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恥をかいたら強くなる?──今日も美人上司の羞恥ミッションをこなしています!
恥をかいたら強くなる?──今日も美人上司の羞恥ミッションをこなしています!
ムナカタ・ソウスケ
現代ファンタジー現代ダンジョン
2025年07月18日
公開日
4.9万字
連載中
冴えない中年サラリーマン・近藤弘一。 平凡な毎日を過ごしていた彼の人生は、ある日突如として“羞恥ポイント”なる奇妙なシステムの発現によって一変する。 そのシステムは、恥ずかしい体験をすればするほど成長できるという、まるで罰ゲームのようなものだった――。 冷酷無比な美人上司・九条琉璃、天真爛漫な隣人女子大生・雪菜。 個性も立場も異なる二人のヒロインに振り回されながら、近藤は次第に彼女たちとの心の距離を縮めていく。 だが、やがて立ちはだかるのは巨大財閥・九条グループ。 ヒロインとの縁が引き裂かれようとするその瞬間、かつてない“恥辱”を超えて、近藤の中の何かが覚醒する――! 笑いと涙とちょっぴり背徳感、そして下克上。 これは、社畜から“逆襲の英雄”へと駆け上がる男の、奇妙で華やかな成長譚。

第1話 第一話 災難と覚醒

東京の朝。


山手線の電車は、いつも通りの混雑ぶりだった。


近藤弘一、三十五歳。


どこにでもいるような某中堅企業のサラリーマンは、今まさに人波に押しつぶされそうになっていた。


しわくちゃのスーツが汗ばんだ体にぴったりと張りつき、曲がったネクタイが喉元を締めつける。


額には細かな汗がにじみ、呼吸すらままならない。


彼は必死に吊り革を握り、揺れる車内でなんとか体勢を保とうとする。


だが、背後からの押し合いが容赦なく続き、思わず顔をしかめた。


「くそっ、また遅刻かよ……」


小さくつぶやきながら時計に視線をやり、内心で毒づいた。


その時だった。


突然、電車が急ブレーキをかけた。


「うわっ!」


近藤はバランスを崩し、前方に倒れ込んだ。


顔面が真正面の人物の背中に激しくぶつかる。


鼻先をくすぐったのは、ふわりと漂う上品な香水の香り。


そして、その奥に感じるのは、上質な布地の滑らかな感触だった。


「す、すみませんっ!」


慌てて顔を上げて謝る。だが――その瞬間、体が硬直した。


そこにいたのは、九条琉璃。


直属の上司であり、社内では“冷徹の麗人部長”の異名を持つ、社内で畏れられる存在だった。


黒のスーツをきりっと着こなし、シュッとしたラインが雰囲気をさらに引き立てていた。

髪はきちんとまとめられ、美しく露出したうなじにさえ隙がない。


冷ややかな瞳、きゅっと引き締められた赤い唇――全身から近寄りがたいオーラが立ちのぼっている。


微動だにせず、九条は冷たい眼差しで弘一を刺していた。


遠慮も取り繕いもなく、視線にははっきりとした“嫌悪”がにじんでいた。


「近藤」


低く、氷のように冷たい声が降りかかる。


「手……どこに置いてるの?」


一瞬、思考が止まった。


だが次の刹那、弘一は右手が彼女の腰に触れているのを知り、血が一気に顔へと駆け上がるのを感じた。


しかも、その位置、その形――どう見ても“その気がある”ようなポーズだった。


「ち、違うんです!これは誤解で!電車が混んでて……!」


必死の弁明が口をついて出た、その瞬間。


「パシン!」


乾いた音が、車内に鋭く響き渡った。


一瞬にして空気が張り詰め、周囲の乗客たちの視線が一斉にこちらへ向けられる。


ひそひそと囁き合う者、露骨に軽蔑の目を向ける者――視線のすべてが、近藤を断罪していた。


「痴漢」


その一言だけを、九条琉璃は冷たく吐き捨てた。


表情は変えぬまま、彼女はくるりと踵を返し、何事もなかったかのように隣の車両へと歩み去っていく。


ヒールの硬い音が床に鳴り響き、その一歩ごとに近藤の『社会的死亡』が刻まれていくかのようだった。


近藤は顔を押さえた。火照る頬には痛みが残り、脳の奥で鈍い音が鳴り続けている。


「終わった……完全に終わった……」


そんな絶望の中、不意にポケットのスマートフォンが震えた。


半ば反射的に取り出すと、画面にはLINEの通知が届いていた。


「お兄ちゃん!今日は小雪菜の成人式だよ!

夜は絶対にパーティー来てね!(*≧▽≦)」


あどけなさが残るメッセージの差出人は――雪菜。


隣に住む幼なじみで、昔から妹のように接してきた少女だ。今日がちょうど二十歳の誕生日。記念すべき成人の日。


「ああ……すっかり忘れてた……」


弘一は自嘲気味に笑いながら、「OK」のスタンプを返した。


だがその内心は、ますます苦しむ一方だった。


人前でビンタされ、痴漢のレッテルを貼られ――そのうえ、若者たちのパーティーに笑顔で顔を出さねばならないなど、これ以上の辱めがあるだろうか。


「今日という日は……最悪だ……」


呟きとともに送信ボタンを押した、そのときだった。


「ピロリン!」


頭の奥に、機械音が響いた。


『羞恥ゲージシステム、起動。』


『現在の羞恥ゲージ:50(九条琉璃・ビンタ+30、雪菜・パーティー参加+20)』


『使用可能スキル:読心術(1分/50ポイント)』


弘一は、スマホの画面ではなく、自分の脳内に直接響いたその声に呆然とする。


「……は?」

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