======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『技の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは、出納省事務管理室。
「だから、あの時、受持大臣の離職水準を決めれば良かったんだ。」
どうやら、ここも似たり寄ったりか。姿を消して様子を見るか。
「誰だ?」
俺は、発言した男の心を読んだ。
男は、『技の国』元統合大臣の赤穂吟太。ここに集まっているのは、『裸の王様』の進退だ。詰まり、選挙する度に議席を減らす、現統合大臣神葉みのるの処遇だ。
神葉は、出納省の用意した台本は忠実に読むが、アドリブが効かない。
そして、とんでもない発言をしてしまう。
与党も野党も、隣国樋曾国の思想よりだが、今まで上手く国民を欺してきた。
だが、色んな方面から暴かれてしまい、我が儘で通した『大臣決定』法案に対する、国民や一部野党の追及に「なんでいけないのか?」と開き直った。
国民は、出納省解体デモや、神国党解党デモを行った。
出納省は、報道省の『天下り先』であるメディアにより、隠蔽工作をした。
ところが、SNSが発達し、国民総カメラマンの時代に入っていることへの認識が甘すぎた。
SNSを規制しようと躍起になったが、海外メディアが、『技の国の恥部』という『特ダネ』を放っておく筈がない。『笑い話』は世界中に拡散した。また、失敗した、と。
神葉や前の統合大臣は、世界で『失敗だから止めた』法案を次々強引に成立させた。
『関税交渉』という大仕事に、神葉は逃げ続けた。
結果、目利国に有利な条件で関税が決まった。
神葉は、関税率しか見ていなかった。得意満面だった。
だが、『傘下』である筈の輸出入業者から苦情が来た。
デモは再開した。出納省解体デモや、神国党解党デモには、輸出入業者も参加した。
神葉は赤穂の言うことも聞かなかった。後任にはもう『新橋』と言う、名前の似た代議士がなることが予定されていた。
翌々日。全国の、神葉のシンパの団体の前に、1人の男が現れた。
「お地蔵さんを作って差し上げましょう。そうすれば、神葉さんの『大切さ』を、国民は分かってくれるでしょう。」
それぞれの団体は、言われたノウハウの元に3Dプリンターで、お地蔵さんを作成、色んな所に、あっという間に設置した。
顔は、遠目には、よく分からない。石像風だから。だが、近寄ると特徴のある耳や眉で神葉だと分かる。
大人達は、変なお地蔵さんが建った、とだけ思っていた。
翌日、その『変なお地蔵さん』の横に何本もの剣が置いてあった。
ある子供が見付けた。
「コレってさ。この剣でこの像が刺せるってことに思えるんだけど。」
「なんで?」「ほら、所々、溝が開いてるだろ?」
「嘘。何かのゲーム?」「きっと、そうだよ。テレビか何かの。その辺にカメラ仕込んであるんじゃない?」
子供達は、どんどん近寄って来た。
最初に言った子供が、お地蔵さんを刺した。
何も起こらない。でも、溝にはぴったり剣が当てはまった。
もう1人、勇気を振り絞って、剣を刺した子供がいた。何も起こらない。
剣が全て刺さった後、突然、お地蔵さんの首が飛んだ。
『禁じられた遊び』は、忽ち全国に広まった。
翌日。埠頭に、水死体が上がった。
体中に、無数の剣の跡があった。
食堂で、そのニュースを見た俺は店主に言った。
「余程の『怨恨』なんだな。」店主は頷いた。
「さあて、ちょっと長いしすぎたかな。次、言ってみよう。」
―完―
※お気づきの方もおられるでしょうが、今回のエピソードは「内弁慶の外地蔵」という諺に基づいて居ます。