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22.【埋蔵金(buried treasure)】

======== この物語はあくまでもフィクションです =========

ここは、『源の国』。

俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。


俺には聞こえる。殺してくれ、と。

どこの次元でも聞こえている。


跳んで来たのは、経済評論家八つ橋新一の部屋。


「国民は、債務者(debtor)じゃありません。債権者(creditor)なんです。国民が国に借金しているんじゃなくて、国が国民に借金しているんです。」

八つ橋は、PCの動画を止めて、言った。

「誰かな?アポないけどな。」

「確かに。名乗る前に教えて下さい。今の動画、ホントのことですか?」

「ほんとのことです。しゃべっているのは、経済大臣やってた頃の、今の麻布副大臣。で?」

俺は、ここでも本当のことを言った。正しい人には正しい知識だ。


「国民から際限なく徴収する税金。その最たるモノが『運用税』。大麦国から指摘されたよ、事もあろうにね。関税を輸入業者から外国に払った後、政府は『貿易還付金』と称する金を運用税から支払い、『お釣り』を運用省に納め、その後、金の関係者と運用省事務員で分配、詰まり、山分けしていた。『運用税』は『社会保障費』に使われると言うのは常套文句だが、それは僅か数%。増税する為、色んな税を徴収しては、『大金庫』に納める。『大金庫』が本当にあるかどうかも疑わしい。自分達の預金またはタンス預金に化ける、と言われている。『大金庫』が無くても、『埋蔵金』はある。政治家は、洗脳されるか尻尾を踏まれてて逆らえない。この間の選挙も不正が多かったと言われている。人口より多い投票数なんてあり得ない事だ。人口には、投票権のない、赤ん坊も寝たきり老人も含まれるのにだ。」

「で、お仲間を利候補させ、議員の構成バランスを崩させた。与党代表者である統一大臣は、辞職と引き換えに国民を心中させる積もりだ、自分達は安全圏を確保して。」

「どうして、そこまで?」

「他の次元でも似たり寄ったりだったよ。大金庫があるかも知れない場所の地図を書いてくれ。持っては行かない。覚えるから。」


俺が立ち去ろうとすると、「私に出来る事は?」と、八つ橋は言った。

「祈っていてくれ。何宗でも何教でも、信じる哲学者でもいい。それだけでいい。」

「名前は聞かない。魔法で消すだろうから。でも、祈っている。ありがとう。感謝する。」


やはり、似たり寄ったりの場所があった。

趣味の悪い絵があった。そこから監視したり命令したりしているのだろう。

俺は噛んでいたグミをかけてやった。


絵の裏の部屋から人が出てきた。

マンガチックだな。

俺は、時間を止めて、各人の机からPCから情報を引き出し、操作をした。


「今、変な男が来なかったか?」

運用省の事務長は部下に尋ねたが、返答は無かった。

そこにいるのは、蝋人形だったからだ。


翌日。国中の郵便受けに、切手を貼った封筒が投函されていた。

差出人は、運用省になっている。

中にあったのは、100万円相当の『全国共通商品券』で、同封の書類には『還付金』の文字があった。


経済評論家八つ橋は、独りごちた。「宗教法人、って、どうやって立ち上げるんだっけ?」


運用省事務員と、その家族は慌てた。事務員は、いつの間にか退庁していて、今月『入る筈の金』は入っていなかった。

運用省に登庁すると、自分の席は無かった。昨日付で退職していたからだ。退職金賞与年金は無かった。『受取辞退』の書類があった。事務手続きを終えた事務員は、呆然となった。

更に、運用省の看板は付け替えられた。『歳出歳入省』に。

正しく、『総入れ替え』だった。


後は、八つ橋の裁量に任せるとするか。

俺は、次の世界へ跳んだ。


俺の名は、「異次元の殺し屋・万華鏡」。次元を渡り歩く殺し屋だが、殺すのは、人間とは限らない。

―完―



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