「本野(ほんの)くんって、おもしろいね!」
クラスの女子がそういってキラキラした笑顔を見せる。
俺は、ごくんと生唾を飲み込んだ。
「今日さ、合コンやるんだけど、本野も来ない?」
クラスの男子がそう誘ってくる。
合コン……あの伝説の……。
まさかこんな俺が、高校一年生でそんなお誘いを受けるだなんて。
そう思って、こぶしをぐっと握った。
前までの俺なら、合コンに誘われたって、「えっ、俺? なんで?」と驚いて、参加はしたとしても壁の華ならぬ壁のシミになるだけだろう。
前までの俺ならば。
そもそも、クラスメイトに合コンに誘われる人生があるだなんて思わなかった。
こんなに男女さまざまなクラスメイトが、俺に群がるなんて光景、誰が想像できただろうか。
しかも、ほとんどがクラスのカースト上位のいわゆる陽キャの奴らばっかりだ。
そんな光属性の奴らが、地味でオタクでぼっちな俺――つまり、闇属性を囲んでいる。
うそみたいな光景だ。
「あ、本野って合コンとか苦手?」
誘ってきたいかにも陽キャな男子に聞かれ、俺は答える。
「苦手もなにも、合コンは行ったことがないから」
その途端。
周囲が笑いの渦に包まれた。
俺の「合コンは行ったことがないから」という発言をバカにしているのではない。
純粋におもしろいのだ。
いや、訂正。
おもしろい、らしい。
その証拠に、周りの奴らは大笑いしながら、「本っ当に面白いよね」とか、「そのセンス、嫉妬するわー」とかいう声も聞こえてくる。
「本当にすごいな」
小さくつぶやき、視線を遠くに向ける。
視線の先にいたのは、松戸麗(まつどうらら)。
ミルクティー色の長いくるくるとカールした髪の毛(染めてる・巻いてる)に、バキバキの濃い化粧(アイメイク命)、制服の上からでもわかるスタイルの良さ。
麗はクラスメイトで陽キャというかギャルで、俺の幼なじみだ。
そんな彼女に、俺は親指をビッと立ててみせる。
「麗の発明、すげぇよ」
声に出さずに、麗に向かってつぶやいた。
そう、俺のこの人気者状態には理由があるのだ。
麗のおかげ、と言える。
それは三日前のことだった。