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8.【橋渡し】

======== この物語はあくまでもフィクションです =========

ここは、『名の国』。

俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。


俺には聞こえる。殺してくれ、と。

どこの次元でも聞こえている。


自販機で、久々の缶コーヒーを飲み干す。

隣に、高校生らしき女の子が並んだ。

缶コーヒーを見たので、逆さにした。滴が少し垂れただけだった。

女の子は、空の缶コーヒーを確認すると、空き缶用ゴミ箱に入れた。

カラン、と音がした。

デモの行列が行進していた。


女の子が合流したので、行きがかり上、女の子の隣に並んだ。

「オジサン、どこから来たの?」

通じるかどうか分からないが、『南極ボケ』の話をした。

「そう。名の国は、もうお仕舞いよ、オジサン。私は疎国の4世なの。ひいお婆ちゃんが名の国人。クォーターね。昨日の午後、名の国は、はな国の所有になったわ。祖国人も欺されていた。はな国人が第一外国人、疎国人が第二外国人だった。詰まり、他の外国人は、その他大勢。はな国人は支配出来た途端、態度を変えた。三日後の『独立』までに、その他大勢外国人は、母国に帰らされた。疎国人も祖国に帰国した。それは、純粋な疎国人だけだった。」

「何故?名の国人は、『勤勉』だからよ。『純朴』だからよ。」

「それって、『決めつけ』じゃないのか?『勤勉』だから、『純朴』だから別?純血じゃないからって、差別だよね。」

「元から差別してたわよ。いいようにあしらわれていたのよ。はな国人に入れ替わった部下に。政治家達、ジャーナリスト。『勤勉』や『純朴』は、綺麗事。『奴隷向き』って考え方よ。編み理科国が、昔、阿折科国から連れてきたのは、『奴隷向き』の種族だけだった。」

「このデモは『奴隷反対デモ』か。」

「無駄な抵抗かも知れないけどね。」

彼女の言葉は、すぐに実証された。

デモのゴール、国会議事堂に辿り着き、リーダーが嘆願書を役人に渡すと、役人は、その場で書類を燃やした。

テレビカメラは、一部始終を生中継していた。


デモの参加者は、女の子を含めて、窓に網と格子の入ったバスに押し込められて出発した。


俺は、缶コーヒーの受け渡しの替わりに受け取った、彼女のデータを元に跳んだ。


ある時代まで遡り、はな国に行くと、名の国の要人は歓待を受けていた。

目がイッてる。はな国人の招待は、巨大な『蛞蝓(ナメクジ)』だった。


要人達で舞を踊っているのは『鯛や平目』ではなく〇〇だった。

そして、『おもてなし』の料理は〇〇〇〇〇だった。


吐き気を催し、外に出た俺は、空中で『消石灰』を撒いた。

コレで、はな国は、伝説になる。


名の国のことは、女の子と仲間達に任せることにした。


長年、疎国人と名の国人が上手くいかなかったのは、支配欲と独占欲が強い、はな国人のせいだった。

女の子達が、『橋渡し』になることを祈って。俺は、次の次元に跳んだ。


―完―


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