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昔憧れていたあの人は、みんなから嫌われていた。
煙たがられ、遠ざけられ、虐げられ、拒絶されていた。
あの人は積極的だった。そして強引で、自分勝手で、周囲の気持ちではなく自分の欲望に忠実だった。
僕は毎週あの人に会うのを楽しみにしていた。
僕だけではない。多くの人が、そんなあの人のことが好きだったのだ。
嫌いなふりをして、あざ笑うようなふりをして、興味がないふりをして、好きだった。
あの人を見なくなってから、どれくらいの月日が経ったのだろう。
つい昨日まで、僕はあの人の存在すら忘れていた。
昔あれだけ大好きだったのに、今では僕はあの人のことなんか全然好きではなかったかのように振る舞って生きている。
誰もがあの人の存在すら忘れている。
思い出す必要もないと思っている。
あるいは知らないふりをしている。
僕はふと、こう思った。
あの人は今もどこかにいるのだろうか。それとももう、跡形もなく消えてしまったのだろうか。