復ではなかった。人々の手によって、街そのものが新しい形へと生まれ変わろうとしている。


 旧藍都学苑もまた、その象徴だった。

 かつて廃墟のように荒れ果てていた校舎は、今や修復の最中にある。崩れていた壁には足場が組まれ、割れていた窓には新しいガラスがはめ込まれ始めていた。校庭には花壇が作られ、子どもたちの笑い声が少しずつ戻ってきている。


 美佳たちは、その光景を見守るように校舎の前に立っていた。


「ここが……こんなふうに甦るなんて」

 美佳は感慨深げに呟く。


「人の想いが残っていたからだろうな」

 純が答える。

「壊すだけじゃなく、繋げようって気持ちがある限り、街も学苑も生き続ける」


 彩音は柔らかに笑みを浮かべた。

「……“鍵”は、やっぱり人の心にあったんだね」


 ユリは頷き、遠くの空を見上げた。

「どんなアンケートの問いかけよりも、私たち自身の選択が未来を決めるんです」


 翔は静かに佇み、目を閉じて深く息を吐いた。

「……もう二度と、あの声に翻弄されることはない。そう信じたい」


 玲は少し離れた場所で腕を組み、校舎をじっと見つめていた。

「でも忘れてはだめよ。問いは終わっていない。これから先、私たちが何を選ぶかで、この街の未来は変わる」


 そのとき、美佳のポケットの中で再び古びた携帯が震えた。

 画面には、番号表示すらなかった。


 通話を繋げると、あの懐かしい声が静かに響いた。

『──答えは、見つかった?』


 短い問いかけ。

 けれどその声は、どこか優しさを含んでいた。


 美佳は深く息を吸い込み、仲間たちの顔を見渡す。

 そして、強く、はっきりと答えた。


「……はい。私たちは“壊す”んじゃなく、“繋いでいく”道を選びます」


 一瞬、風のようなノイズが走り、声が微かに笑った。

『……それでいい。選ぶのは、いつだってあなたたち』


 そのまま通話は途切れ、携帯は静かになった。


 誰もが言葉を失い、ただその余韻に耳を傾けていた。

 やがて純が小さく笑い、美佳の肩に手を置いた。


「行こう。ここからが、俺たちの未来だ」


 光に包まれた旧藍都学苑を背に、美佳たちはゆっくりと歩き出した。

 アンケートが投げかけた問いは終わらない。

 だがその答えを選び取るのは、他の誰でもない──彼ら自身なのだ。


 ──そして藍都学園都市に、新たな一日が始まろうとしていた。


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