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厄除師当主見習いのおシゴトは……。〜神龍時 海里編〜
厄除師当主見習いのおシゴトは……。〜神龍時 海里編〜
夏代@うさ
ミステリーサスペンス
2025年07月12日
公開日
6,118字
連載中
現代、厄祓いを陰で行っている《厄除師》十二支家。その一つ名家、龍の一族【神龍時】。 今回は、当主見習い六つ子の長男[神龍時 海里]の日常一部になります。 普段行っているシゴトである、厄払い以外に当主のみ許されるご意見番の仕事を公主から依頼された海里。 暫くしてから、突然現れた一人の男性。 キャク間の和室である〈朝顔〉に案内をし、二人きりだけの空間内にて。 その男は、数ヶ月怯えた日々を送っていると相談される。 その相談内容とは ーー?

プロローグ


「━━では、そちらの座布団へおかけ下さい」



 逢瀬の魔、夏至にて。

 昼の暑さの名残りか、生温かい風が吹き抜ける現在。


 只今、キャク用である応接室である、〈朝顔〉。

 この応接室は、敷地内の自宅裏に設置されているこじまりとした書院風の茶室に似た趣。

 だが、違う点がある。通常ある躙口と風炉が無いことだ。

 躙口とは、客人が出入りする子扉。その代わりに露地から出入りする作りになっている。

 そして、通常の茶室で設置されている風炉が無い。

 ただ、畳の上に置かれている大人二人分の幅の檜のテーブルに、対で置かれた座布団。

 とても、シンプルな客間である。


 【厄除師】の名家の一つである神龍時家。

 彼、六つ子の長男である神龍時 海里しんりゅうじ かいりは自宅内に突然現れた目の前の男を、此処キャク用の応接室として利用している和室へ案内をした。

 彼に言われるがまま訪問者、本間 浩樹ほんま こうきという中年の男性は顔を俯かせたまま、ゆっくりとした動作で腰を下ろす。

 その顔には生気が無く、ただ、ただ、感情を抜かれたと物語っていた。

 スーツが似合うスレンダーな身体に、味気ない薄い唇に人垂らしのタレ目。センターパートのビジネスショートヘアーは、爽やかな印象だった。


(営業の意味では良い印象だな……、見た目は)


 それは海里が思った、第一印象である。

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