何が頭抜けているかというと、その
たとえば他にこんな噂がある。
──期末テストでは彼女一人で我がクラスの平均点を十点ほど上げているとか。
──創立以来こまめにマイナーチェンジされている学則の全てのヴァージョンをそらんじることが出来るとか。
──休日の外出着として制服を着用しているのは勿論、一歩とて校区外に出ないように遠回りをしているとか。
真偽はともかく、こんな内容がまことしやかに語られるような女子生徒であることは真実だ。少なくとも四十内は周りからこう見られていて、ある部分でそう要請されている。
そんな四十内さんとわたしのつながりはクラスと部活だけ。
どちらも二年ほどの付き合いになるが、まぁ同じコミュニティに所属する人は他にも居るので、別段特筆すべきことではない。
さて、四十内さんの人となりを並べ、そして数行を費やして再認したのにはわけがある。
やや冗長にもなったが、わかってほしい。
そんな訳だから、内面を把握しているわけでないし、わたしの人物評としてはあくまで外聞をなぞるばかりの筈だけど。
──けど。
けど、美術室で部活動に励むわたしの財布を
「さぁ! 恋愛について語らいましょう! 」
そう言って部室のドアを開け放ったのも、やはり四十内さんに相違なかった。