私の幼馴染、ユウユウは勇者である。
数万年前だかにこの世界を破滅から救った勇者様の生まれ変わりだか子孫だか力だけを授かっただか色々言われているけれど、とにかく勇者である。でもこの話胡散臭いよね、破滅の時に勇者っぽい人がいた記憶なんてないもん。
まぁそれはどうでもいいか。本題に入ろう。
ユウユウが勇者でも私はそれでも構わない、だって夫の仕事が何であっても受け入れるつもりだったし、勇者と言えば戦う公務員みたいなものなのだから上々だろう。仕事なんてしょせん私を愛する片手間にすることなんだし。
それにユウユウは自分が勇者の力を持っていると知った時飛び跳ねて喜びまわった。昔から世界を救うために鍛えていた努力が実になると熱い決意に燃え盛っていた。そんなユウユウを見て私も嬉しくなったものだ。
だが、そこから先はいただけない。ユウユウったら一人でラボス村を出ると宣言したのである……近くにあるボルビール王国で魔法使いとか格闘家とか、そういう仲間を集い武器と資金を賜って魔王討伐の旅に出かけるんだと。
私を置いてだよ、信じられない。
私はユウユウの幼馴染にして将来の妻となるべき女の子なんだよ。世界を救うなんて面倒ごとは他人に押し付けて私とこれから生まれてくるであろう子供たちと一緒につつましくも穏やかな人生を送るのがユウユウにとってもいいに決まっているのに。
ただ「お前や母さん、いやこの世界の皆を守らないといけないんだ。俺たちの未来のため、気合入れて頑張ってくる!!」なんて真剣な顔で言われたら引き止められないじゃんか。
だってあれだよね、私たちの未来の為に魔王討伐にいくってこれもうほとんどプロポーズじゃん。それにユウユウって意外と派手でお祭り騒ぎが好きだから私とユウユウの披露宴を立派なものにするために資金集めと出席者を増やすために旅にいくって面もあるんじゃないかな?
だったら婚約者としてユウユウの意思は尊重しないといけないよね……結婚って言うのはお互いの意思を尊重してお互い楽しく成長していかないといけないしね。
でも、ずぅっとユウユウに会えない、声も聞けないなんて私耐えられない。それに魔王討伐なんてどんな危険があるのかわかりゃしないよね。
だから決めた。私もこっそりユウユウについて行く……そして私がユウユウを世界を救う勇者にして見せるんだ!!
そして世界を救った祝宴で私とユウユウの結婚式も挙行するの!!!
楽しみだなぁ……全世界の人から祝福されながらするユウユウとのキス。
ああ。自己紹介がまだだったね。私の名前はセラリス、その昔世界を破滅に導いた滅神の生まれ変わりにして現在は村娘Aで恋する乙女だよ。