あたしはビビアン。
今はこの名前を使ってる。
最初につけられた名前は、もっときれいな名前だった。
エリザベスだっけ、ビクトリアだっけ。
なんか、貴族とか女王様みたいな感じだった。
あたしは反発して、
結局今はビビアンという名前を使っている。
なんか、自由な気がする。
あたしはこれでいて暗殺を依頼されている。
何でも不動産屋を暗殺してほしいということだ。
不動産屋って何とか思ったけど、
お金が動くと、恨みも動く。
ま、そういうことなんじゃないかなと思った。
さて、下調べをして、クーロンの町にやってきたら、
ちょっとおかしなことになった。
不動産屋が、変わったらしい。
確か暗殺のターゲットは、チョコ何とかさんらしいんだけど、
チョコ何とかさん、この町からいなくなったって。
「逃げられたかな」
あたしはぽつりとぼやいた。
地産代理という建物は残っているけど、
どうも、ここに戻ってくる気配はないようだ。
「あれー?」
どこか気の抜けた男の声がかかった。
「部屋借りる人?チョコさんはもういないよ」
「そう、それで、あなたは何?」
「俺はケージ。やる気のない風水師」
「やる気のない?」
「うん、ない」
ケージはそういうと、にこーっと笑った。
邪気のない笑いだなぁ。
「あたしはビビアン」
「暗殺者でしょ」
ケージはいきなりズバリと言い当てた。
「まぁ、標的いないんならしょうがないよ」
あたしが黙っていると、
「暗殺者にも休みが必要だよ。噂ではイベントがあるらしいんだ」
「イベント?」
「あってもなくても、5月22日は特別なんだ」
「ふぅん…」
あたしは決めた。
ここでしばらくバカンス決め込もう。
優雅とは言い難い町だけど、
あたしは優雅とは無縁なの。
だってあたしは自由なビビアン。
どこに行っても、あたしはビビアン。
私が決めた。今決めた。