暗闇に沈む自室の中。弟の意味不明な言葉と共に突き刺さった痛みで意識が一瞬飛んだ。だから、今の今まで…原因を確かめられずにいたのだ。
俺は、言葉で表せない刺激で薄っすらと残っている意識の中に痛みの箇所へと視線を移動させ目を細めると
(━━ッ、嘘だろッ!?コイツ、自分のを━━)
絶句してしまった。
まさか、弟のあり得ない行動に。コイツも締め付けで薄っすらと汗をかいていた。
今宵の満月の光で反射し男の色気が増している相手。俺の知らない嵐がいて、胸の奥がキュっ……と込み上がり、妙な感覚に落ちそうになってしまう。今でも、
「ふッ……、ん、はッ……あ、ぁ、もう……」
と身勝手なことを譫言で漏らす、ポンコツに内心イラついてしまう。
いつもそうだ……。
長男の俺が、コイツが起こした面倒事を謝罪しに行っている。特に、十二支当主会議で。━━なのに、じわり、じわり、と生まれてくる狂おしい感覚に、身体は勝手に応えてしまっている。
この快楽の臨界点に指でふれてしまいそうな……
まるで極みの一歩手前のような、この感覚ーー
「……っ、ふぅ、んッ、……ッ、やぁ……、嵐。もう、……ヤメ……」
認めたくない感覚に、必死に抵抗する。
明日、こんな俺と結婚してくれる許嫁への申し訳なさに生理的に出てくる涙。止めたくても止まらなくなり、濡れた枕からヒヤリと冷たさが感じる。
まるで、━━━奈落の底へ落とされていく自分自身の心境のように。
それに対して、進み続けてくる。
負けたくない、こんな訳分からないことをされて相手のペースに呑み込まれること事態に。
(ましてや、こんな身勝手なヤツなんかにーー)
しかし、最悪なことはコレで終わらるはずもなかった。
「……━━あッ」
━━時が、止まった。
最奥へ進んでいる最中のできごとだった。
突然の艶めいた声色に、驚いてしまう。色に溺れたような、甲高い声。
それは、俺だけじゃない。嵐もだ。
なんとも言えない刺激が、━━脳に突き抜け、身体中の毛穴からドッと汗が更に吹き出す。思わず、初めての感覚のように身体が反り返ってしまう。
それが自分からだということに、羞恥心で死にたくなるくらい更に涙が出そうになってしまう。
(なんで、こんなことに……?
コイツが、俺の考え方に気にいらないのは承知してたけど……、ここまでするか!?普通ッ!?)
「……へぇ~~、此処なんだ」
「……何を言ってるんだ?そんなことよりもーー」
「此処さ、お前の嫁さん……知らねぇよな♪」
こちらが、身内からの仕打ちに精神的にショックを受け、どん底にいる最中に、心底嬉しそうに言葉にするコイツ。しかも、
「これさ、明日の結婚式にお前の嫁さんに言ったらさ……、どんな反応するんだろうなぁ?」
と俺の耳元で最悪な脅しを小声で呟く。
そんな相手に心は怒涛、悲しみが混じって、殴りたい衝動で膨らんでいくばかり。それなのに、抵抗したくてもできない……。
そのなんとも言えない微痛に、ぴくりと魚のように跳ね上がる身体。
「かぁわいなぁ〜〜、海里に・い・ちゃん♬それじゃ……、」
━━まだ、続けても良いな。
この一言にて。まるで、逃さぬようにと言わんばかりに、強い力で掴まれる。
これから何が始まるのか…頭が回らない俺。されるがまま、抵抗できなくなっていた。
俺たちの夜は、━━まだ続いていく。
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