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第7話

「葉山果奈さん。これより私は貴女の内面に潜り、適性のある職業を見極めます」

 オベリスク形状の祭壇の上で、西洋人の女性が朗々と言い放った。使っている言語は日本語だが、訛りはまったく感じられない。表情は薄い笑顔で、優しげと言えば優しげだ。しかし人間味が薄く、思考が読めないという側面は間違いなくあった。

 服装は、シンプルな白いドレスである。ウェディング・ドレスほどの派手さはないが、女性の漂わせる気品とあいまって神聖な印象が強かった。

 女性の名は、マリアン・カーティス。ウィリシア・ギルドの首脳陣の一人で、転移者に職業を与える役割を担っている。年齢は不詳だが、外見からして進也たちとそう変わらないと予想がついた。

「はい! よろしくお願いします」と、果奈ははっきりと応じた。顔つきには、そこはかとなく決意が感じられる。

(第一印象はおっとりした感じだったんだけど、意外と芯は強いのかもな。良いじゃんか)

 進也は祭壇の下で待機しつつ、考えを巡らせていた。両側には、あいかと柚月の姿もある。

 祭壇を取り囲むたいまつの火が、いっそう激しく燃え上がった。ほの暗い空間いっぱいに、橙色の光が充満する。進也は堪えきれず、目を閉じた。

 一秒、二秒、三秒経って、光が少し弱まるのを感じた。進也はゆっくりと目を開けて、祭壇の上、果奈の手元を注視する。

 果奈は両手で杖を握っていた。先端には三日月形の装飾と、翡翠色の宝玉が見受けられる。

「どうやら貴女の適職は、巫女であるようです」静かに言ったマリアンは、果奈に穏やかに笑いかけた。

「仲間の治癒には長けていますが、一人で戦いを完結させられる力を持つまでには、長期間の鍛錬が必要です。転移の際にめぐり逢えた方もおられるようですし、彼らと共に歩んではいかがですか?」

「はい、そうします」マリアンの提案に、果奈は即答した。

「わかりました。では、貴女の行く道に幸多からんことを」

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