※このページには、本作の物語全体の要約(結末を含む)が記載されています。
初見のまま本文を楽しみたい方は、ここで引き返されることをお勧めします。
一方で、結末まで知った上で「どう物語がそこに至るか」を追う読み方も、また一つの愉しみ方だと思っています。
●まず全体の流れを知ってから読みたい
●長編に入る前に作品の方向性を掴みたい
●物語の内容だけ知りたい
という方に向けて、ご用意しました。
読み方の選択は、あなたに委ねます。
◇
◆ 序章:かつて“処刑人”と呼ばれた男
元陸軍兵士:ジョージ・ウガジンは、かつて戦場で冷酷な排除を行い「処刑人」と恐れられていた。
感情を見せず、無口で冷徹――仲間ですら距離を置く存在だった。
しかし、戦場で致命傷を負い、戦友ヴィンセントに命を救われる。
負傷の後遺症により除隊を余儀なくされた彼は、ヴィンセントともに軍を去り、民間ボディーガード会社「ΩRM(オルム)」を立ち上げる。
「正規の軍や警察が手を出せねぇ領域で、人を“護る”会社を作るんだ」
◆ ナンシー家との出会い
設立から4年後。
ジョージは、フィットネスジム経営者のシングルマザー・ナンシーとその娘2人(15歳のジェシカ、4歳のリリー)から護衛依頼を受ける。
一見、よくあるストーカー対策に見えたこの依頼の裏に、麻薬組織が関与していることを突き止める。
◆ 影の男・キングスリーの存在
ナンシーのジムに出資している男、キングスリー。
一見、ビジネスパートナーを装っているが、裏では違法取引を仕切るクラブ「ドミニオン」の支配者だった。
ジョージは、その不自然な資金の流れと、ナンシーへの過干渉から彼の正体に気づく。
両者は互いに正体を探り合い、やがて静かな対立の火花を散らし始める。
ある晩、ナンシーの家の前――電線に吊るされた1足のスニーカー。
それは街で広く知られる“脅し”のサインだった。
ジョージは、それがキングスリーからの無言の宣戦布告であることを理解する。
以降、SNSを含むあらゆる情報網を使って、彼の背後を追い始める。
◆ 家族のような絆と、過去の傷
ジョージは次第にグレナン家の3人に心を許しはじめる。
特にジェシカとは最初の反発を経て、父親に似た存在として距離を縮めていく。
護身術を教える過程で、ジョージはかつて“日本人であること”を失った自身のアイデンティティとも向き合うようになる。
◆ 潜入と駆け引き
ΩRMの副社長・チャットと共に、ジョージは「ジョニー・ウー」という謎の東洋成金キャラになりきってキングスリーのクラブ・ドミニオンに潜入。
SEX、ドラッグ、金、権力――欲望の中心のようなVIP席で、ジョージはギャンブル(ブラック・ジャック)を仕掛ける。
表向きは気まぐれにチップをばらまき、スタッフや客を見下すような態度で周囲を支配する成金:ジョニー・ウー。
だがその裏では、盗聴器を密かに設置し、違法取引の証拠を狙っていた。
◆ クライマックス
ジェシカの予想外の行動がきっかけで、彼女が誘拐される。
ジョージはワラビーという彼を慕う少年と共に救出に向かい、銃撃戦、カーチェイス、そして崖からの転落――命がけの戦いに身を投じる。
重傷を負いながらも、ジョージは“処刑人”としての過去を超える覚悟を決め、最後の交渉に挑む。
ヴィンセントに頼み込み、鎮痛剤と“戦場の飴”──フィンタニル・ロリポップを受け取る。
朦朧とする意識を押し殺し、ジョージは満身創痍のまま証拠を携え、最終決戦へと向かった。
すべてが終わったあと、彼は静かに崩れ落ち、生死の境をさまよう。
◆
錯乱状態のジョージが、自らを「的居誠」と名乗ったことをきっかけに、ヴィンセントたちは彼の過去を調査し始める。
“ジョージ・ウガジン”という人物が突如記録に現れたのは、20年前。
同時期に“海で事故死”とされた日本人エリート一家。
その末子である少年・的居誠が姿を消した時期と完全に一致していた。
両者の記録には矛盾がなく、同一人物であると断定される。
なぜジョージは無口なのか。
なぜ自分を犠牲にしてまで他人を守るのか。
なぜ戦場で“処刑人”と呼ばれるほど感情を封じてきたのか――
その理由が、ついに明かされる。
◆ エピローグ
ジョージの過去を掘り起こしたことで、ΩRMは複数の勢力から注視されるようになる。
だが、日本の元・内閣情報調査室の情報分析官:片桐修一の根回しでかろうじて危機を回避する。
彼もまた、“的居誠”という少年を救えなかった過去を背負い続けていた。
ヴィンセントはΩRMとジョージを守るため、経営の方針転換を決意し、片桐と手を組むことを選ぶ。
一方、ジョージは病院を退院し、ナンシーたちに迎えられる。
20年前に失った感情は戻らない。
だが、守り抜いた命の温もりを胸に、彼は静かに息を吸い、目を閉じる。
物語は、静かに幕を下ろす。