======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『又の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは、一膳飯屋。セルフサービスの店だ。
カウンター席は満員。昼時だしなあ。
テーブル席も空きは少ない。
今日は祝日だ。「呪日」ではない。
中途半端に言葉を覚えた「錯誤単語」の一つだ。
「止めろ」を「止めろ」と書いたり、「恥を知れ」を「聡を知れ」と書いたり、失笑者。
さて、関を取らないと。
「ここ、空いてる?」と小学生くらいの女の子に声をかけたが、無視。
態度を変えるのに数秒とかからないのが俺の得意技だ。
「お嬢さん。ご同席してもよろしいでしょうか?」
「よくってよ。」
「ありがとうございます。今、自分の分を運んで参ります。
あじフライ定食があったので、トレーに乗せ、精算を済ませ、少女の前に座り、食べた。
少女は、食事を済ませ、パフェを悠然と食べている。
私が食べ終えると、少女は「オジサン、どう思う?」と切り出してきた。
「どう思うって・・・。」私は、簡単に南極ぼけの話をした。
少女は、コップの中の氷を指さし、こう言った。
「この氷、溶けたらどうなる?」
択一ではなく、叙述式か。
「水位は多少変わるが、水の容積プラス氷の容積は変わらない。」
ついで、南極越冬隊について質問が来た。
これって、面接?
こういう場合に備えて、ある程度は学習しておいて良かった。
「合格。カシ、変えない?痴漢呼ばわりや誘拐犯呼ばわりはしないけど。」
強烈な『逆ナン』に、俺は逆らうことなく、100メートル先の喫茶店に行った。
少女は、ブラックコーヒーとれチーズケーキを運んで来た。
ツウだなあ。
俺はブラックコーヒーのみだ。
「どう思う?の続きは?」「昨日、慚愧院議員選挙投票日だったの。」
「オジサンは知らないようだけど、今の『内弁慶内格』に愛想尽きて、著名人が沢山立候補したの。で、当選したのは3割。私はおかしい、と思うの。」
政治に興味を持つ女子小学生も珍しいが、情報力も凄い。
「不正か。色々あるだろうなあ。」「演説の妨害、SNSの妨害。SNSの妨害なんか偽画像まで作ってる。後、考えられるのは暗殺ね。もし、落選した後の候補者を殺したりしたら、支援者はpTSDになっちゃうわ。」
「殺されそうなのは?」「杉下美代子、平松しおん、佐奈政則。他にもいるかも。」
彼女は『お迎え』が来て、自動車に乗って去って行った。
テーブルに名刺が置いてあった。
杉下美代子の家の近く。
杉下を尾行していた男が、吹き矢を放った。
だが、吹き矢は飛ばなかった。俺が消したからだ。
平松しおんの家の近く。何となく止揚に似ていて、妄想しそうになった。
一発の弾丸が、ヒットマンから撃たれた。
だが、しおんの耳の側を掠めただけだった。
俺は銃身を持ったまま叫んだ。「逃げろ!!」
佐奈政則がテレビ局から出てきた。
後ろから、爆風が吹き上げた。
間一髪だった。
少し離れた所に俺は佐奈を下ろして言った。
「みんな、帰って来い、と言っている。」「あんたは、一体誰だ?」
「『みんな』の中の1人だ。逃げろ!!」
野次馬が集まってきていた。佐奈は、野次馬と反対方向に歩き出した。涙を拭うこともなく。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。人情に厚いのが欠点だ。
さ、次のステージに跳ぶか。あ、思い出した。貰った名刺の祖母は・・・。
―完―