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18.【美女(beautiful woman)】

======== この物語はあくまでもフィクションです =========

ここは、『川の国』。

俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。


俺には聞こえる。殺してくれ、と。

どこの次元でも聞こえている。


跳んで来たのは、新聞社。

『デスク』と呼ばれる編集長の周りに記者が取り囲んでいる。

「8月末までに進退を決める?何でだ。」

「ボーナスは関係無さそうですね。総最選挙は9月だし。間借国の偉いさんが来る予定あるとか。で、『クビ』にならないように、『弁護』して貰うとか。総最選挙に備えて。」


「あんた、誰だ?」と、記者の1人が俺に気づいて言った。

「あ。失礼しました。京都支社から出向の綿貫です。」と、俺はしれっと名刺をデスクに渡した。

「あんたの説を『含めて』裏事情がありそうだな。掴んだら、案外『特ダネ』かもな。暑い中だが、皆で調べろ!あ、島根、綿貫を案内してやれ。」


さっきの記者は島根という名前か。覚えやすいな。


昼休み。島根の行きつけの食堂で昼食。

「おい、綿貫さんよ。間借国の偉いさんの話、どこかからタレコミか?」

「いえ。憶測です。でも、南部の方の洪水被害、公式発表が現実を矮小化している、ってタレコミはありました。だから・・・。」

「だから、尾上総最が退陣する前に、『無茶ぶり契約』を『隔義決定』か。好きだからナア、あのオッサン。何かの『ひとつおぼえ』で『隔義決定』。」

「伝家の宝刀も使い過ぎて刃こぼれしてるかも。」

「アンタ、上手いこと言うなあ。京都の生まれ?」

「いえ、神田です。」


俺は決めた。本人に語らせよう。隔僚の中で、一番口が軽いのは、他ならぬ尾上総合大臣だ。


賀佐坂。『川の国』では名の知れた芸者街がある。

ある、お座敷。


「そうだよ。あまり知られてないけど、通称『乙姫』が国の代表代理で『お忍び』でやってくる。仲空き節が8月15日。『川の国』では、『お盆』だ。『川の国』は、色んな面で『間借国』様の影響を受けている。そして、1年で1番油断しやすい時期だ。」

「延縄県でもあげるの?」と、芸者はお酌をしながら尋ねた。

「ああ。よく分かったね。」「お色直ししてきます。舞の時は衣装が違うのよ。」

そう言いながら、芸者は袂のスイッチを切った。


だが、その芸者も、他の芸者も帰って来なかった。

それどころか、全ての人々が消えた。


尾上は、不審に思いながらも、運転手を呼んだ。


駅に着くと、島根は言った。

「いいのか、特ダネだろう?」「急逝じゃ仕方ない。世話になった人なんだ。後は、よろしく。編集長にもよろしく伝えてくれ。」

「了解。」島根は、乗って来た自動車に飛び乗った。


芸者達は、バイトである。闇バイトだから、却って、口が堅い。


これで、代表代理の乙姫様は来られない。


しかし、どの次元の『国の代表』も往生際が悪い。

とっくに、『玉手箱』は開いているのに。


さ、今度は、どこに跳ぶかな?


俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。


殺したのは『歴史の一部』だが、島根には、生き残って、普通のジャーナリストを続けて欲しいものだ。


―完―



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