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第36話 友人たちのSNS

雅沫は嬉しそうに叫んだ。


「うそ!お兄ちゃんが私のSNSに“いいね”したことなんて一度もないのに、あの人はほとんど自分で投稿もしないし、だいたい東京の水島家のニュースばかりリツイートしてて、すごくクールなんだから。今日は理恵ちゃんのおかげだね!」


理恵は少し顔を赤らめた。「そうなの?」


京都で修平を知らない人はいない。


理恵が国際高校でトップだった頃、三学年上に京都一中の修平がいるとずっと噂で聞いていた。


あらゆる学科のコンテストで賞を総なめにし、本物の天才だった。


理恵は一度彼と競い合ってみたかったという思いが残っている。


後になって、修平が悠介の従兄だと知った。


「理恵ちゃん、ほら、みんな理恵ちゃんがきれいだって褒めてるよ!」雅沫の声が理恵の考えを遮った。


SNSのコメント欄には――


[翔太]:やばい!めっちゃ美人!芸能人?すごく可愛いけど彼氏いる?連絡先教えて!


[AAA ハウルの動く充電器]:俺も知りたい!


[猛女林黛玉]:私も~!


こんなストレートな褒め言葉に、理恵は少し頬を赤らめた。


その時、後ろから鈴木哲がちょうどいいタイミングで言った。「早川さんは生まれつき美しいですね。森川さんの友人の見る目は確かです。」


その言葉に結衣は思わず笑ってしまった。


二人同時に褒めるなんて、鈴木哲は本当に気が利く。だからこそ、すぐに立ち位置を決めるのだろう。


「何がおかしいの!」と雅沫が不機嫌そうに振り返り、わざと結衣を苛立たせるために投影機を持ってきて、画面を100インチのテレビに映した。


結衣は協力するようにちらっと一瞥した。


最新のコメントが表示された――


[健一]が[翔太]に返信:「それは君の義姉だ。」


雅沫は結衣との口論も忘れ、顔が一気に赤くなった。


どうやら、雅沫はこの「義姉」が自分のことだと思ったようだ。


その頬の赤らみを見て、理恵は少し哀れむ気持ちになり、何も言わず唇を噛んだ。


まさかはっきりと、健一が指しているのは自分だとは言えない。


それはあまりにも残酷すぎる。


二人は並んで座り、それぞれに思いを巡らせていた。


画面には――


[翔太]:失礼しました、義姉だったんですね、健一さん、さすがです!


[陽太]:ふざけんな!誰が義姉だよ!


[翔太]:???


これにはみんな困惑。


雅沫はため息まじりに同級生へ返信した。「はぁ、全部理恵ちゃんが人気者すぎるのが悪いんだよ~」


[翔太]:あれ、勘違いしてるよ。私は斉薇のこと知ってるよ、最近TikTokで有名なあの女性科学者でしょ。でも、俺が聞きたいのは後ろに立ってるあの美人なんだ。


他の人たちも続々とコメント:「そうそう!あの人だよ!」


……


雅沫の頭の中は疑問符でいっぱい。


彼女はわざわざ写真を拡大して、みんなが言っている美人が誰なのか確認しようとした。


そして、背景にいる結衣を見つけた。


カメラのアングルのせいで、視覚的な錯覚が生まれ、結衣がまるでスワロフスキーがちりばめられたウェディングドレスをまとってライトの下に立っているように見え、まるで光を放っているかのようで、とても神聖だった。


雅沫の頭の中で「ガーン」と音が鳴った。


つまり、みんながコメントしていたのは自分や理恵じゃなくて、背景の結衣だったの?


じゃあ、健一のあの一言は誰に向けてだったの?


いや、健一はちょっとチャラいけど、結衣は従姉妹だし、友人の妻に手を出すなんて……


でも、健一が高校時代に付き合っていた子はみんな美人だったし、結衣も確かにきれいだし……


雅沫は考えたくなかった。


彼女は眉を吊り上げ、怒りを結衣にぶつけた。


「結衣!私と理恵ちゃんが自撮りしてるの分かってて、わざと写り込んで健一さんを誘惑するなんて、最低!」


結衣は「ありがとう、褒め言葉として受け取っておくね」と返した。


「な、なんてこと言うの!恥知らず!」


コメントがまだ流れているのを見て、雅沫は怒りに任せて投影ケーブルを引き抜こうとした。


その時――


修平がコメントした。


[修平]が[翔太]に返信:「どちらでもない。」


明らかに、「結局この三人のうち誰が奥さんなの?」という問いへの返事だった。


大きな液晶テレビのおかげで、結衣は遠くからでもその三文字をはっきりと読み取れた。


彼女の睫毛が微かに震えた。


なんとなく、その三文字の後ろにまだ言い足りない何かがある気がした。


けれども、深くは考えなかった。


修平が結婚を申し出たのは、ただ妻が必要だったから。彼女が応じたのは、森川健一郎の怒りを抑えられる後ろ盾が欲しかったから。


それだけのこと。


最初から、期待なんて持つべきじゃなかった。


結衣はそっと目を伏せ、この店にもう長居はしたくないと思った。


けれども雅沫はさらに勢いづき、結衣の腕をつかみ、嫌味を言った。


「見たでしょ!お兄ちゃんはあなたのこと認めてないのよ!」


「やっぱり、うちの家族は誰もあなたみたいなの好きじゃない!お兄ちゃんが結婚したのも、おじいさんに言われたからでしょ。そのうち森川家から追い出されるから覚悟しなさい!」


「そうだ、お母さんがあんたと結婚前契約結んだの、離婚したら一円ももらえないんだよ!」


雅沫の馬鹿さ加減を見て、結衣は逆に気分が晴れた。


やっぱり若い子は我慢がきかない、ちょっとしたことで感情が爆発する。


もし今夜のパーティーで雅沫を怒らせて、悠介と理恵の「ドロドロの関係」をみんなの前で暴露させられたら最高だ。


結衣はひらめき、ある作戦を思いついた。


スタイリングルームを出た後、結衣は二つ電話をかけた。


ひとつはデザイナーの友人に、ドレスを借りたいと頼むため。


もうひとつは健一に。


電話がつながると、受話器からけだるい鼻声が聞こえた。「どうしたの、急に電話して。俺に会いたくなった?」


結衣は淡々と答えた。「違う、午前中に車を取りに来てほしい。修理終わったから。」


健一は軽く笑い、少し気だるそうに言った。「本当に?会いたいだけなんじゃないの?まあ、俺は急がないよ。」


結衣:「私は急いでる。」


「そんなに俺に会いたいんだ~」健一はわざとからかうような口調で、「今すぐ行くよ」と言った。


結衣は「うん」とだけ返した。


その声は淡々としていて、何の感情もなかった。


彼女は自動車整備工場に向かった。職人たちはもう来ていて、あのスポーツカーもほぼ元通りになっていた。あとは仕上げだけだ。


その時、結衣のもとに伊藤探偵からメッセージが届いた。


【プロ探偵チーム】:あなたにとってとても大事な情報があります!聞きたいですか!


結衣は惜しまず100万円を送金した。


【プロ探偵チーム】:!!!


【プロ探偵チーム】:高橋鈴夏が森川家の妻だと知って、媚薬をネット注文しました。今夜の森川家の誕生祝いに紛れ込むつもりらしく、あなたと健一を陥れようとしているようです。くれぐれもご注意ください。


……


この情報は確かに価値がある。


その時、入口で風鈴が軽やかに鳴った。


健一がやってきた。


彼はヘアメイクもばっちりで、鍵にはカピバラのキーホルダーがついていた――陽太とお揃いのペアグッズだ。


その瞬間、結衣の頭に素晴らしいアイデアが閃いた。


この作戦は天を傷つけないが、人を傷つける。


もし成功すれば、今夜から半年は京都の名家の間で話題が尽きないだろう。

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