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19.【神か仏か(God or Buddha)】

======== この物語はあくまでもフィクションです =========

ここは、『技の国』。

俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。


俺には聞こえる。殺してくれ、と。

どこの次元でも聞こえている。


跳んで来たのは、出納省事務管理室。

「だから、あの時、受持大臣の離職水準を決めれば良かったんだ。」

どうやら、ここも似たり寄ったりか。姿を消して様子を見るか。

「誰だ?」


俺は、発言した男の心を読んだ。

男は、『技の国』元統合大臣の赤穂吟太。ここに集まっているのは、『裸の王様』の進退だ。詰まり、選挙する度に議席を減らす、現統合大臣神葉みのるの処遇だ。

神葉は、出納省の用意した台本は忠実に読むが、アドリブが効かない。

そして、とんでもない発言をしてしまう。


与党も野党も、隣国樋曾国の思想よりだが、今まで上手く国民を欺してきた。

だが、色んな方面から暴かれてしまい、我が儘で通した『大臣決定』法案に対する、国民や一部野党の追及に「なんでいけないのか?」と開き直った。

国民は、出納省解体デモや、神国党解党デモを行った。

出納省は、報道省の『天下り先』であるメディアにより、隠蔽工作をした。

ところが、SNSが発達し、国民総カメラマンの時代に入っていることへの認識が甘すぎた。


SNSを規制しようと躍起になったが、海外メディアが、『技の国の恥部』という『特ダネ』を放っておく筈がない。『笑い話』は世界中に拡散した。また、失敗した、と。

神葉や前の統合大臣は、世界で『失敗だから止めた』法案を次々強引に成立させた。


『関税交渉』という大仕事に、神葉は逃げ続けた。

結果、目利国に有利な条件で関税が決まった。

神葉は、関税率しか見ていなかった。得意満面だった。

だが、『傘下』である筈の輸出入業者から苦情が来た。

デモは再開した。出納省解体デモや、神国党解党デモには、輸出入業者も参加した。

神葉は赤穂の言うことも聞かなかった。後任にはもう『新橋』と言う、名前の似た代議士がなることが予定されていた。


翌々日。全国の、神葉のシンパの団体の前に、1人の男が現れた。

「お地蔵さんを作って差し上げましょう。そうすれば、神葉さんの『大切さ』を、国民は分かってくれるでしょう。」


それぞれの団体は、言われたノウハウの元に3Dプリンターで、お地蔵さんを作成、色んな所に、あっという間に設置した。

顔は、遠目には、よく分からない。石像風だから。だが、近寄ると特徴のある耳や眉で神葉だと分かる。


大人達は、変なお地蔵さんが建った、とだけ思っていた。

翌日、その『変なお地蔵さん』の横に何本もの剣が置いてあった。

ある子供が見付けた。


「コレってさ。この剣でこの像が刺せるってことに思えるんだけど。」

「なんで?」「ほら、所々、溝が開いてるだろ?」

「嘘。何かのゲーム?」「きっと、そうだよ。テレビか何かの。その辺にカメラ仕込んであるんじゃない?」

子供達は、どんどん近寄って来た。

最初に言った子供が、お地蔵さんを刺した。

何も起こらない。でも、溝にはぴったり剣が当てはまった。

もう1人、勇気を振り絞って、剣を刺した子供がいた。何も起こらない。

剣が全て刺さった後、突然、お地蔵さんの首が飛んだ。


『禁じられた遊び』は、忽ち全国に広まった。

翌日。埠頭に、水死体が上がった。

体中に、無数の剣の跡があった。


食堂で、そのニュースを見た俺は店主に言った。

「余程の『怨恨』なんだな。」店主は頷いた。


「さあて、ちょっと長いしすぎたかな。次、言ってみよう。」

―完―

※お気づきの方もおられるでしょうが、今回のエピソードは「内弁慶の外地蔵」という諺に基づいて居ます。



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