======== この物語はあくまでもフィクションです =========
ここは、『涙の国』。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
俺には聞こえる。殺してくれ、と。
どこの次元でも聞こえている。
跳んで来たのは、ある女性の部屋。
「と・・・失礼。間違えたかな?」
出て行こうとする俺の袖を彼女は掴んだ。
「玄関にも施錠、この書斎にも施錠。窓はない。煙突もない。どこから来たのかな?サンタさん。」
「面白い。この椅子、使える?」
「この椅子、お借りしてもいいですか?お嬢さん。」
「この椅子、お借りしてもいいですか?お嬢さん。」
俺は思わず、ペースに巻き込まれた。
「質問は何回までオッケー?出来れば永久パスにして欲しいんだけど。私はミミー。ペンネームだけど。三月三日って書くの。」
「誕生日?あ、永久パスでいいよ。」と、俺は近くの椅子に座りながら、話を始めた。
気が付くともう、『異次元の殺し屋』を始めていた。
21回目の次元リープの先が、この部屋だった。
詳しく聞かせろと言うので、詳しく話した。
流石、作家さんだ。小一時間の、かいつまんだ話をメモりながら全て把握した。
「じゃ、私の心の叫びをキャッチしたのね、あ、何て名前?通称でいいわよ、異次元の殺し屋さん。」
「ツガミ、って言っておこうか。ツガミわたる。」
彼女はゲラゲラ笑った後、「殺し料、幾ら?代金払えないから、抱いていいよ。」と言った。
「代金は要らない。セックスはしない。オンナともオトコとも。」
「ボランティアか、堕天使か。ひょっとしたら、私がペチャパイだからダメって言うかと思った。」
「じゃ、本題に入ろうか。」
ミミーの話では、悪政の上、退陣を迫られた、『涙の国』主席大臣は、行方が分からなくなっていると言う。
お盆の日、8月15日まで任期を延長してくれ、と与党海ん党の幹部に話していたらしいが、その話し合いである懇談会の途中、休憩後、帰って来なくなった。
明日には懇談会の結果を国民に話さなければならないところだったが、とうとう警視総監の命令で、国民に目撃情報を呼びかけた。
異例のことだった。要人中の要人だ。SP達は、一体何をしていたのか?
警察では、自ら姿を消したとは考えず、『誘拐』と判断したのだ。
「普通、誘拐って言うと、48時間がタイムリミットだったな。何時間経過した?」
「あと6時間。そう言った方が早い。身代金要求は届いていない。」
「ミミー。後ろ向いてるから着替えてくれ。」
「やっぱり抱いてくれないのね。いいわ、冒険に付き合うわ。この次元の『地理』には詳しいから。」
黒いストッキングにミニスカート。誘っているのかも知れないが、気にしている場合じゃない。
「あそこが、国家会議堂。あっちの方向に見えるのが、主席大臣官邸。」
俺にしがみついて、ミミーは、『道案内』をした。
官邸に着くと、俺は、『隠し部屋』を探した。
あった。血の臭いがする。
隠し部屋を開放し、ベッドの上に手術された跡の主席大臣を発見した。明らかに内蔵を抜かれている。その辺に犯人はいまい。
「主席大臣か?」
ミミーは涙ながらに頷いて言った。「何もこんな・・・。」
30分かけて、工作をし、俺はミミーを家に送った。
翌日。海ん党の義務長が、記者会見を行った。
事務員が、壇上の義務長に届け物を差し出した。
義務長は卒倒した。
記者達は、転げ落ちた写真を見た。
義務長が主席大臣を殺す瞬間の写真だ。
昨夜、ミミーが作った合成写真だ。
これで、この次元の未来が変わればいいが・・・。
ミミーは、最後にこう言った。
「いつか、いつか戻って来て。」
短いキスをして、別れた。
「戻って来る」とも「無理だ」とも言えなかった。
でも、タイプのオンナだった。
俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。
―完―