ありふれたクーロンの路地。
ツモはそこを歩いていた。
最近、風水師とか、双子の兄弟を探しているとか、
クーロンズゲートの思い出を探しているとか、
なんだかみょうちきりんな奴が増えた。
まぁ、ツモの麻雀仲間も、
みんなそろって変な奴だから、
いまさら変人が増えたところでなんでもない。
静かな路地で、誰かが走っていったり、
帽子とウサギが話し合っていたり、
オモチャにぶら下がって少年が飛んでいったり、
何もかもが日常。
麻雀やりたいなぁとツモは思う。
ロンと名乗るのがいれば、そいつも巻き込みたいところだけど、
ここはいつものメンバーになりそうだ。
この通りは、きっと思い出を抱えている。
ツモはそう思う。
走っていった誰かのことも、
ワクワクしたお祭のことも、
迷子になった誰かのことも、
この町が全て覚えているに違いない。
この町が覚えている記憶。
それはこの町だから出来た物語であり、
この町の住民の数、それ以上に、
いくつも編まれていく物語に違いない。
この町は生きている。
そんなことをツモは思う。
人がちゃんと流れて、思い出がそのつど吹き込まれている。
ありふれた変な町かもしれない。
その変な町の思い出は、この町の宝物だ。
さて、いつものメンバーを集めて麻雀をしようか。
ツモは空を見上げる。
普通のクーロン住民の、
普通の日常。
そして、かけがえのないクーロンの町の記憶。