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離婚後、謎の御曹司に溺愛されるまで
離婚後、謎の御曹司に溺愛されるまで
南るり
恋愛現代恋愛
2025年07月15日
公開日
3.1万字
連載中
結婚して2年、私は夫に妊娠5ヶ月の子供を手にかけられた。 離婚後、傷だらけの私はもう二度と愛を信じないと思っていたが、彼が強引に私の心に入ってきた。 彼は私を守り、甘やかしてくれるが、決して「好きだ」と言わない。 「好きだよ」と、私は酔いに任せてその言葉を口にした。 ネオンの光の下で、彼の声と笑顔が素敵で、 「もし俺が本当にどんな人間なのかを知ってしまったら、君は……俺のことを嫌いになってしまうかもしれない。」 ========= 以前の作品を修正したものです。

第1話


結婚してもうすぐ二年になるけれど、藤原哲也はあのことに関して、ずっとあまり興味を示さなかった。


お正月の頃、私は妊娠した。それをきっかけに、彼は「赤ちゃんに良くない」と言い出し、完全に書斎に寝泊まりするようになった。


二十六歳で、毎晩一人きりの夜を過ごす。心にぽっかり穴が開いたような気持ちを、正直ごまかせなかった。


こっそり深夜の相談ダイヤルに二度電話したことがある。

専門家は「ご主人は職業柄、女性をたくさん見ているから、情熱が薄れがちなのかも」と言った。


彼は聖和病院の産婦人科医だ。その説明も、まあ納得できなくはない。


けれど、どうしても気になることが一つあった。


哲也はいつも書斎に入ると、必ず鍵をかける。家には私たち二人しかいないのに、一体誰を警戒しているのだろう?私?


その疑念は日々大きくなっていき、やがて私の心のしこりとなった。


ある日、私はとうとう我慢できず、彼が仕事に行った隙に書斎に忍び込んだ。


書斎はシンプルで、きれいに片付いていた。だが、机の大きな引き出しだけは、しっかりと鍵がかかっていた。


でも、私は予備の鍵を持っている。哲也はそのことを知らない。


最初は彼が失くさないようにと預かっただけで、決してプライバシーを覗くつもりはなかった。


引き出しを開けると、中にはよくある文房具が入っていただけ。ほっとして、また鍵をかけて出ていこうとした。


ふと、ベッドの枕に目が止まった。私はその場に立ち尽くしてしまった。


枕の上には、茶色い、しかもカールのかかった長い髪の毛が二本落ちていた。


私は髪を染めたこともないし、この書斎にもほとんど入ったことがない。この髪の毛は、絶対に私のものじゃない。


さらに目を落とすと、ベッド脇のゴミ箱には、クシャクシャになったティッシュがいくつも捨ててあり、どこか妙なにおいが漂っている。


まさか……哲也が家に誰かを連れ込んでいる?


その考えが浮かんだ瞬間、背中に冷たい汗が流れた。


慌てて部屋中を見渡したが、誰かが隠れられる場所なんてない。


私の考えすぎだろうか?


冷静になって考えれば、彼がそんなリスクを冒す理由もない。本当に他の女性と関係を持ちたいなら、外ですればいい話だ。わざわざ家に連れてくる必要はないはず。


もしかしたら、同僚か患者さんの髪の毛が、たまたま服についてきたのかもしれない。あるいは……彼が一人で自分を慰めているだけ?


だけど、そうまでして私には触れようとしないと思うと、胸がチクリと痛んだ。


私は幼いころから複雑な家庭環境で育った。十歳のとき、父を交通事故で亡くし、母は植物状態に。学業を続けられたのも、「白鷲」と名乗るネットの知人が支援してくれたおかげだった。根っからの自信のなさと慎み深さが、夫の前でも私を臆病にしていた。


午後、スーパーに買い物に行った帰り、なぜか酒売り場で赤ワインを手に取っていた。


でも、彼は今日が何の日かすっかり忘れているのか、帰ってくる気配もない。


なんとも言えない寂しさが胸を満たしていった。


テーブルの上のワインボトルに目をやると、急に悔しさがこみ上げてきて、私はそのままキャップを開けた。


夜十時を少し回った頃、玄関の鍵が開く音がした。


私は暗がりに隠れ、帰宅した彼に思わず飛びついた。哲也はとっさに私を受け止め、すぐに眉をひそめた。


「お酒、飲んだのか?」


少し不機嫌そうな声だった。


私は彼の首に腕を回し、酔ったふりで笑う。


「ちょっとだけだよ」


ふらふらする私を支えながら、哲也はたしなめるように言った。


「妊娠中なのに、ダメだろう?」


私は彼の肩に顔を埋め、甘えるように言った。


「ご飯、一緒に食べるの待ってたんだよ……。今日は結婚記念日なの。ほんの一口だけ、赤ワインを飲んだだけだから、赤ちゃんには影響ないよ」


「酔ってるだろう、もう寝なさい」彼は強引に私を寝室に連れていき、ベッドに横たえるとすぐに出て行こうとした。


私は彼の首にしがみつき、唇を重ねてせがんだ。


「哲也……キスして……」


彼は一瞬体を固くしたが、すぐに受け流すように私から離れようとした。


「明里、やめて。子どもがいるんだぞ」


私は腕に力を込め、潤んだ目で見つめながら甘える。


「あなたはお医者さんでしょ。妊娠三ヶ月を過ぎれば、気をつければ大丈夫だって知ってるはずだよ。哲也、お願い、拒まないで……」


それでも彼は私を振りほどき、苛立たしそうにネクタイを緩めた。「シャワー浴びてくる」


実際、私はほとんど飲んでいなかった。妊娠中のことは、ちゃんとわかっている。ただ、ワインを少しだけ香水のように体につけていただけだ。


バスルームからは水音が聞こえる。十分ほどして、水が止まった。彼の足音が寝室の前を通っていくが、立ち止まる気配はない。


そのまま、書斎のドアが閉まる音がはっきりと聞こえた。


私は布団にくるまって、一時間近く葛藤した末、とうとう意を決してイヤホンをつけ、スマホの中の秘密の盗聴アプリを開いた。


今日、買い物のついでに、こっそり盗聴器を手に入れてきたのだ。


書斎はもともと防音仕様にしてあるし、まさかベッドの下に小さな機械を仕込んだなんて、哲也は夢にも思わないだろう。


イヤホンから聞こえてきた彼の声に、思わず鼻の奥がツンとして、涙がこぼれた。


やっぱり、私には興味がないんだ……ちゃんと反応していたのに、どうしても私を拒む。


けれど、その後に聞こえてきた音で、私の体中の血が一気に凍りついた。



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