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第39話 住人

ロックはクーロンの町のアパートの近くにやってきた。

ロックはクーロンズゲートの思い出を探している男。

クーロンズゲートの世界が再現されていることを望んで、

このクーロンにやってきた。


この町はクーロンズゲートと似ているようで違っていて、

それでいてそっくりだ。

でもやっぱりなんか違うと、

ロックはこのクーロンにやってきてから何度も唱えた。

違う。違う。

言っているのに、この町を巡ることを止められないでいる。

いつか風水師に、メールが来ていると言いたかったり、

不機嫌そうな路人よりも、

やっぱり店やらなにやら持っている、

怪しげな店主とか、バーのあの人とかを目指している。


歩き回って気がつく。

ロックはすでにこの町にどっぷりつかっている。

沼とか蜘蛛の巣とか蟻地獄とか。

そういう言葉を連ねてみても、

クーロンに捕まったのなら、それはそれでしょうがない。

ロックはどこかあきらめている。


そうして、迷ったロックがたどり着いたのは、

アパートの近くだった。

店を出しているわけでないけれど、

ここに部屋をもてたら、ちゃんとした住人かもしれない。

夢にまで見たクーロンの住人。


汚れの憧れ。

前の住人が残していった染みすら愛おしくなるかもしれない。

そう、ロックのクーロンは、まだ始まったばかりなのかもしれない。

クーロンズゲートの思い出は通過点に過ぎず、

クーロンで再び始まる。

ロックはこのクーロンで再び、クーロンを始める。

今度は自分が怪しげな住人だ。

さぁ、風水師にはどんな言葉をかけようか。

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