卒業制作は、「僕たちが考えた宗教」とでも
僕はその卒制をする前に神森に告げた。
「ミモリ」
ミモリとは神森の「か」を抜いた僕が彼のことを呼ぶあだ名だ。
「ミモリはカリスマ性がある」
ある時、僕は神森に唐突にそう言った。
神森は苦笑していた。「ねえよ。カリスマ性なんて。お前の過大評価だ」
僕は
「いいや。僕さ、ミモリを
「お前。頭おかしいのは知ってたけど、そこまでとは・・・」
「教祖になってよ」
「なにいってんの?」
「これが正しいんだよ」
「はあ?」
「世の中にはさ、
「あ、あんのかもな。まあ、俺たちが知ってる以上にあるのかもな。目立つところは目立つけど、目立ってない小規模な宗教もあるんかもな」
「自分から『私は教祖だ』って言い出してるヤツは
「なるほど」
「本物の教祖は自分のことを教祖だと思わない。その点、ミモリは自分のことを教祖だと思ってない。だから、ミモリは教祖たりえるんだよ」
「いや。一理なくはない。でも。えー、俺が教祖?」
※
こんな感じで僕らの卒業制作はスタートした。卒業制作のコンセプトは、「新しい信仰を作り出し、いずれ宗教法人化するための企画戦略」というていで話を進めた。
まず、法人化されるためには、3年以上の活動実態が必要だ。卒業前から信仰を始めて、卒業後数年してからの法人化を目指すていだった。
もちろん、教義も必要。僕は、神森の言葉を一言ったことを百まで
まず、はじめに、人々は、広大なるなんの
僕たちの信仰では、「神」という言葉こそ使っているけれども、「ヤーヴェ」みたいな神神してる神は設定しなかった。
この世界こそが、「森」であり、そして、いま、森ははげしく荒らされている。その荒らされている森を、教祖・神森の導きによって
具体的にどのような方法でお祈りをするかというと、三角形の三頂点にそれぞれ人が立つ。そして、ちょっとした
まあ、教義の話はまた今度するとして。
それから、信者ももちろん必要である。
法人化のためには少なくとも3人の幹部も必要だったので、神森に恋愛感情を抱く女子学生を利用させてもらった。
そして・・・
宗教法人となるためには、
礼拝所は『
僕と神森は実家に住所を残したまま、
幸い、神森好きの女子たちは、「他の女子に神森を取られるのは許せないけれど、男の鴻巣と愛し合っているのならば、神森についてゆく」と盲目的だった。
・・・と、まあ、本当にガキの遊びレベルのことをやって、あまりにも指導教授がテキトーすぎることもあり、これでめでたく卒業だった。
僕たちは卒業後の進路が明確に定まっていなかった。
神森は、小説を書くと言った。
僕は、本気で宗教法人化を目指すと言った。
こうして、クソニートフリーターが
今日も神森は文学賞に投稿する小説を書き、僕は動画投稿サイトに『神の森の集い』のコンテンツを増やしていっている。
はたして、こんな生活がどれほど続くものなのか、そんなことは考えないくらいに僕たちは向こう見ずだった。
【つづく】